<魔獣特捜ミスティック・ミュウ'(ダッシュ)>
第2話 in 東京 #1 素性
惑星ティラの北の大地、温泉街フランよりもさらに北方、一年中、寒風が吹きすさぶ土地を、魔圏と呼ぶ。
そこは、薄くなったマジェスティックスを追って、魔族達が多く集まったところ。
それゆえに誰言うと無く魔圏と呼ぶようになったらしい。
その魔圏の玄関先とも言える峡谷に、まるで関所の様に、そこを通る物を阻んで建つ屋敷があった。総統府。魔族と他の民族との摂政を執り行っている施設である。
そこではダイアグローゼ・フォーザーバイン、つまりあのダイアが統主としての執務に追われていた。
ダイア「んで?」
副務官「ですから。いま少し、執務に当てる時間を増やして頂かないと困ると申し上げております。」
ダイア「やだ。」
副務官「ダイアグローゼ様・・・・。私では結論が出せないこともあるのです。」
ダイア「なにいってんだか。実力は私よりあんたの方が上でしょうが。そもそも、あんたが総統府党主になるのを嫌がったから、私が引っ張り出されたんでしょ? その帳尻合わせぐらいしてよね。」
副務官「それは買い被り過ぎというものです。」
ダイア「はぁ。そうだった。あんたって、いつもここってときに実力が出せないんだっけ。ヨルシュ。」
副務官ヨルシュ「はい。お恥ずかしい限りです。」
ダイアの執務を補佐する魔族の男ヨルシュ・オーマン。
実力その物は超一級であるのに、肝心な時に限って実力を発揮できず、何をやってもNo.2で終わってしまう不運の男。
魔族にあってはまずあるはずの無い誠実さを体現するかのような、長身で生真面目そうな容姿を持っている。
ヨルシュ「私としましては、ダイアグローゼ様のお気持ちは重々承知しております。ですが、こなして頂かねばならないことは、やはり・・・。」
ダイア「はいはいはいはいはい。で。今日は? 何をやればいいの?」
ヨルシュ「お返事は簡潔に。本日は10名ほど休眠より覚める者がございますので、その面通しをお願いいたします。」
ダイア「あー。あれね。面倒なだけの。」
ヨルシュ「まぁ、そういわずに。今日のは退屈していられないやも知れませんので。」
ダイア「ほぉ? なにかあるの?」
ヨルシュ「はい。多少問題のある御仁が見受けられる様です。書類の方に目を通していただければ、わかるものと。」
ダイア「書類? ああ、これね・・・どれどれ・・・。」
促されてデスクの上に置きっぱなしになっていたリストらしき物に目を落すダイア。
そして、リストに見覚えのある名前を見つけ、驚く。
ダイア「げ。・・・・マジ?」
ヨルシュ「は? マジ、とは?」
ダイア「ああ。チキュウで聞いてきた言葉よ。本当かって聞いてるの?」
ヨルシュ「ああ、そういうことですか。もちろん、嘘、偽りはございません。マジェスティックス濃度の回復により、その休眠期間が全般的に縮まりましたので、50年ほど早くお出ましになられるようです。」
ダイア「うーわー。まさか、こいつが出てくるとは思ってなかった。さすがに厄介かなぁ。」
ヨルシュ「こればかりは順繰りという事になりますので、いかんとも・・・。」
ダイア「で、なに? 他の9人全部あいつの子飼いじゃないのさ。あららー。」
ヨルシュ「そういう訳ですので、気を引き締めて掛かっていただければと。」
ダイア「はぁ。わかった、わかった。ジーゾットとその一門が出てくるんならあんたじゃ役不足ね。」
そういったところで、執務室の扉が勢いよく開かれた。
???「おうおう。聞いてりゃ、随分と人のことを誉めまくってくれてるじゃないか。うれしいねぇ。ええ?」
ヨルシュ「むっ。」
ダイア「じ、ジーゾット・グレムリード・・・。」
噂の主、ジーゾットがその門下を引き連れて面通しに現れたのである。が。
ジーゾット「なんだか、50年も早く起こしてもらえたんだが、俺の寝てる間にルーンでも滅びたか?」
ダイア「そういうことではない。ルーンもサイファシスも健在だ。」
ジーゾット「けっ。なんだよ、濃くなってきてるから喜んで参上仕ったというのに。はぁ、我が世はいまだ訪れずかぁ?」
ヨルシュ「不穏当な事を。過ぎれば排除の対象となるのですよ。ジーゾット卿。」
ジーゾット「ふん。そんな物、天下をとっちまえばどうとでもなるこった。相変わらずイイコチャンだな。2番目の。」
ヨルシュ「なっ!?」
ダイア「・・・・はぁ。頭が痛い。いい? ジーゾット。あんたが眠ってる間にルーン側の勇者が現れたの。あんたの天下は夢のまた夢。そういうことよ。」
