第6話 最強の敵・そして… #5 ドラゴニック

異形の者と化したサイファーの渾身の一撃で、吹き飛ばされてしまった、俺とミュウ。
ミュウは、俺とは違ったほうに飛ばされ、どうなってしまったか、サイファーのうねる胴体に阻まれて、一切知る事が出来なかった。

ミュウ「あぐ・・・・。」

ミュウは飛ばされた時、玉座の傍にあった石柱にしこたま体をぶつけ、その激痛に耐えていた。

ミュウ(だめ・・・あばら折れた・・・かも・・・・)

その痛む体をおして、辺りを見まわす。

ミュウ(まさと・・・・は? どこ?)
ラルフ「こっ、これは・・・なんだっ、なんなのだっ!?」

入り口のほうでラルフさんの声が聞こえた。
サイファーの頭の辺りは見えるが、入り口のほうのラルフさんの姿は、サイファーの胴体に阻まれて、確認することが出来ない。

ミュウ(と、父さん・・・・入っちゃだめ・・・・)
ラルフ「うぐぁ・・あ・・・・・・・・。」
パール「きぃゃぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」


サイファーの口から真っ赤に燃える炎が吐き出され、直後に断末魔のごとき自分の父の声と、パールの絶叫が聞こえてくる。
そして、地面すれすれに垣間見得る隙間から、煤けて横たわる自分の父の姿を一瞬だが見てしまう。

ミュウ「!」

ミュウの心を絶望が包む。
深く、暗く、深淵のような絶望がぽっかりと口をあけていた。
ミュウがその絶望に捕らわれんとした時。

『娘・・・よ・・・・。』
ミュウ(!?)
『エルフの娘よ・・・エルフと人との間にはぐくまれし、心豊かな娘よ・・・。』
ミュウ(誰っ!?)
『私は、フレイムドラゴン。お前と鍾乳洞で出会った・・・・。』
ミュウ(あ・・・。)
ドラゴン『私は間もなく、命の灯火を消す事になる。今こそお前の持つ、炎竜の朱玉に刻まれた契約により、お前の望みをかなえよう。』
ミュウ(炎竜・・・? 竜の守り? 望み?)
ドラゴン『そうだ。炎竜の珠玉はドラゴンズコアであり、私の死後、新たなフレイムドラゴンがそれより生まれ出でる。
それを守ってきたお前に、望みをかなえてやる事が出来る。』
ミュウ(ドラゴンズコア? じゃぁ、これは、竜の卵・・・。)
ドラゴン『そう考えて良い。さぁ、お前の望みをかなえよう。悲しみを、悔しさを、すべて跳ね除けられる絶大な力を。』
ミュウ(絶大な力・・・? まさとを、皆を守れる?)
ドラゴン『守れよう。ただし、忘れてはならないことがある。この力を振るえば、お前の命を共に燃やす事になる。寿命を縮める事になるのだ。』
ミュウ(え・・・・長く生きられなくなるって・・こと?)
ドラゴン『そうだ。使いすぎれば命を落とす事もある。使い方に注意せねばならぬのだ。』
ミュウ(そう・・・。)
ドラゴン『我が力・・・・受け入れるか?』
ミュウ(・・・・・・・一つだけ聞かせて。卵を守ったからって、どうしてそこまでの力が・・・・。)
ドラゴン『それは簡単だ。お前と、お前の大切に思う男に出会えた事が、私にとってこの上なくうれしい事だからだ。』
ミュウ(あ、あたしと・・・・・・・まさと?)
ドラゴン『そうだ。私はずっと、お前達の事を見ていたよ。遠きこのドラゴンの墓場より。長く生きてきた私に喜びを教えてくれたお前達に力を貸そう。さぁ、我が力、受け入れるか?』
ミュウ(・・・・・・・うん。力を貸して。皆を助けたい。)
ドラゴン『よかろう。さぁ、今、授けん。我が力を。ドラゴニックパワーを!』
ミュウ(・・・・・・あ・・・・・。)


絶大な力の流れが注ぎ込んでくる。
その余りの大きさと暖かさにミュウは思わず声を漏らす。
そして、その体に変化が起きて行った。
注ぎ込んできたドラゴニックパワーは、恐るべき治癒能力を発揮し、ミュウの傷ついた体を瞬く間に再生させて行く。

ドラゴン『お前の腕は全てをなぎ払うドラゴンの腕。お前の足は全てを乗り越えるドラゴンの足。お前の目は全てを見据えるドラゴンの目。お前の心は全てを受けとめるドラゴンの心。さぁ行くがよい。己が愛する者のために。』

ミュウの体のどこからとも無く、いや、全身から炎がほとばしり、柱となる。
ミュウはその柱の中をゆっくりと上昇して行った。

パール「なに? ミュウ?」
まさと「あれは・・・・。炎の中に?」

ミュウの胸のアザが大きく広がり、それはまるでドラゴンの頭部を模したような形になる。
その中央には、それまで、りゅうのまもりにつけられていた、炎竜の朱玉、ドラゴンズコアが納まっている。
そして、全身に炎が纏いつき、スーツのようなものを形成する。

