第4話 遠き異国の地にて #8 奮戦ミスティック
周りを見ていたミュウが何かに目を取られた。
ミュウ「んー? なに、あの、でかくて丸いの?」
まさと「あー。あれか。ヤシの実ジュースだな。ああいう果物のジュースが入ってんだよ。入れ物は、ヤシの実のまま刳り貫いて使ってる。ちなみに中のジュースは意外に少ない。と。飲むか?」
ミュウ「飲もっ。」
4人でヤシの実ジュースのストローにかぶりつく。
ミュウ「ん! んー!! おいしー!」
まさと「それはよかった。んぐんぐ。」
ミュウ「ああ、幸せー。」
まさと「お手軽なやつだなぁ。」
ミュウ「いいの。美味しいって事は幸せなんだから。」
シルフィー「んくんっく。うん。」
お手軽と言いつつも、こいつらの言うのももっともだと思う事はある。
美味しい事が幸せ。
確かに、食う物に関しちゃ、それが絶対の正義ではある。
忘れかけてた気がするが。再確認って言うか。
回りを見渡していると、広江さんがこっちに入ってきていた。スーツのままだけど。
手にヤシの実ジュースを持って。
まさと「おーい。広江さーん。入ってきてたんすかぁ?」
広江「いやぁ、夏だなぁ。」
まさと「ぶ。なんか笑える台詞なんですけど・・・。」
広江「こう暑いとは思わなかった。」
まさと「それでヤシの実ジュースですか。」
広江「ああ。なかなか美味いな。これは。一応、この中も見ておこうと思ったんだが、とりあえずはなにもなさそうだな。」
まさと「ああ、忘れるとこだった。そうですねぇ。今んとこ、そういうことは起きてないっす。」
広江「ああ。気にするな。今のところ、転移を止めるてだてが無いからな。起きてからがお前達の出番だろう。もちろん・・・。」
まさと「そうですねぇ。起こらない方が良いし。」
広江「実のとこ、私も入りたいとこなんだがな。こう暑いと。」
まさと「入りません?」
広江「すまない。弾痕・・・があるんだ。太腿に。」
まさと「あ、そりゃぁ・・・。すんません。無神経で。」
広江「ああ、気にする事では無いよ。」
ミュウ「あ。そう言えば、あたしは残って無い?」
ミュウは、左の肩口を指差す。
まさと「うんにゃ。綺麗さっぱり痕は残ってないぞ。」
広江「なんだ?」
まさと「ああ、大火傷したことがあるんですよ。向こうで。魔法とか、薬草とかで、綺麗に消えたみたいです。」
ミュウ「ああ、良かった。・・・じゃないか。」
広江「いや。しかし便利だな・・・。私のも消えるかな?」
ミュウ「えっと、傷にも寄るけど、一度痕になったのは・・・。」
シルフィー「怪我してすぐなら消えたかも。」
広江「そうか。治療はその時の処置が肝心、というしな。」
シルフィー「うん。」
広江さんの携帯が鳴る。
広江「私だ。ああ、今、室内プールのほうにいる。なに! そうか注意しよう。」
まさと「なにか?」
広江「このプール付近で、継続的な電磁波が出てる様だ。注意していてくれ。」
まさと「げ。まずいか? そういや、ミュウ、ブースターは・・・・。」
ミュウ「もっちろんあるよ・・・。」
そういって、ポニーテールにしている頭の後ろをもそもそと探り出すミュウ。
ひょっとして、髪の中に隠してたのか。
ミュウ「・・・・・・・・・・・・・・・ああっ! 無いっ!!」
まさと「なにぃーーーーーーーーーーーーっ!?」
ミュウ「ど、どっかで落とした・・・。かも。」
まさと「そ、そりゃ、落としたんだよ。間違いなく。さ、探すぞ。」
ミュウ「う、うん。ごめん。」
真悟「俺も探そうか? どんな物なんだ?」
まさと「ああ、このぐらいの銀色の金属製のカプセル。真中に赤い玉が入ってるやつだ。」
真悟「おっけー。」
シルフィー「私もぉ。」