ジーゾット「ほぉ。勇者ねぇ。俺はまたアレは夢物語だと思ってたんだが。あ、そうか。ひょっとして、自称とか、そういう輩かぁ?」
ダイア「いや、自称というか、そういうのも確かにいたが・・・。その後に、本物が現れた。正真証明のね。私もある意味そいつに救われた。奴はこのティラと、チキュウ、両方を救った。それほどの男がいる。努々あらぬことは考えぬことだ。討たれるぞ。」
ジーゾット「ふん。討てるものなら討って見ろ。だ。」
ダイア「ジーゾット! ならば、ここで処断を受ける覚悟があるか?」
ジーゾット「わっはっはっは。よせよせ。お前なんかで相手になるかい。まぁ、いいや。わずかに残った俺の戦車隊ぐらいじゃ、天下はうごかねぇよ。それぐらいはお前さんもわかるだろ?」
ダイア「ふん・・・。」
ジーゾット「心配するな。当分は魔圏を出ねぇよ。70年の間に何がどうなったかまだ把握しきれて無いしな。隅っこの方で、好きにやらせてもらうさ。」
ダイア「お前の好きは少々規模がでかくなる傾向があるから要注意なんだけどね。」
ジーゾット「うはははは。相変わらずの口だなぁ。ダイアグローゼ。お前ぐらいだぜ、俺にタメ口叩くのは。」
ダイア「これでも随分と可愛くなったんだけどね。ともかく、自重しないと色々まずいと、そういう忠告だ。忘れるな。」
ジーゾット「あいよ。叩くならまずその勇者を叩け、とね。」
ダイア「ジーゾットッ!」
ジーゾット「冗談だよ。じゃぁな、俺と、俺んとこの9名確かに面通しにきたぜ。」
ダイア「ああ。確認した。そろそろ出迎えも着いたようだな。」
さっきから、地面が揺れている。地響きが徐々に大きくなりながら近づいてくるような。
その地響きがもっとも大きくなったところで、急に静かになった。
ダイアは、執務室の窓から外を確認する。
総統府の城壁の向こうに今までそこには無かった何か城砦の見張り櫓のような物が見えている。
ジーゾット「おお。ありゃー、ロゼリアだな。わざわざこんなとこまで出迎えにこなくていいのによぉ。」
ダイア「そのようだな。」
ジーゾット「じゃぁ、失敬。」
ジーゾット達はそそくさと執務室を出、総統府の城壁を出た。
そこにはジーゾットの私軍が持つ、装甲戦車のうちの一輌が横付けされ、近くに女が立っていた。
女「お迎えに参りました。」
ジーゾット「やっぱりお前か。ロゼリア。こんなところまで迎えに来やがって、子供じゃねぇんだぞ。俺は。」
ロゼリア「申し訳ありません。一刻も早くお顔を見たかったので。」
ジーゾット「はっ! 可愛いこというようになったじゃねぇか。ああ、可愛がってやるよ。後でゆっくりな。」
ロゼリア「はい。ありがとうございます。」
ジーゾット達が乗り込むと戦車は再び地響きを立てて動き出し、魔圏の奥へと消えていった。
ダイア「あー、うっとおしいのが出てきたもんだ。」
ヨルシュ「まだあのような物騒な物を温存しているのですね。趣味の悪い。」
ダイア「ああ。戦車ね。あいつ、自分の実力でなくて、わざわざああいう、物騒なので、席巻して回るのが趣味なんだよね〜。見えたでしょ? 先についた筒で砕いてひき潰すらしいよ。」
ヨルシュ「それはそれは。あの前にだけは立ちたくありませんね。」
ダイア「まったくだ・・・。まぁしかし、これで良かったのかもな。」
ヨルシュ「は? といいますと?」
ダイア「オロチの首の一件がもう少し遅ければ、あいつが統主なんて、笑えない事態になったろうからね。」
ヨルシュ「あ! そればかりは願い下げです。ですが、ダイアグローゼ様がいらっしゃるのなら現状と変わらなかったのでは?」
ダイア「あいつ・・・私より数段強いんだよ。力を隠してる。その時の為に。」
ヨルシュ「ご謙遜を。」
ダイア「嘘だね。そう思ってないでしょ? あんたもあいつの事は感じたはず。」
ヨルシュ「は・・・・。何かこう、動き出したら停め様の無いものを感じました。」
ダイア「その感じ方は正しいよ。あんたも気をつけてて。」
ヨルシュ「はい。心得ました。」
ダイア「私達魔族は本来奔放だ。それが当たり前だ。だが、その中でもアイツみたいに底知れず奔放に過ぎる者が出てくる。それは、他の民族から疎まれ、やがて、その矛先は魔族すべてに向けられることになるのは明白。それを自発的に抑える為に設けられたのが総統府であり、我々の役目だ。それは、お前も知っての通りだと思う。」
ヨルシュ「はい。」
ダイア「つくづく厄介な仕事だな・・・。」
ヨルシュ「は。ですので、今少し、執務に当てる時間を増やしていただければと・・・。」