ガルウ「こ・・・・この力の流れはっ!?」
ミュウ「やらせない・・・守ってみせる・・・」


ミュウはかっと目を見開き、サイファーに向かって炎の柱を飛び出した。

ミュウ「このドラゴニックの力で!」

ミュウの拳がサイファーの肩口を捕らえる。
とたんにものすごい勢いで、サイファーは吹き飛ばされ、壁に激突する。
城全体がその衝撃を受けて揺れる。

まさと「ミュ・・・ミュウ・・・・。」
シルフィー「リフレース・・・。」
まさと「えっ!?」


俺のすぐ後ろにシルフィーがいた。ファルネをつれて。

まさと「シルフィー・・・・。シルフィーーーーーっ!」
シルフィー「あぁ、まだ動いたらダメだよぉ。」

何がどうしてこうなったのかはどうでもよかった。
目の前にシルフィーがいる。
生きて目の前に。
俺はうれしさの余り痛む体の事も忘れて、シルフィーを抱きしめていた。
その間も、シルフィーは俺の体に回復魔法を掛け続けてくれていた。

シルフィー「ファルネに助けてもらったんだよ。」
ファルネ「ギリギリのところで、転移させました。」

大きくなってファルネがいう。
そうだ。その手があった。

シルフィー「はい。お守り。」
まさと「あ。」


シルフィーを離すと俺の首にはシルフィーがいつもつけていたネックレスが下がっていた。

シルフィー「水龍の涙。これも、りゅうのまもりと同格の宝玉だよ。」
まさと「え、これって、そんな凄いもんだったのか。いや、でも。」
ファリア「ブレイバー。」
まさと「わっ。」
ファリア「攻撃力を上げる呪文だ。」
シルビー「リフレクテント。」
まさと「うぉ。」
シルビー「最強の障壁呪文のプレゼントじゃ。」


いつの間にか、ファリアとシルビーちゃんまで中に入ってきていた。
それも、補助系呪文のプレゼント付き。

シルビー「これで、ちょっとは楽にやれるじゃろう。」
まさと「え、あ。」
ファリア「まさか、黙って見てようってんじゃぁないよな?」
まさと「いや、お、表は?」
シルビー「魔獣の数が減ってきおった。獣人のに任せてきたわい。それより、早ようなんとかせんと、えらいことになるぞ。」
まさと「ああ、そうだな。よし、ミュウが善戦してる間にパルティアさん助けるぞっ。」
ファルネ「そうこなくっちゃな。」
まさと「シルフィーはここに残って。ファルネ、シルフィーを頼む。」
シルフィー「う、うん。」
ファルネ「はい。」

玉座の間の脇を通って、奥に進む。
案の定、ガルウが目の前に現れた。

ガルウ「どちらへ行かれるおつもりですか?」
まさと「でぇいっ!」

問答無用でガルウに向かってくさなぎを振り下ろす。

ガルウ「ぐあぁ・・・。」

斬れた! さっきまでは全然ダメだったのに。
そうか・・・・そうだ・・・俺は、あの時集中力を失っていた。
だから、くさなぎの力が出しきれていなかったんだ。
さっきまでは、がむしゃらに振るだけでは、斬る事が出来なかった。そういうことなんだ。
そのガルウは音も無く倒れ、姿が消えた。

まさと「消えた? 一体どうなってるんだ・・・・。」

考えている暇はない。
さらに奥に進み。動力のところまで来た。
天井から柱が動力部に突き立っている。
これをどうにかしないと、パルティアさんは助け出せない。
どうどけたものか。
と、突然、柱がめきっと音を立てて、ひしゃげ、横合いに吹っ飛んだ。

ミュウ「早くっ!」

見ると、ミュウが腕をこちらに向け何かを掴んでいるかの仕草をしていた。
そうか! ジェノサイド・ハッグ。アレと同じなんだ。
じゃぁ、これは、ドラゴン・ハッグとでも呼ぶべきか。
大慌てで、パルティアさんを装置から引き出す。

ファルネ「おい。あんまり見るなよ。」
まさと「あ〜、こういう時に何を言ってるんだお前はっ!」


パルティアさんは裸で装置に入れられていた。
シルビーちゃんは俺とファリアのやり取りを笑いながら即座にショールをはずし、それをうまく結んで、服の様に仕立て上げた。

シルビー「さぁ、ぐずぐずしていないで、表に出るぞぃ!」

シルビーちゃんとファリアが気を失っているパルティアさんを肩で担ぎ、俺がその先導をする形で来た道を戻る。
傍にいたマリンさんも一緒に出口へ向かった。
その間も、ミュウはドラゴンの力で、サイファーを翻弄しつづける。
うねるサイファーの胴に気を付けながら進む。
俺達が出入り口につく頃には城の振動は収まっていた。装置が停止したのだ。