散らばってソーサルブースターを探し始めた。しかし、一向に見つからない。
そうしている間に転送が起こった。起こってしまった。それも複数。
大き目の造波プールに大型の。そして、所々に小型の魔獣が現れた。
あちこちで悲鳴が上がる。
俺はくさなぎを呼び出して、小型のやつを切り崩しながら、ミュウを探す。
時折、広江さんのだろう。銃声が響く。
向こうのほうでは魔法による物だろう。火柱が上がっている。これは、多分シルフィー。
今度はルビーの時みたく電撃系は使ってない。
水は電気を通す。使えば水を伝って大惨事になる、こんなところで電撃系は使えない。
さっきから、火柱か、竜巻のような物しか見えない。さすが年の功。
そのあたりのことがわかっているんだと思えた。
まさと「ミュウ! どこだぁ!」
問題はミュウだ。
剣も持っていない。
魔法が使えるわけでもない。
そんな中で、逃げる事もせず、きっと、ブースターを探している事だろう。
早く行ってやらないと。
そうして、室内プール内を掛けまわっているうちに、広江さんの声が響き渡る。室内アナウンスだ。
獣が入りこんだ為の待避を呼びかけてくれている。
ミュウ「まさとぉっ!」
後から声を掛けられる。
まさと「みつかったか?」
ミュウ「ごっ、ごめん。みつかんないよぉ。」
まさと「ロッカーの中って事は無いか?」
ミュウ「ううん。さっきまではあったから。どっかで落としてる。」
まさと「くそう。どうするかなぁ・・・。」
そうやって、考えをめぐらせるうちにも、でかい魔獣は造波プールを泳ぎまわっているし、小型のはその辺をうろうろしてる。
幸いだったのは、季節的にやはり利用者が少なかった為、待避に混乱も無く、ほとんどの人が逃げおおせている事だが。
ふと、目の前のイベント設備のワイヤレスマイクが目に付いた。
まさと「そうだ!」
ミュウ「なに?」
まさと「お前、こっから、四方の端まで全速ならどのくらいで行ける?」
ミュウ「え、あ・・滑りやすいから、はっきりしないけど、5、6秒かな? で、それがなに?」
まさと「ソーサルブースターって、お前の声に反応して動いて光るだろ?」
ミュウ「うん。」
まさと「さっきの広江さんみたいにこのマイクを使って声を流すんだ。変身のキーワードを。」
ミュウ「ああ!」
まさと「多分、この室内にあるなら光るはずだから、その光に向かって走れば。」
ミュウ「うん!わかった!」
まさと「よし。」
俺は、その辺においてあった、自分のポーチから、携帯を取り出して、広江さんのそれを呼び出す。
そしてこちらのアイデアを伝えた。ここにあるマイクを最大出力で室内放送に回してもらう為に。
広江『わかった。すぐに対応してもらう。切らずにそのまま待て。この状態だ。一度切ると他の者が携帯を使って掛けられなくなるかも知れん。』
まさと「はい。」
ミュウ「いけそう?」
まさと「多分。今、準備してもらってる。」
広江『・・・いいぞ。そこのマイクで行けるはずだ。』
まさと「よし。良いぞ、ミュウ! やれ!」
ミュウ「ん。・・・・・・瞬着変身っっ!!」
室内にミュウの声が大きく響き渡る。
そして。
待避してる人達のほうでどよめきが起こった。
目をやると、その中にいる、子供の手の中で光が発生していた。
そうか。拾われていたのか。おもちゃかなにかと思われて。
探しても見つからないはずだ。
その子供は光った事で、びっくりして、ブースターを手前に投げ捨てる。
まさと「ミュウ!」
ミュウ「んっ!」
ミュウはそのブースターの光に向かって走り出す。
早い。あっという間に光の傍まで辿り着いた。
ミュウ「・・・・・ミスティック・ミュウ!」