ダイア「そこに戻るなっ!」
ヨルシュ「戻ります。大切なお役目ですので。」
ダイア「いい? ヨルシュ。少ない時間でも与えられた執務はこなします。それでも私がいない間に文句を言う者が来ても待たせればいいの。」
ヨルシュ「いや、そういうわけにも・・・。」
ダイア「いいの! 待てないってことは、自制できなくて不穏分子となる確度が高いってことだから、待たせればいいのよ。」
ヨルシュ「そ、それはいささか飛躍し過ぎではないかと・・・。」
ダイア「そんな事は無いわよ。それに、私はあんたの能力を買ってるの。私が居なくても判断出来る事はやって。構わないから。」
ヨルシュ「いや、しかし・・・。」
ダイア「それでも問題が起きたら、全責任は私が持つ。あんたを咎める事はしない。何があっても解決して見せる。体張ってね。それでも、時間を裂けと?」
ヨルシュ「・・・・・嘘はございませんね?」
ダイア「名主の家系フォーザーバインの名にかけて。」
ヨルシュ「初めてですね。そういった形で、お家の名を出されるのは。・・・・承知致しました。」
ダイア「私としては、あまり出したくは無いけどね。私は出来のいいほうでは無いから。ま、よろしく頼む。あんたを信じての事だから。」
ヨルシュ「は。」
ダイア「さて、と。じゃぁ、今日は他にやることは?」
ヨルシュ「は。ございますが、私で判断つきそうなことばかりです。お休み頂いてよろしいかと。」
ダイア「早速実践? 殊勝な心がけね。今度一晩付き合って上げようか?」
ヨルシュ「めっ、めめめ、滅相もありません。私が叱られます。」
ダイア「ヨルシュ。もう少し野望とか、野心とか、ううん、下心って言ってもいいかな。そゆの持ったほうがいいよ。あんたに足りないのはきっとそう言う物だと思う。」
ヨルシュ「はぁ。自分でもわかってはいるのですが・・・。」
ダイア「無理にとは言わないけどね。じゃ、遠慮なく休ませてもらう。」
ヨルシュ「はい。」
ダイアは今、この総統府のはずれに一室設けてアスフィーとともに住んでいる。
例えどんな待遇を受け様とエルフの村に住んでも良いと言う、ダイアの申し出をアスフィーが受け入れなかった為だ。
彼自身にもオロチの首の一件に対して、思うところがあるのだろう、たまに顔を見せるぐらいで、エルフの村へ帰る事は少なかった。
元より、以前から修行の旅に出ている事が多かったので、村に帰らないこと自体は、そう突飛な事ではなかったのだが。
そのアスフィーが待つ自室へとダイアは戻った。
ダイア「ねぇ・・。」
アスフィー「ん?」
ダイア「今日、厄介な奴が出てきちゃった。もしもの時どうしようかって。」
アスフィー「君でも手に負えない?」
ダイア「うん。ジーゾット。知ってる?」
アスフィー「ああ、聞いた事がある。アルヘルド騒乱以前、ちょっと小耳に挟んだ程度だけど。そうか。ジーゾットが目覚めたのか。」
ダイア「もし、私で抑えきれなかったら・・・。」
アスフィー「その時は、それでも抑えるしか、ないんだろうね。立場上。」
ダイア「うん。もしもの時はアイツ呼んだら来てくれるかな?」
アスフィー「うーん。そのアイツって言うのが、僕が考えてるのと同じ人物なら、きっと。」
ダイア「うん。呼ばないで済めばそれにこした事は無いんだけどね。ジーゾットは身内の恥みたいな物だし。ほんと、アイツは魔族としては純粋過ぎる。」
アスフィー「奔放は悪い事ばかりでも無いのだけどね。その者の価値観に左右されるから。」
ダイア「そだね。そういう意味では私達も奔放かな。」
アスフィー「僕はどっちかって言うと放蕩かも知れないけど。」
ダイア「ふっ。そうかも。こんなところでサボってんのと、家に帰らないのと。放蕩だよね。」
アスフィー「それでも、今のままで良い様に思うよ。」
ダイア「ん。アスフィーがそう思うのなら。それでいい。」
ダイアはゆっくりとアスフィーに体重を預けて行った。
そんな頃。
俺は、亜深さんに呼ばれて富士の樹海に足を踏み入れていた。
富士の樹海といえば、いろいろとやばい噂が一杯ある、皆の良く知ってる大森林だ。
なんでも、このところ例の電磁波の観測が顕著らしく、ハーティーアイズに矢のような調査要請がきててんてこ舞いなのだと言う。
その為、あーくん、べーくんも単独調査に赴く事が多く、とうとうつぇーくんこと、俺にもお鉢が回ってきたと言う事なのだ。
まぁ、さすがに冗談で呼ぶ時以外はもうつぇーくんなどと呼ばれる事は無くなったが。