シルビー「よし、後はわしらで運ぶ。お前さんは、ミュウを手助けしてやれ。」
マリン「私も手を貸したいところだけど、これじゃぁね・・・。」


マリンさんがコアの抜けたブースターを見せる。

パール「装置がコアを強制的に分解して吸収したみたい。こんな影響があるとは予想もしてなかった・・・・。残念だけど、今戦えるのはミュウと・・・あなただけよ。」
まさと「わ、わかった。」
ガルウ「そうはいきませんよっ。」

複数いたガルウは出入口のところへ、瞬時に移動。一つの実体となった。

まさと「ガルウ! どけ!」

俺は、くさなぎを構えてガルウに挑む。

ガルウ「無駄です。さらに強固な障壁をこのドームに張らせていただきました。こうなったら、あなた方全員生贄となっていただきますよ。」

ガルウの表情がどんどん歪み、額に六つの目が開いて、人とも魔族ともとれぬ姿になっていく。

パール「ガルウ・・・・あなたは一体何者・・・・?」
ガルウ「知っても無駄なことです。どの道、すぐに死を迎えるのですから。くくっ。」
まさと「そんなことあるものかっ!」

俺は、ガルウに全力で斬りかかった。
玉座の間の脇のほうでは、ようやく動けるようになったダイアが、コアを支えるだけで精一杯のマーガレットのところへ、床を這いながら、ようやく辿り着いていた。

マーガレット「・・・・・残念。ここで・・・・おしまいですか・・・私。」
ダイア「・・・・それは・・・どうかな・・・・。」
マーガレット「え?」


マーガレットに向かって、にやっと笑うダイア。
圧倒してくるドラゴニック・ミュウに苦戦するサイファーは、いよいよ最後の手段に出た。
異形の者となったサイファーの胸の部分に、サイファー、いやアスフィーが浮き出てきたのだ・・・・。

ミュウ「あっ・・・・。」
サイファー「さぁ、討てるものなら討て。」
ミュウ「なにをっ!」


ミュウは、その浮き出たアスフィーを避けて、他の部分を攻撃しようとするが、サイファーは器用に胴をうねらせ、アスフィーをミュウの眼前に持ってくる。

ミュウ「・・・・・・あっ・・・・くっ!」

さすがにこれでは、ミュウも攻撃を躊躇するしかなかった。
俺は、意識を集中して、何度もガルウに斬りつけた。
しかし、いかに傷を増やそうと、ガルウはひるまなかった。
まるで、痛みを感じないかのように。不敵な笑いを浮かべつづけていた。

まさと「ど、どうして、こいつは倒れないんだっ!?」
ファリア「・・・普通じゃねぇ・・・。」

俺達がそうして、睨み合っているうちに刻一刻と時間は過ぎる。
どんどん濃度を上げ、渦を激しくする、魔城周辺。残された時間はわずかしかなかった。
突如、城を大きな衝撃音と揺れが襲う。
次に起こった出来事に我が目を疑った。
ガルウの立っていた場所が大きく崩れ落ちていて、ガルウの姿は無い。
代わりにホエールの艦首が、そこにあった。

エド『なにやってんでぇい! 外はすげぇ事になっちまってんだぞぉ!』

ホエールが再度突入を敢行したのだ。
そのへさきはぎりぎりドームの外壁を破ったところで止まり、見事に、ガルウのいた辺りだけを吹き飛ばして、静止したのだ。
エド・マウントピーク。
気が小さい割りに、やる事は凄くでかい。

シルビー「あ、さぁ、ぐずぐずはしておれん。ホエールに移るぞ。」
まさと「あ、ああ、そうしてくれ。」


俺は、おっさん、ラルフさんの姿を探す。
しかし、その姿はどこにも見つけられず、煤けた白い鎧の欠片が、ほんの少しばかり転がっていただけだった。

パルティア「う・・・・あ・・・。」
シルビー「パルティア!」
まさと「ん?」


ようやく神官のパルティアが目を覚ます。

パルティア「・・・お手間をかけた様ですね・・・。」
まさと「いや。早くホエールで、手当てを。」
パール「そうね、かなり衰弱してる・・・。」
パルティア「待って。待って下さい。伝えねばならぬことが・・・・。」


ミュウは、アスフィーを盾にするサイファーを攻撃する事が出来ず、苦戦している。
サイファーの腕がミュウを鷲掴みにしてきた。
ミュウは、ドラゴンの力で、それに必死になって抵抗する。
が、抵抗するだけで、次の、攻撃へは繋げられなかった。