光の中へミュウが飛びこむ。
そして、ミスティックに変身した、ミュウが、現れた。
目の前の子供や、避難していた人達は、目を丸くしている。
これは、後で、広江さんに、なんか言われるかもしれないが。背に腹は変えられない。
とにかく、ソーサールブースターを見つけ出し、ミュウを変身させることは出来たんだからこっちの物だ。
まさと「よし!」
子供「あ・・・あ・・・。」
ミュウ「えっと。・・・・あー。大丈夫。悪い怪獣はあたしがやっつけるからっ!」
子供「あ・・・・・うんっ!」
ミュウ「ん!」
力こぶを作るポーズを取って、ミュウは、子供に微笑む。
その自信満面の笑みとそのヒーロー然とした立ち姿に、子供も納得したんだろう。笑みを返す。
ミュウは高く飛びあがり、一番厄介そうな大きな魔獣目掛けて飛ぶ。
まさと「ミュウ! 細かいのは俺達で何とかする! お前はデカイのをっ!」
ミュウ「うんっ! そっちはまかせた!」
ミュウはでかい魔獣目掛けて加速して行く。
俺は、くさなぎを手に、小さい魔獣を手近なところから追う。
その頃、遊園地のゲート前では。
猫を連れた男女がゲート前で、佇んでいた。
女「ここに?」
男「はい、そうみたいです。どうしましょう?」
女「うん。ペットはダメみたいだし、ここで待っていればいずれ出てくると思うから・・・。」
男「ああ、そうですねぇ・・・。」
魔獣を切り倒しながら移動するうちにシルフィーの近くまできた。
シルフィーも向こうのほうから魔獣を倒しつつ移動してきていた。
ということは残るは・・・。
まさと「シルフィー。そっちは?」
シルフィー「うん。向こうは全部やっつけたと思うよ。」
まさと「そうか。じゃぁ、ほとんど始末出来たか。あ。真悟は?」
シルフィー「大丈夫。みんなと一緒に逃げてもらったから。さっきのミュウの大きな声は・・・?」
まさと「あ、あれか。ブースターが見つけられなかったから、苦肉の策。館内放送でミュウの声を流した。で、ばっちりブースターが反応してくれたんでなんとかな。」
シルフィー「ああ。さすが、まさとさん、だね。じゃぁあれは・・・。」
まさと「ああ、ミュウだ。」
時折、ミュウの放つボンバーの爆裂音と水柱が上がっている。
しかし、いつまでたってもボンバーを放ってるって事は、苦戦してるって事じゃないか。
まさと「あ、俺、ミュウのほう手伝ってくる。シルフィーは避難してる人の方、守っててくれ。残ってる小物がいるといけないから。」
シルフィー「うん。そうだね。気をつけて。」
シルフィーと分かれてミュウがでかい魔獣と戦ってる、造波プールのほうへ。
判断は正しかった。
魔獣は魚の様に水中を移動し、ミュウはそれを必死に上空から追いかけボンバーを放つのだが、相手の早さが尋常じゃないのと、上から水中の様子を見たのでは目算を誤る事になるので、ヒットできずにいたのだ。
まさと「こりゃぁ、どうしたもんか・・・。」
ミュウ「まさと!」
ミュウは俺に気が付いて、傍までくる。
ミュウ「全然ダメ。当らない。どうしよぅ・・・。」
まさと「ああ、俺も今、どうすりゃいいか考えてるとこだ。上から、水中の物を見たんじゃ、ほんとの居る位置からずれて見えるのは・・・・。」
ミュウ「うん。知ってる。けど、相手が早いから捕らえきれなくて。」
まさと「だろうな。悠々と泳ぎまわってやがる。足がある・・・両生類タイプか。水の中から攻撃できれば何とかなるんじゃないかと思うんだが・・・。」
ミュウ「あ。」
まさと「あ、電撃系はやめとけよ。有効だが、これだけ水が飛び散ったとこでやると、伝わってえらいことになる。」
ミュウ「・・・・ああ。やる前で良かった。そういわれりゃそうだね・・・。やっぱ、水の中入らないとダメかぁ。」