だがしかし。状況は最悪だった。
というのも、俺と亜深さんは調査中に足を滑らせ、樹海の所々にあるクレバスというか、洞窟というか、縦穴というか、その一つにはまり込んでしまって出るに出られなくなってしまって大弱りしているのである。
亜深「だから、ボケっとして無いで、ちゃんと足元見て歩きなさいと言ったのに。」
まさと「ああ、その直後だったな。」
亜深「ほんと。どういう頭の構造をしているんだか。解剖してみたいわよ。」
まさと「ごめん。で、足、大丈夫?」
亜深「凄く痛い。」
まさと「うー・・・。」
落ちた時に俺の下敷きになって、亜深さんは足をくじいてしまったのだ。
しかも落ちた穴はかなり切り立った縦穴で、何も用意が無ければ上に上がるなど到底不可能な状態だった。
亜深さんが足をくじいてなければ鬼祀の力とやらを使ってポンと上がってしまえそうな高さだったのだが、足をくじいてしまった以上そういうわけにもいかない。
それに加えて、亜深さんの衛星電話もこの辺りから発しているらしい異様なまでの電磁波の影響を受けて、どこにも連絡が取れず。
俺の持っている回復魔法もどういうわけか働かず、亜深さんの回復を図ることも出来ない。まさに、状況は遭難そのものであった。
亜深「とにかく。ここはじっと待つ以外にはなさそうね。」
まさと「そうだなぁ。さっきから、ずっと、ファルネに呼びかけてるんだけど、現れる気配もないし。これも電磁波とかの影響受けるのかね?」
亜深「応答がないんじゃ、受けるのかもね。向こうも一応はシステムの類だし。剣も盾もダメでしょ?」
まさと「あ、うん。出せないみたい。わかるの?」
亜深「薙羅の感触も変だから。変に重くなってる。」
まさと「ああ。なるほど。じゃ、あーくんとかが探しに来てくれるの待つしかないのか。」
亜深「そういうことね。戻る時の為の印しは付けて進んできたけど、上手くそれを見つけてくれるかどうか。下手をすると二人ともここで野垂れ死によ。」
まさと「そ、それだけは勘弁して欲しいが。」
亜深「状況をもっと正しく把握しなさい。選択肢としては確実にそれが入ってるわよ。」
まさと「そうなんだけどねぇ。」
亜深「一応の物は持ってるから数日は大丈夫だと思うけど。それでも心許無いのは確かよ。」
そういって、持ってきていたハンドバッグから、携行食料やら毛布やらが、次々と広げられた。
まさと「四次元ポケットですかそのバッグは。」
亜深「どうせ、あなたはなんの用意もない身一つだと思ってたからね。こっちで用意できるものはした。それだけ。だけど・・・。」
まさと「ん?」
亜深「二人だともって一週間。ってとこか。水はその辺の岩の隙間から湧いてるのを摂れそうだけどそれでもね。食料が少なすぎる。それに天候のこともある。」
まさと「天候?」
亜深「今は良いけど、雨でも降ったらどうなるか。冷えるだろうし、この辺りの水脈は特殊だから。下手をするとこの穴自体が水で一杯になることだって。」
まさと「あ、それいいかも。」
亜深「なにがよ。」
まさと「いや、穴一杯まで水が満ちれば脱出できるじゃないか。浮かべばいいんだし。」
亜深「馬鹿。それはあり得ないわよ。よほどの大雨が短時間で降らない限り。」
まさと「そうなのか。」
亜深「いいとこ穴の半分までね。そうなると、体温を奪われて、大変な事になるだけ。それに、そこ。」
亜深さんが穴の隅のほうを指差す。
そこには直径50cmくらいの穴がぽっかりと口をあけていた。
亜深「なんだと思う?」
まさと「穴。だよな。」
亜深「ただの穴じゃないわよ。この辺りの水脈に繋がってる穴ね。周囲の岩肌の状態を見ると、大雨が降るとここは水脈の一部として機能してそう。という事は、下手をすると、大量の水に流されてその穴からどこへ繋がるともわからない水脈の中へダイブ。到底生きてはいられないわ。」
まさと「げげっ!」
亜深「用心にこした事はないわね。」
とまぁ、とってもスリリングな状況となっている模様。
亜深「とにかく、無駄に動かず、体力を温存しておくしかないわね。」
まさと「そういう事になるのか・・・。」
そうして、亜深さんと二人きりのサバイバルが始まった。
予定ではあーくんもべーくんも数日戻らない事になっていたので、彼等がそれに気付いて救援が来るまではまず3日くらいは掛かるだろうと言う目算だった。
携行食を少しずつ口にしながら、ただじっと救援を待つ。夜は毛布に包まって、万一の降雨に備え穴の一番高い部分に陣をとって休んだ。
そんな日がもう4日も続いた。