ミュウ「ぅ・・わぁぁぁぁぁぁっ!」

ミュウと、ミュウを掴む腕の間に光が発生し。その光の中にシルフィーが現れた。
シルフィーは徐々にそのサイファーの腕を押し広げ、やがて、姿を変えて行く。

シルフィー「真実を、ほんとうの敵を、見失わないで、ミュウ!」
ミュウ「え!?」


シルフィーの姿は、俺が昨日ファルネに使わせてもらっていた物に、細部は違うもののよく似ていた。
これは、ルーン・ブラストスか?
パルティアさんも伝えるべき事というのを苦しみを耐えながら続ける。

パルティア「サイファーは・・・・倒しても・・・意味が無いのです・・・。ガルウを・・・。」
まさと「あ、ガルウなら今やっつけた。ホエールに吹っ飛ばされたぞ!」
パルティア「いいえ。それは・・・・ガルウの影に過ぎません。プロフェッサーガルウも、サイファーも、ガルウ本体が生み出した人形なのです・・・。」
まさと「なんだって!?」
パルティア「ガルウの本体は・・・・。」
シルフィー「本当の倒すべき敵は・・・。」
パルティア「玉座の間のすぐ後、動力装置の裏に潜んだ・・・・。」
シルフィー「・・・・オロチの首!」
ミュウ「はっ!」
まさと「オロチ!? ヤマタノオロチの首!?」

それを聞かされた時、玉座の間の隅のほうから、玉座の間の奥、動力装置に繋がった、まがまがしい姿をした飾り付けの部分を目掛けて、マーガレットが最大限に噴射しながら、一直線に飛んだ。

マーガレット「てーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーいっ!」

飾り付けの部分まで来ると、噴射の向きを変え、渾身の回し蹴りを、マーガレットは飾り付けに放つ。
火花を散らして、大音響の激突音がドームに響く。

サイファー「グァァァァァァ・・・・・・・。」

とたんに、サイファーはもがき、苦しみ、灰となって崩れ落ちた。
飾り付けの部品がぼろぼろと崩れ落ち、中から、八つの目をはさむ様に、上下に口のある、この世のものとも思えない姿をした、オロチの首が姿を現した。

ミュウ「じゃ、じゃぁ・・・アスフィーは・・・にいさんは・・。」
シルフィー「・・・・・・・オロチの首の・・・中に・・・・。」

オロチの首はズルズルと、玉座の間から這い出て、その長い胴体をさらけ出しながら、上へと登って行く。

オロチの首『おのれ・・・もう少しというところを・・・。だが、もう遅い、時は既に動いたのだ。もう誰にも止める事はかなわぬぅっ!』
まさと「なんか、勝手なこといってやがるな・・・・。」
パルティア「オロチの首こそ、城の動力源であり、その中枢。オロチの首こそが城その物だと言っていいのです。私は、そのオロチに活力を与える為の触媒だったのです・・・。」


そうこうしている間に、オロチの首が抜け出た事で、魔城はそのバランスを崩し、徐々に崩壊をはじめていた。
次々と、崩れ、砕け、海面に破片が落下して行く。

まさと「・・・・・・あ、皆は早くホエールへっ! この城、いつまで持つかわかんねぇ!」
シルビー「お前はどうする!? 崩れたらお前はっ!」
まさと「残るよ。残らないと。ほら、あいつ、きっと残って何とかしようとするだろうし。俺も・・。だから、残んなきゃ。」


俺は、宙に浮かび、オロチの首を見据える、ミュウを見つめていた。
ミュウは、こちらを振り向き、微笑みながら、オロチを親指で指差していう。

ミュウ「行くよ! さぁ!」
まさと「ああっ!」

俺は、ミュウのほうへ向けて走り出す。
俺は、ミュウが次にどうするかわかっていた。
ミュウは、俺が次にどうするかわかっていた。
だから、行くんだ。

パルティア「・・・・・ルーンの加護が・・・・・・あらん事を・・・・。」

ミュウのすぐ足元まで行くと、ミュウはこちらに向けて手を伸ばす。
すると、すぅっと、俺の体は持ち上げられ、ミュウの居るところまで持ち上げられる。
まるで、エレベーターにでも乗っているかのように。
いや違う、ミュウの腕は今、ドラゴンのそれに等しい物になっているんだろう、その手で、俺は支え上げられたのだ。

ミュウ「やっとここまで来たね。」
まさと「ああ、そうだな。けど、それって、どうしたんだ。」
ミュウ「あ、これ? フレイムドラゴンが力貸してくれた。」
まさと「あいつか。」
ミュウ「りゅうのまもりにはまってた宝玉、あれ、ドラゴンの卵なんだって、それを守ったお礼だとか。」
まさと「うへっ。そうだったのかあれ。って、それか? 埋まってるじゃないか。」
ミュウ「そうそう。今は、私が使ってるからね。こういう事になるみたい。フレイムドラゴン、まさとに感謝してたよ。さぁ、肩に捕まってて、軽く持ってるだけで、一緒に飛べるから。」
まさと「ん? こ、こうか?」