まさと「それしかないだろうな。」
ミュウ「水の中入っちゃうと、動くが遅くなっちゃうから、いい様に翻弄されちゃうのよ・・・あ。」
まさと「どした?」
ミュウ「あれ。なに?」
ミュウが示す先には、壁面の絵があった。
そこには、魚やら、鯨やら、イルカやら、海的な物がいっぱい描かれていて、ミュウが指しているあたりには、人魚の絵があった。
まさと「あれは、人魚。マーメイド。だ。獣人みたいなものだな。そうだよな、ああいうのなら追いかけられる、かもだけどなぁ・・・。」
ミュウ「やれる・・・かも。格好は自由利くみたいだよ。これ。」
まさと「ほんとか!」
ミュウ「うん。やってみるっ!」
ミュウは高く舞い上がると、空中でスピン。そして、変身する時のような光を放った。
光が収まるとほんとに人魚の様に尾ひれのついた姿になったミスティック・ミュウがそこにいた。
そして、水中に飛び込んだミュウは、くるっとターンすると、矢のようなスピードで水中を進み出した。
まさと「あっ、あれならっ!」
見る見るうちにミュウは魔獣に追いつき、拳を魔獣に叩きつけた。
上がる水柱と、響く轟音。
しかし、魔獣は何事も無かった様に泳ぎつづける。障壁、バリアーか!?
ミュウはその事に気がついたのか、腕をクロスさせ、ソーサルウェイブを出したようだ。
だが、それも水中で緩和されるのか、効果が出ていない。
慌ててこっちに戻ってきたミュウは、水から上がってプールの縁に腰掛ける。
ミュウ「こっ、困った。障壁破れないよ。」
まさと「くさなぎ使うか?」
ミュウ「ううん。それも考えたけど、そんなの持って水の中進めないよ、他考えなきゃ。」
まさと「あー、なら。水の中で、メテオドライバーみたいなの出せるか?」
ミュウ「あ、グルグル? うん。出来ると思う。」
まさと「それに、ソーサルウェイブを合わせられりゃ、何とかなる気がするが。出来ないか?」
ミュウ「ど、同時に? うーん・・・・。」
ミュウは、考えこんでしまう。一緒に2種の効果は望めないか。
となると、くさなぎで障壁を切るしかない。
まさと「よし。危険だけど、俺が、アイツが傍を通った時にくさなぎで障壁を切る。」
思いきって、水の中へ入ろうと前へ進んだが。
ミュウに制止された。
ミュウ「だめ! アイツ、半端じゃなく早いよ。障壁を切れても次の瞬間にやられる。一度にどうにかしないと。」
まさと「けど、他に、方法無いだろうがよ・・・・。」
ミュウ「だめだよ。そんなのは。そんなやばい橋渡らないでよ。・・・・合わせ技。何とかやってみる。」
まさと「あ、おいっ!」
そう言って、ミュウはまた水の中へ飛びこんでしまった。そして、ミュウは回転しながら水中を進み始めた。
やれるのか、ドライバーとウェイブの合わせ技。
魔獣に近づく頃には回転も相当数に上がり、ミュウが通過した後の水面にはうねりが起き、魔獣に激突する寸前から強い光のしずくを回転に任せて四散させていた。
半分以上まわりの水も跳ね上げられ、完全に水中では聞こえなかったミュウの叫び声が聞こえてきた。
ミュウ「スプラッシュッ・ドライブゥァーーーーーーーーーッ!!」
激突と同時に甲高い金きり音と爆発。轟音。そして、魔獣の断末魔の叫び声。
まさと「やったか!?」
爆炎を飛び越えてミュウが上空へ飛び出し、弧を描きながら上空を舞う。
爆炎がおさまると、魔獣は泡となって水に溶けていった。
魔獣を倒した事を確認する頃、ミュウは再び着水し、俺が居るほうへ戻ってきた。
ミュウは、水から上がってきて、また、縁に腰掛ける。
俺は慌ててミュウの傍に駆けつけた。
まさと「やったじゃな・・・うっ。」