4日目の夜。毛布の中でとうとう亜深さんが口を開いた。弱音を吐いた。
亜深「ごめんね。私が呼び出したばっかりに。」
まさと「・・・・んなことねぇよ。」
亜深「こんなこという必要もないと思ってたんだけど、この状況だとそうも言ってられないから。」
まさと「いや、ま、そうなんだけどね。腹も減ってあんまり動けないし。」
亜深「だから。いよいよとなったら、あなただけでも生き残りなさい。」
まさと「は? いや、そう簡単にくたばるつもりもないけど、そう自由にはならんでしょ。」
亜深「黙って聞きなさい。食料もなくなってもう絶えられそうになくなったら、今から言う事を実行しなさい。いいわね?」
まさと「ん? い、いいけど。なにすんの?」
背中合わせに毛布に包まったまま亜深さんが意を決したようにいう。
亜深「その時が来たら、私を殺しなさい。」
まさと「なんだぁ?」
亜深「抵抗はしない。殺されてあげる。私を殺してその肉を食べなさい。それで、あなたは生き残る事が出来る。」
まさと「あ、亜深さんっ!」
亜深「からかってるわけではないわ。本気で言ってます。」
まさと「無茶苦茶言うなっ!」
亜深「その時の為にこれを預けます。」
そういって、亜深さんは俺のほうへ薙羅、つまり、くさなぎの剣の分身を押し出す様にしてきた。
まさと「ま、まじに? 冗談だよね?」
亜深「本気です。あ、生のまま食べたらダメよ、バッグにライターが入ってるから、それで火を起こして、ちゃんと焼いて・・・。」
まさと「ばかやろう! そんなことできるか! いよいよとなったら潔く死んでやるよっ!」
亜深「なっ! 馬鹿はそっち! あなたは死んではダメ! 生きるの! 生き延びるの! 守らなきゃいけない人が沢山居るでしょうっ! あなた・・・かはっ。」
まさと「・・・できるわけないだろ・・・そんなこと・・・。」
喉が乾いたままなのか亜深さんは叫ぶ様に喋ると咳き込んでしまった。
水分は微々とはいえ摂っているものの、さすがに今のように叫んでは喉も枯れよう。
まさと「それにさ・・・守らなきゃいけないってことなら・・・亜深さんも、俺にとってはその中に入る。」
亜深「そう・・・・。」
納得してくれたらしい。と思ったら。
亜深「じゃぁ、自決するから。心配は無いわ。」
まさと「そういうことじゃないって言うのっ!」
たまらず飛び起きて亜深さんの方へ向き直った。
夜の光に照らされた亜深さんは・・・・・。
亜深「・・・・・・死なせたくないの。」
亜深さんは今にも泣きそうな顔をしていた。
そんな顔をされたら、どう対応していいかわからない。
まさと「俺の事を思ってくれるのはうれしいけど、俺には出来ないよ。そんな、誰かを犠牲にするような生き方。」
亜深「そう。わかった。私が自決しても、食べてくれそうにはないわね・・・。」
まさと「ああ。だから、馬鹿なことは考えないでくれ。」
亜深さんの肩を両手でがしっと掴んでそう言った。
亜深「・・・・もう、これで二度目なのよ。」
まさと「は?」
亜深「私の事で、君を巻き込むの。覚えてるでしょ? 前の事務所でのこと。」
まさと「あー、いや、そう言われればそうかもしれないけど。まぁ、それはそれなんじゃない?」
亜深「もうこれ以上私の事で誰かを巻き込みたくない。そう思うのよ。私は・・・・。」
亜深さんはうつむいてそう漏らす。
体も小刻みに震えて何かに必至に耐えているかのような。
まさと「あー、まーとにかくだ。もうちょっと頑張って見ようよ。いよいよってな状況になればそれはそん時また考えりゃいいんだし。な。」
亜深「ふ。すでにいよいよって状況だと思うのだけどね。いいわ。君がそうしたいなら。」
まさと「ああ。」
そしてその夜はどうにかこうにか眠る事が出来た。
やがて朝になって、どこからか鳥の声も聞こえる。
ちょっと冷え込んできてていて、さすがにからだの芯が冷えているのがわかる。
亜深さんはまだ寝息をかいている、さすがに弱々しくはあるが、一定のリズムを刻みながら。
起こすのも悪いからもうしばらくおとなしくして居てあげよう。
そう思った時だった。
亜深「う・・・ん・・・。」
まさと「!」
亜深さんが何やら吐息を漏らしたと思った途端、なにやら尻の辺りでうごめく者の気配があった。
俺はとたんに跳ね起きた。
蛇かトカゲかあるいはUMAか。
とにかく亜深さんと俺の間に何かがもぐり込んで居る事は確かだった。
それが、もし有害なものであったら、すぐにでも排除するのが現在意識を保っている俺の役目だろうと思ったから。