俺は、ミュウの言う通りに肩に手を置く。
すると、ミュウの手が支えるような仕草をしていなくても、俺は宙に浮きつづける事が出来た。

シルフィー「私も行きます。」
まさと「いや、シルフィーは、ホエールに行ってくれ。」
シルフィー「え、でもっ!」
まさと「何が起こるかわかんないから、ホエールを守ってて欲しいんだ。今、そういうの頼めるの、シルフィーしか居ないし。」
シルフィー「ん・・・・わかった。え・・・っと。」


シルフィーは俺の顔に少し自分の顔を近づけて聞く。

まさと「ん? あー、うん。」
ミュウ「へ? あ、うんうん。」
シルフィー「うん。頑張って。」


シルフィーは俺の頬にキスをすると、ホエールのほうへ飛んでいった。

まさと「さぁ、行こうぜ!」
ミュウ「うん!」


ミュウと俺は、オロチの首の胴体に沿って、高空にある、オロチの首の頭に向けて上昇して行く。
時折、それに気付いたオロチの首が胴体をゆすって、ぶつけようとしてくるが、ミュウの空中機動力は驚くほど高く、難無く、それをかわし、ぐんぐん上っていった。
魔城では、ホエールが皆を収容し、ゆっくりとテラスから離脱して行く。

まさと「なぁ、ミュウ。」
ミュウ「ん?」
まさと「アスフィー・・・助けようぜ。」
ミュウ「そうだね。まず、どこに入ってるか探さないと。」
まさと「そうだな。とりあえずは、牽制攻撃してくしかないか。」
ミュウ「だね。」
まさと「おし。じゃぁ、上から俺を降ろしてくれ。その状態で、落下しながら斬りつけてく。」
ミュウ「ん。じゃぁ、後で拾いに行く。」
まさと「おう。海面につく前にな。」
ミュウ「あははっ。そうする。ところで、息、平気?」
まさと「ああ、平気だ。シルビーちゃんの障壁魔法が効いてるみたいだ。」


そろそろ、霧から雲の状態になりかけている、マジェスティックスを付きぬけながら上昇を続ける。
いよいよ頭部が近くなると、オロチの首は炎を吹き降ろしてきた。

ミュウ「フレイムドラゴンに炎吹きかけてもねぇ。」
まさと「ああ、そうだな。一瞬驚いたが・・・・・何ともないな。」


荒ぶるオロチの首の爪をかわし、その直上まで登り詰めると、俺はミュウから手を離し、オロチの首目掛けて下降して行く。
ミュウはむらくもを呼び出すと、そこから放たれた突風で、オロチの首の動きを抑える。俺が、斬り掛かりやすい様に。
俺はいよいよオロチの首に迫ったところで、くさなぎに意識を集中し、光の剣圧を放ちながら、オロチの首を斬り下して行く。

まさと「でぇぇぇぇい!」
オロチの首『ぐぅおおおおっ!』

くさなぎで斬った後はさすがにオロチの首自身が大きい為、かすり傷程度にしかならない。
舌打ちしながら下降する俺は、ミュウがドラゴン・ハッグで、挑みかかるのを確認する。

ミュウ「たぁぁぁっ!」
オロチの首『ぬぉおおおっ! これしきの事でっ!』


オロチの首とミュウはがっぷり組んだ状態で、互いに一歩も引かない。

まさと「おい・・・・。」

俺は、その間も、どんどん下降して行く。
それに気付いているミュウは焦る。

ミュウ「くっ!!」
オロチの首『お見通しですよ。さぁ、彼の落ちて行くところをゆっくりと見物でもしていましょうか。』


どんどん落下速度が上がってくる。
さすがに、これはまずい。
みかがみの盾を出して、それから発生する圧力を利用して、減速しようとするが、さすがに、効果は薄い。
さすがにあきらめ始めた時。
背中から不意に誰かが俺を抱えて、減速をはじめた。

マーガレット「んっしょっと。」
まさと「あれ? 動いてて平気なのか?」
マーガレット「はい。コアを吸収されない様、応急処置してもらいました。私も一緒に戦います。」
まさと「あ、どうするかな。」
マーガレット「私では、オロチにもかないませんし、ホエールも守りきれませんが、あなたの足場になるくらいは出来ます。その、高いところですし。」
まさと「その話し乗った。よし、胴体すれすれを螺旋状に取り巻いて上昇だ。」
マーガレット「はいっ!」