いきなり、キスされる。
そして、ミュウはそれが終わると強く抱きついてきた。
ミュウ「なんとか、やれたよ。」
まさと「あ、ああ・・・。」
ミュウ「さすがに・・・ちょっと疲れた。もうちょっとだけ・・・。」
まさと「そうか、ああ、そのままもたれてろ。」
ミュウ「うん。」
しばらく、そのままミュウを支える。
しばらくすると、さっきの爆音と断末魔を聞いて、事態の収拾を感じたのか、広江さん、シルフィー、真悟がこっちにやってきた。
真悟「・・・・なっ。人魚?」
シルフィー「わぁ。そんなのなれるんだぁ。」
ミュウ「へへっ。尾びれ〜。ぴちぴち。」
ミュウは水際で尾びれの形になっている足先を水面でパタパタさせる。
広江「・・・・・言いたい事は色々あるが。まぁ、ご苦労・・さま・・・。」
まさと「あ、すんません。強引な収拾のつけ方で。その、色々と。」
広江「いいさ。今回も、死者は出ていない。上出来だよ。しかし、ここは、しばらくお休みだな・・・・。」
まさと「ああ、そうですね、結構、爆発跡とか色々残ってるし。」
広江「オーナーには私から話しておくから、大事にはならないだろう。」
まさと「そう・・・ですか。なら良いんすけど。」
結局、温水プールはそこで本日の営業終了という事になった。
俺達も現場検証に付き合って、それから遊園地を離れる事にした。
散発的な電磁波ももう発生しなくなったらしいし。
ゲートを出ると見知った顔が待っていた。
まさと「あ・・・・ポチ?」
ポチ「ああ、なにか、あったんですか?」
まさと「あぁ、ちょっとな。例のやつ・・・あ、清美、ちゃん。」
真悟「うぁ。」
そう、真悟の彼女、清美さんが人間に化けたポチと連れ立ってゲート前まできていたのだ。
バツの悪そうな真悟。
ここにきて、真悟がうちを訪ねてきた訳がはっきりした。
真悟は、清美ちゃんが抱いている猫を飼う飼わないで、喧嘩して出てきたらしいのだ。
清美ちゃんが猫をかわいがりすぎるので、真悟がどうもやきもちを焼いたらしい雰囲気。
まさと「しーんーごー・・・・・・・・。」
真悟「・・・・・・すまん。」
清美「ごめんね。まさと君。また、迷惑掛けちゃったみたいで。」
猫「ぅにゃ?」
まさと「猫と同レベルで争ってどうすんだよぉ。ん?」
清美さんが抱いている猫。
黄色っぽくて、おでこが茶色っぽく、肩口などに、丸い模様が・・・・・もしかしてこいつ。
まさと「タマ・・・か?」
猫「ふにゃっぁぁ!」
俺がタマと言ったとき、その猫は清美さんの腕の中を飛び出して、俺に飛びついてきた。
猫「ふにゃーー。ふにゃーー。」
まさと「・・・・そうか。そうかっ! タマなんだな!」
清美「え? まさと君の猫だったの?」
まさと「いや、俺のって言うか。まぁ、知り合いってやつなんだけど。あ、ポチ。やっぱタマだよな。」
ポチ「はい、タマです。今、猫から戻れなくなってる様ですが。」
清美「あー。ポチ君みたいに変われるの? タマも。」
まさと「ぐわ。すでにばれてるのかっ。・・・・ポチぃ。」
ポチ「いや、病むに病まれず。」
清美「いいのいいの。ポチ君かっこいいからぁ。」
真悟「き、きよ・・・・。ああ。」
まさと「おいおい。今度はポチにやきもちかぁ?」
清美「でも、まさと君。今、大変みたいね。その、ポチ君から色々聞いた。」
まさと「え、ああ。まぁね。さっきもちょっとあったし。」
そこで、広江さんの携帯が鳴る。
ポチ「あ。来ますっ!」
広江さんが携帯を取るよりも、ポチに言われて身構えるよりも早く、一瞬で、それは現れた。
魔獣。
今までのそれの中でより巨大な、2本足で立ち、背丈は10mはあるんじゃないかという巨大な魔獣が。