が。
まさと「って・・・・おい。」
跳ね起きた俺の腰と言うか、尻のあった場所には。
激しく見覚えのある物体が横たわっていた。
まさと「・・・・・・しっぽ?」
しっぽだった。それもものすごく見覚えのある。とにかくもう引っ張りたくなっちまうあれ。
一瞬、そういう形をした蛇かとも思ったのだが、やはりしっぽだった。
そしてそれは、明らかに亜深さんのスカートの中から生えている。
まさと「まじですかー?」
などと、間の抜けた声が出てしまうくらい俺は動揺していた。
いや、これは、明らかに魔族のしっぽだ。間違い様がない。
確かに、亜深さんが魔族だと言われれば、今までに見せた特殊能力は納得がいくと言えばいく。
しかし、亜深さんは、魔族だと言わずに、鬼祀の力だと自分の能力のことを説明していた。
なら、なぜ、そういう嘘を言ったのか。
俺は、今、見てはいけないものを見てしまったのか。
そんな思考が寝起きの頼りない頭の中を駆け巡る。
亜深「・・・・・くしゅっ!」
長く背中を冷気にさらしていた為、亜深さんは溜まらずくしゃみをして起きた。
亜深「ん。あ、もう起きてたの。おはよう。今日は、冷えるわね。」
まさと「お、おは・・・。」
二の句が告げない。
亜深さんは起きてからもしっぽが生えたままだ。
まさと「あ、あの・・・。ですね・・・。」
亜深「んー? ・・・・・・・・・・・・はっ!」
どうやら、亜深さんも自分の体に起きている事象に気がついた様だ。
どんどん亜深さんの顔が紅潮する。体は凍った様に動かない。
亜深「え、えと・・・・あの・・・・・。」
まさと「うん。」
かたつばを飲む。俺だってどう対応していいかわからない。
そうしてる内にびゅっとしっぽは姿を消した。
亜深「あは・・・・あはは・・・・・。見た?」
まさと「一応。」
なんかものすごく間抜けな会話をしている気がする。
亜深「そう・・・か。」
亜深さんはいまだ紅潮したままだが、体は力が抜け、がくっと肩を落としている。
亜深「つまり。まぁ、そういうこと・・・です。今のが何か・・・。」
まさと「ええ、まぁ。随分とまぁ立派な・・・。」
間抜けな会話はまだまだ続く。
亜深「あ、ありが・・・とう。まぁ、体が限界近くなってたので、自然にその・・・補給をしようと反応して・・・ですね。」
まさと「ああ。なる・・ほど。」
それでも間抜け空間は終わらない。
亜深「だから・・・その・・・黙ってて下さい。お願い。」
まさと「あ、いや、俺、気には・・・してないし。」
亜深「そ、そう・・れは、ありがたい、こと・・・ですけれど。」
そうやってしばらく間抜けな会話が続いた。
小一時間。いや、3時間ぐらいはそのままだったかもしれない。
しばしの休みを置いて、間抜け空間は終焉を迎えた。
まさと「まぁ、ともかく。魔族の血を引いてるってことでいいのかな?」
亜深「ええ。そう。私は、元々はこの星の者では無いわ。」
まさと「ああ、そうなんだ。じゃぁ、転移事故か何か?」
亜深「そう。それで、鬼祀の統主に拾われて。」
まさと「そっか。了解。あー、出したほうが楽なら、出しといていいよ。それなりに見慣れてるから。」
亜深「あ、そうね。その方が足の直りも早いし。もっと早くこうしておけば良かったのかな?」
まさと「ああ、そうだなぁ。まぁ、それはあくまで結果論って奴だし、まぁいいんでないの。」
亜深「そうね。」
そういって亜深さんはにゅるんとしっぽを出した。
亜深「はぁ・・・。」
まさと「やっぱ、その方が楽?」
亜深「ええ、各段に。マジェスティックスは薄いけど、隠しておく事に比べれば随分楽。気分的にもね。隠さない分楽かな? つかえてたものがとれちゃった感じ。」
まさと「まぁいいことだよな。これは希望に繋がるし。」
亜深「まぁ、ね。」
で、そこで、ある事に気がついた。
まさと「まてよ。んじゃぁ、ジャンプできないんなら、飛べばいいんじゃ?」
亜深「ああ。それは無理。私は飛べないから。」
まさと「そなの?」
亜深「わかるでしょ。片腕だけ魔族のものだったりするのが。私の能力は中途半端なの。」
まさと「ああ、そういうことなんだ。じゃ、とりあえず、回復待ち?」
亜深「ええ。でも、そうそう待っても居られないような・・・。」
亜深さんは空を見上げる。
冷え込んだはずだ。空は雨雲が満ちており、それで、気温が下がっていたのだ。
まさと「やべ。こりゃ降るかな?」
亜深「多分。それも大量に・・・。覚悟はしておいたほうがいいかも。」
まさと「うひゃー・・・・。」