マーガレットは俺を抱きかかえたまま、オロチの胴体すれすれを上昇する。
俺は、くさなぎをその胴体に突き立て、切り裂きながら上昇して行く。

オロチの首『ぬぐわぁぁぁぁ!』

その、まさに登り詰めるような痛みの感覚に、オロチの首は苦悶の声を漏らし隙が出来る。
ミュウを掴む腕も緩み、ミュウは束縛から開放された。

ミュウ「こぉのぉ・・・・・これで、どぉだぁぁぁぁーーっ!」

ミュウが拳を叩きつける。
ミュウからオロチの首の方向へ偏って発生する大爆炎。
ソーサルブースターで繰り出すボンバーの数十倍以上の規模の爆発だ。
堪らず、オロチは上体ををそらす。
しかし、アスフィーの場所がはっきりしない。
このまま余り威力のある攻撃を続けて良いものなのだろうか。

まさと「おいマーガレット。」
マーガレット「はい?」
まさと「アスフィーが捕らわれている場所・・・特定できないか?」
マーガレット「そうですね。大まかになら掴めるかもしれません。やってみます。」
まさと「頼む。」

マーガレットはオロチの首を凝視し、センサーでその内部を探る。

マーガレット「内部が・・・・複雑で・・・・・あれぇ・・・・。」
まさと「だめか?」
マーガレット「いえ、動いてますから、調べにくくて。時間を掛ければきっと。スキャンしたまま動きましょう。」
まさと「ああ、そうだな。そうしよう。」

ミュウはさっきの爆炎攻撃の威力の大きさに気付いたのか、炎の柱やハッグによる物に、攻撃をスイッチしている。
早くアスフィーの居場所を突き止めねば。
ホエールは渦の外円に停泊して、状況を見守っていた。
しかし、ホエール自身、二度の突入で、相当傷ついており、かなりがたがたになっていた。

エド「やべぇ。安定しねぇ。こりゃ、どこかに降りるかしたほうがいいかも知れねぇぞ。」
パール「いよいよと思ったらそうして。今、皆に応急処置に走ってもらってるわ。それで安定すると良いんだけど。」
エド「シルフィーが引っ張ってくれなかったら、浮いてるのがやっとってとこだった。すまねぇな。無茶して。」
パール「いいえ。助かったわ。立派なホエールの艦長よ。」
エド「て、手元が狂うから、お世辞はなしにしてくれぇ〜。うわっ。」
パール「頑張ってね。館長さん。」
エド「お、おぅ。まぁ、酔いたくは無いから、せいぜい頑張るわ。」
パール「ああ、そうだったわね。」

ホエールは、魔城から離れる時、そのがたから、自力航行が若干難しくなっていた。
それを、ルーン・ブラストスの力を借りているシルフィーが外部から応力を発生させ、引っ張る事で、どうにか離脱したのだ。
障壁も発生させる事が出来ず、それさえもシルフィーに頼っていた。
今も、シルフィーは外で、ホエールを支えつづけている。

エド「上は、どうなってんだろうなぁ・・・・・・。」
パール「頑張ってる様よ。時々、火柱と閃光が見えるから。どういうわけか、マーガレットが加勢してるみたいなんで、少し安心なんだけど。」
エド「え、そりゃ変じゃないかい? ブースターがだめになったんなら、あのからくり娘も・・・。」
パール「謎。簡単にそう決めつけたくないんだけど、謎は、謎。」
エド「そうかぁ。おめぇさんにわかんねぇ事なら、しゃぁねぇなぁ。」


東京の空には夜が迫ってきており、東の空から暗くなりつつあった。

真悟「まだ・・・・続いてんのかなぁ。」
広江「ああ。衛星から交戦が確認されてるそうだ。時々上空で明かりが見えるだろう。あれがきっとそうだ。」
真悟「あれ、やっぱりそうなんだ・・・。」
リーヌ「あのぉ・・・。」
広江「どうした?」
リーヌ「私・・・居ても立っても居られないんで・・・お風呂の掃除とか、してていいでしょうか・・・・?」
広江「・・・・・ん、そうだな。全て終わったら、風呂にゆっくり浸からせてやりたい。そうやって待つのもいいかもしれないな。」
リーヌ「はいぃっ! お風呂掃除で応援しますっ、私っ!」


リーヌは一目散に風呂場に消えてゆく。

広江「応援か・・・・。私は・・・・何でしようか・・・。」

オロチの首がまた変化してきていた。
マジェスティックスの濃度が上がってきている為か、どんどん、その体が大きくなってきている。
俺もミュウも必死になって牽制しつつ、マーガレットの検索結果を待つが、オロチの首の力にだんだんと押される様になってきた。

まさと「マーガレット、まだ?」
マーガレット「はい。やはり上半身らしい。といったところまではなんとか・・・。それらしいところが幾つもあるんです。」
まさと「・・・・・・そうだ!」
マーガレット「はい?」
まさと「候補の中で、マジェスティックス濃度が一番低そうなところは?」
マーガレット「・・・あ! はい! 胸です。胸部の下、中央、そこが一番低い様です!」
まさと「聞いたかミュウ! 胸だ、とにかく抉じ開けるかっ!?」
ミュウ「そういうのなら、まかせて・・・・・よっ!」
オロチの首「ぐぁ。なにをぉ!?」

ミュウがハッグで、オロチの首の胸の部分を探る。
そして、開閉部のようなところを見つけると力にあかせて抉じ開けた!
上下に抉じ開けられたオロチの首の胸部は半透明の防護膜があり、その中に、さまざまな器官に混じって、球状の、玉座の間に合ったのと似た動力部があり、アスフィーの姿を確認する事が出来た!

まさと「ビンゴぉっ!」
???「ようやくこの時が来た・・・。」
まさと「なにっ?」


俺のすぐ後ろにダイアが居た。
それも、今まで見たダイアと随分と雰囲気の違う、愁いを纏った、魔族としての姿で。
角が三本に増え、その長さも倍になり、翼もより大きなものが生えていて、指から生える爪は鋭さを増し、腰の部分の服の張りが、そこに突起物があるのを物語る。
表情も、今までの童顔っぽい、おどけた部分は微塵も無かった。

マーガレット「あ、こられましたね。これでよかったんでしょうか?」
ダイア「上等だよ。済まなかったね。」
まさと「ど、どういうことなんだ・・・。これは・・・?」
ダイア「わたしがオロチの首とその動力部を探し当てる様、その人形に頼んだ。」
マーガレット「私のコアが吸収されない様、特別の障壁を張ってくださいました。」
まさと「なに? それって、パールじゃなかったのか!? な・・・・・なんで・・・・。」
ダイア「話している暇はない。さぁ、聖剣で、あの防護膜を斬れっ! アスフィーはわたしが助け出すっ!」
まさと「!」
ダイア「急げ! わたしはこの時の為に苦汁を舐めてきた! 今を逃すわけに行かないのだ! お前は、アスフィーを助けたくはないのかっ!」
ミュウ「なんでもいから、何とかしてよっ。そう長くは押さえてられないっ!」
まさと「くっ!」


ダイアの言う事がまだ理解し切れなかったが、アスフィーを助け出すチャンスが今しかないというのは納得出来た。
俺は、くさなぎに意識を集中して、振動を呼び起こす。
その振動が刃の上で光となり、その光の刃を防護膜に向けて薙ぎ放つ。
アスフィーを傷つけることなく、防護膜のみを破壊するイメージを思い浮かべながら。

オロチの首「うおおおおおっ! ダイア! ダイアグローゼ・フォーザーバイン! お前はぁぁぁぁっ!」
まさと「てりゃあぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」


硬質な音を残して、防護膜は崩れ去った。
動力部目掛けて、いや、アスフィーを目掛けてか。ダイアが猛然と宙を飛ぶ。

ダイア「アスフィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」

ダイアは、アスフィーにしがみつくと、いとおしげにその顔をなで、動力部から体を引き抜いて行った。

オロチの首「ぐおぉぉ。やめろぉ。その男を戻せっ。やめろぉぉ・・・・。」

アスフィーが動力部から完全に抜き取られると、オロチの首はゆっくりと、動きを止め、じわじわと下降し始めた。
ダイアは、アスフィーをしっかりと抱きしめたまま、空中を漂う。

ミュウ「にい・・・・さん・・・・。」

やがて、漂う事をやめ、アスフィーを抱えたまま、ダイアがこちらに飛んでくる。
ミュウも、ハッグで、オロチの首を押さえつける必要が無くなった為、こっちにやってくる。

まさと「本気だったのか・・・。」
ダイア「魔族は、純粋だ。遊びや気まぐれで、嘘などはつかない。」
まさと「ダイア・・・・一体、お前、何物なんだ? 本当に俺達の知ってるダイアなのか?」
ダイア「そうだ。」
ミュウ「にいさん!」
ダイア「大丈夫だ、気を失ってはいるが、外傷などは無い。分かっている。私に腹を立ててるんだろう。何を言われようと、何をされようと構わない。ただ、今は、彼を助けさせて欲しい。それだけだ。」
まさと「・・・・・・・じゃぁ、お前は、ずっと、アスフィーを助ける為だけに、動いてたと言う事なのか?」
ダイア「そう。ガルウの正体と、本当のアスフィーの居所を探る為に。最初は、本当にお前達にとっては敵だった。アスフィーの願った事だと思っていたのだ。だが、それは違っていた。全て、ガルウが裏で糸を引いていた。それに気付いたのが遅すぎた・・・。」
まさと「いつ頃なんだ、それは。」
ダイア「確証を持って真相を探る為に動くようになったのは、パールが寝返った頃だ。その頃には、アスフィーが本当にアスフィーなのかさえもわからなくなっていた・・。」
まさと「それが、サイファーか・・・・。」
ダイア「お前がティラにやってきた時、少なくともあの時は、サイファーはアスフィーだった。そのはずだった。
だが、それも今では怪しいのではないかと思える。アスフィーであったり人形であったりした様なのだ・・・。」
ミュウ「じゃぁ、村に戻った時は、アスフィーにいさんだったってことね・・・・。」
ダイア「いや、あの時は既にどちらかはっきりしなくなっていた。その判断が難しかった。だから、人形も消え、なおかつ、ガルウのいや、オロチの首に捕らわれた、アスフィー本人が特定できる状況を待っていた・・・。」
まさと「うーん。かなり、話しはややこしそうだな。ホエールで、ゆっくり話してもらえるか、皆の前で。」
ダイア「そうだな。今は、アスフィーをどこかで休ませたいし。」
オロチの首「そうはいきませんよぉーーーーーーーっ!」
ミュウ「えっ!?」