程なく、希望を押し流してしまうかのように雨が降り始めた。
亜深「とにかくこっちへ。」
俺達は、雨の当たらない縦穴の隅、ややへこんだ所へ二人してしゃがみこんで、雨を凌ぐ事にした。
雨は次第に縦穴の中へと流れを作り、次から次へと例の穴へ流れ込んで行く。瞬く間にそれは小さな濁流となっていった。
それだけでは無い。雨と、小さな濁流は、周辺の熱を地下水脈へと持ち去り、あたりはどんどん冷え込んで行く。
まさと「くそっ。寒くなってきたな・・・。」
亜深「雨がやむまで持久戦ってところね。」
しばらくして、冷え込みが一定線で収まっているのに気が付いた。
これだけの雨量と水量なら、もっと熱が奪われてもおかしく無い。という事にようやく気が付いた。
まさと「亜深さん、ひょっとして、何かやってる?」
亜深「え? あ、してます。障壁を。」
まさと「そっか。無理して無い?」
亜深「大丈夫。冷え込んでしまうより、こっちの方が楽。さすがに、完全に寒さを遮断するところまでは無理だけど。」
まさと「充分だよ。それで。」
亜深「それとね、さっきからマジェスティックスが濃くなってきてる。それで楽にはなったんだけど。」
まさと「そ、それはそれで、別の危険な状況が迫ってそうだな・・・。」
亜深「私は、それほどマジェスティックスに敏感と言うわけでは無いから、実際にはかなり集まってそう・・・。」
雨は一日降り続くかのような勢いだった。夕方近くなっても一向に収まる様子が無い。
こうなってくると、さすがに意識が朦朧としてくる。
うつらうつら仕掛けたところで、急に亜深さんの方へ引き寄せられた。
亜深「じっとしてて。」
まさと「は?・・・・うあっ。」
俺の首に何かが巻き付いてきた。
亜深「初めてだから、上手くいくかわからないけど、君の体に活力を送り込んでみる。」
首に巻きついたのは亜深さんのしっぽだった。
うながされて、亜深さんに膝枕してもらった態勢になる。というより、これは膝枕その物か。
亜深「ちょっとぴりぴりするはずだから、我慢して。それから、睡くっても寝てはダメ。いい?」
まさと「あ、ああ。ぴりぴりするなら寝ないで済むだろう。しかし・・・。」
亜深「ん?」
まさと「いや、まさか、こんな、膝枕してもらうような事があるとは考えもしなかったから。」
亜深「んー? はいはい。はじめるわよ。」
とたんに首元に張りついたしっぽの先当たりに、びりびりと言うか、ジンジンと言うか、こう、軽く電気が流れてるような感覚が走る。
まさと「あー、きてます、きてます。」
亜深「上手く、いってるみたいね。」
まさと「それはいいけど、こんなことして、亜深さんは・・・。」
亜深「平気。濃くなってきてる分、そっちの余力はある。」
まさと「ああ、なるほど。んー・・・あぁ、体が楽になってきた。効いてるよ。」
亜深「ん。後は本当に持久戦ね。・・・・・あっ!」
目の前の空間を見つめて亜深さんの顔が緊迫する。
何かと思い、俺も、亜深さんの見ているあたりを見て驚く事になった。
まさと「や・・・・やべぇ・・・・。これ・・・。」
その空間では何か靄のようなものが渦巻き、何かを形作ろうとしていた。
そうだ。これは、魔獣の自然発生だ。しかも、こんな目の前で。
まさと「こりゃぁ。覚悟しておいたほうがいいかな・・・・?」
亜深「・・・かなり。」
靄はやがてはっきりとした形となり、それは人の姿に似た物になっていく。
亜深「人型? にしても・・・・変ね・・・。」
まさと「あ。これ・・・人でも無い。下のほう、なんか長く体が伸びて・・・。」
亜深「そ、そうね・・・それに、なぜ、動かない?」
それは、はっきりと形になってゆく。
人、それも女性の上半身に、蛇のようにすーっと長い胴体が続き、その先は例の穴へ繋がっていた。
亜深「・・・・・・まさか。竜神?」
まさと「え?」
亜深「これは・・・・伝承されてるサイファシスの姿に似てるけど・・何か違う・・・・か?」
サイファシスに似ているというそれは、やがてゆっくりと上空へと体を伸ばして行った。
俺達を襲うでも無い。何かを破壊するでも無い。タダひたすら上空へ伸びて行く。下の穴と繋がったままで。
まさと「俺達は相手にもされて無いみたいだな。」
亜深「あ、とま・・・った。」
それはここから見て、地上数十メートルといったところまで伸びるとそこで腕を大きく広げた格好で静止した。ちょうど、樹海の森から突き出たような形で。
まさと「なんなんだろう、これ。」