動力を停止させられ落ちてゆくだけかと思っていた、オロチの首が再び動き始めた。

オロチの首「そうだったのですね。ダイアグローゼ。あなたの裏切りが事の進行を遅らせていたのですね・・・・。」
ダイア「・・・・・・・・そうだ。こいつらが本当の力をつけ、ここまで状況を引っ張ってくるのを待っていたっ!」
オロチの首「では、エルフの村の陥落が遅れたのも、魔獣の強化が遅れたのも、転送ポイントの選定が遅れたのも、そのエルフの娘にむらくもを持たせたのも、全て・・・・。」
ダイア「そうだ! 全てうまく運ぶ様、そうした! もうお前の命令には従わない! 誇り高い魔族の名の元に!」
オロチの首「ふふん。エルフの男と繋がろうと言う魔族の娘が、偉そうな事を・・・・。」
まさと「こいつ・・・まだ動けるのか・・・・。いや、元々動けてて、触媒にアスフィーを使っていただけなのか・・・。」
オロチの首「お察しの通りです。アスフィーは、計画を進行させる為の道具であり、私が高効率に力を得る為の触媒だったのですよ。ですが、それも、もう必要なくなったようです。豊潤なマジェスティックスが私にどんどん力を注いでくれますよ。もう容赦しませんよ。あなた達には消えていただきます。」
ミュウ「勝手な事ばかり・・・」
まさと「言ってるんじゃねぇっ!」


ミュウの放った爆炎と、俺の放った光の剣圧がオロチの首を目指す。
オロチの首はそれを食らって隙を作る。

まさと「ダイア。ここはお前の話しを信じておく。アスフィーを連れてホエールまで逃げろ。こいつは俺達で、何とかする。」
ミュウ「そうだね。後はこいつをぶっ潰すだけ!」
ダイア「・・・・・・・そう、させてもらう・・・済まないな。」
ミュウ「アスフィーにいさんを傷つけたりしたらタダじゃ置かないからねっ。」
ダイア「ふっ。それは無い。が、肝に銘じておく。」

ダイアは、アスフィーを連れて下降して行く。

ダイア「ちゃんと戻れ! お前達には詫びなければいけない事が沢山ある!」
オロチの首「行かせませんよぉぉぉっ!」


オロチの首がそれを追おうとする。が、それはと中でがくんと静止する。

オロチの首「ぐあぁぁっ!」
ミュウ「素通りできるとでも思ったの? 人質だったアスフィーにいさんが居なくなった以上、あんたにはもう勝ち目が無くなったのを忘れないでね。こっちこそ、手加減しないわよ。」
まさと「行くぞ、マーガレット!」
マーガレット「はいっ!」


俺は渾身の一撃を放つ。
それは、オロチの首を深く傷つけ、絶叫を上げさせる。

オロチの首「ぐぎゃぁぁぁっ! そんなっ! そんなぁっ!」

ミュウの放った爆炎がオロチの首の体を熱く焼き焦がす。

オロチの首「ぎゃぁぁぁっ!!」
ミュウ「今度こそ本気の勝負よっ!」


ダイアはゆっくりとホエールに接近して行く。
それに気付いたシルフィーは障壁を緩めた。

ダイア「ったく。少しは状況説明くらいさせてくれ。いきなり受け入れるな。わたしは・・・。」
シルフィー「だって、その必要無いでしょ?」
ダイア「・・・・・・・・・・・・・・・・・・そう、なんだがな。」


ダイアが甲板に降り立つと、厳しい顔をしたファリアがそこに立っていた。
アスフィーの姿を見て、ほっとするファリア。
しかし、やがて、ファリアの表情はどんどん険しい物になり、やがて、携えた剣の柄に手を添える。

ファリア「・・・・俺が期待にこたえてやる。」
シルフィー「ちっ、違うよ、ファリアっ!」
ダイア「・・・・・・その前に、彼を収容して欲しい。」
ファリア「そのぐらいは待つ。・・・・・パール! アスフィーが戻った、急いでくれ。」


ファリアは傍の通信設備で連絡をとる。
そして、自分は、出入り口の横で、ダイアを見据えて静かに佇んでいた。