亜深「とにかく、害を及ぼすような類で無かったのは助かった・・・あれ?」
上空を見上げていた亜深さんが新たな何かを見て取った様だ。
亜深「何か浮いてる。サメ? くじら? なに?」
まさと「え、・・・・あ。」
そこには、全長15メートルくらいのサメのような物が浮いていた。
横腹が開きそこから金髪のセミロングの女の子が顔を覗かせてきた。
女の子は竜神の形をした魔獣に気を引かれている様だ。
まさと「あれ・・・なにか、乗り物だよ。ホエールみたいな。ただ、ちっさいけど。」
亜深「この魔獣を調べてるみたいね・・・。声・・・掛けてみる?」
まさと「そうだな。そうしよう。このチャンスを逃す手は無い。」
俺はゆっくり起きあがって。出せる精一杯の声を上げた。
まさと「ぅおぉぉーーーーーーーーーいっ!」
女の子「ん?」
まさと「おーーーーーーいっ!」
女の子「あ! いた! いたいたいたっ!」
サメのような乗り物はゆっくりと降下し、縦穴の縁まで来て静止した。とたん。竜神型の魔獣は霧散をはじめた。
まさと「あら。なんだこれ、もう崩れ出した。」
女の子「まさと! 生きてる!?」
まさと「はいいいぃ!?」
女の子「すぐ助けるからね!」
女の子は乗り物の中に姿を消した。
亜深「・・・・知り合い?」
まさと「あ、いや、覚えが・・・無い。」
亜深「なによそれ。」
まさと「なんだろうな。」
やがて、乗り物から縄梯子が降ろされ、俺達はその中へ収容された。
女の子「よかった、よかった。行方不明と聞いた時にはどうなる事かと。」
メイド「ほんとに。」
乗り物の中には女の子のほかに見知ったメイドがいた。セントヘブンの出稼ぎメイド、リーヌだ。
すると、これは、向こうに居るパールが作った物である可能性が高い。
まさと「いや、助かった・・・。で、君は?」
女の子「え!?」
女の子は俺がそう聞いたのがまるで心外かのような顔つきをする。
女の子「えっと、覚えて・・な・・・・冗談だよね?」
まさと「いや、そういう冗談は・・・。」
リーヌ「あのっ。レーア様、です。せ、僭越ながら。」
まさと「・・・・・・・・・・・・・嘘。」
女の子「ほんとだよっ。」
しばし沈黙。いや、確かにこましゃくれたガキのレーア第四王女なら知ってるが、こんな美少女は俺は知らん。それが正直な感想だった。
まさと「仮面か? それ。」
女の子「なんでよっ! アレから背が伸びてるの! 成長期なんだからっ!」
まさと「うー。確かにその口のきき様。レーアっぽいが・・・。」
リーヌ「お美しくなられたでしょ?」
まさと「ぐぅ。」
思わず親指を立ててしまう。
レーア「なにが、ぐぅ、よっ。まったく。」
亜深「レーア王女? あのセントヘブンの。」
レーア「そうですっ。」
そこまで話して、レーアの肩越しに妖精の姿が目に入った。
まさと「ファルネ、お前、どうして呼んだ時に来てくれなかったんだよぉ〜。」
ファルネ「ん?」
ファルネは一瞬疑問を浮かべ、頭をぶんぶんと横に振って何かを否定している。
レーア「ああ、違うよ。これは。」
まさと「え? ファルネじゃねぇの?」
レーア「パールさんが作ったマーガレット3(さん)。」
まさと「なにぃ?」
確かに、言われてみると、姿やサイズはファルネみたいだが、ようく見ると、頭にでっかいパーツがくっついてるし、全体にメカっぽい。
どうやらこれがファルネではない事は確かだ。
そこまでだった、助けられて見知った顔を見たからか、緊張の糸が急速に緩んで、俺は意識を失った。
気が付くと、俺はもう自分の部屋に運ばれ、自分のベッドで寝かされていた。
ミュウが覗き込んでいる。
ミュウ「ん。もう大丈夫そうだね。」
まさと「おぅ。心配かけた・・・わな。」
ミュウ「まぁ。無事で良かったよ。」
まさと「ああ。みんなは?」
ミュウ「隣。呼んでこようか? それとも起きれる?」
まさと「ああ、起きるよ。っと、それより、風呂が先、かな?」
俺は、ドロドロのままだった。服その物は着替えさせられていたが、どうにもあちこち汚れてベトベトだ。
ミュウ「そだね。湧かせてあるから、浴びといで。」
まさと「ん。そうする。」
レーア達が乗っていた物、これは、完全修復に入ったホエールに変わる足として、また、ホエールその物の連絡艇として、パールが新たに建造した船であり、ジンベイと呼ぶらしい。言われてみれば形はジンベイザメに似ている。
そのジンベイの中で気を失った俺は、リーヌに介抱されつつ、この部屋に直行だった様だ。
ジンベイでやってきたメンバーは隣の女部屋で控えてた。