清美「きゃぁぁぁぁっ!」
まさと「くそっ。今日はダブルヘッダーかよっ!」
ミュウ「そんなっ。こっちはまだ使えないよっ。」
ミュウのソーサルブースターはまだ不活性時間を経過しきってない、あと、1時間は使えないはずだ。
ここは、俺と、ポチ、シルフィーで、何とかするしかない。
まさと「ポ、ポチっ! 戻っていい。ここは俺達で、何とかするぞ!」
ポチ「はいっ! ・・・・ゥオオオオォォーーーーーーン!」
まさと「くさなぎ! みかがみの盾!」
俺はくさなぎとみかがみの盾を呼び出し、ポチはワーウルフに戻って、魔獣に挑みかかる。
魔獣はこれまでで一番強く、障壁は破る事が出来たものの、その体表は硬い鎧で覆われていて、くさなぎで斬っても、かすり傷がつく程度。
ポチの牙も衝撃波もほとんど牽制程度にしかならず、唯一有効そうだったシルフィーの魔法も、致命的なダメージを与える事が出来ず苦戦する事になった。
清美「ポチ君・・・まさと君・・・。」
真悟「なんなんだよ・・・これ・・・。まー坊・・・。」
ミュウ「まさとぉっ!」
まさと「くそっ! ダブルヘッダーじゃなくて、さっきのが前哨戦だったってかぁ!」
広江さんが、銃で援護してくれるものの、これもさほど効いていない。
広江さんが持っている銃は、通常警察官が携行している物と違い、大口径の破壊力の大きいやつだ。
その銃弾でさえ、鎧を貫通する事は無かった。
広江「この50mmでもだめだというの!?」
やがて、さっきの戦闘で魔法を使いすぎていた、シルフィーがよろけ、魔獣がその隙を狙う。
魔獣の爪がシルフィーを狙う。
盾を突き出し、俺は、シルフィーをかばうべく駆け出す。
シルフィー「あっ。」
まさと「シルフィーーーーーーーっ!」
間に合わないと思った時。
銀色の物体が魔獣とシルフィーの間をさえぎって飛んだ。
ポチか? いや、ポチはまだ俺の傍で衝撃波を魔獣目掛けて放ちつづけている。
それじゃ、今のは!?
???「そこまでよ。それ以上私の大事な人達を傷つける事は許さない。」
声のする方向を見ると、夕日の中に誰かがいた。
小高いところで、膝まづき、今、魔獣との間をさえぎった銀色のなにかを掴み、ゆっくりと立ちあがる・・・・。
???「愛の守護者、ミスティック・・・・マリン。ここに参上!」
マリンさん!? ミスティック・マリン!?
立ちあがったミスティック・マリンは確かにマリンさんだった。
が・・・・赤い髪をしていた。そして、その姿は・・・・。
マリン「まさとさん。お・ま・た・せ。」
まさと「バ、バニー・・・・・?」
猫「にゃぁぁぁ!」
ミスティック・マリンはバニールックだった。ピンク色の。
だが、その容姿と裏腹にミスティック・マリンは強かった。
ミスティック・ミュウと同等か、それ以上に。
軽々と宙を駆け、魔獣の爪を軽やかな跳躍で難なくかわし、さっきの銀色の円盤、ミスティック・ソーサーが魔獣を刻む。
そして、大きく跳躍し、マリンは最後の一撃を放つ体制に入った。
マリン「ミスティィック・グラビトン・・・・・ハンマァーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
手にしていた円盤が形を変え、大きなハンマーになり、衝撃波を伴って、魔獣を押しつぶす。
魔獣は堪らず光の粒になってはじけて消えた・・・。
マリン「・・・・・・・フィニッシュ。」
倒した。
瞬く間の連続攻撃で、マリンは今までで最強の魔獣を容易く葬った。
ミュウ「ねぇ・・・・さん・・・。」
マリン「無事で・・よかった・・・。」
変身を解くと、マリンはもとの黒い髪に戻っていた。
マリン「ようやく、会えたわね・・・。まさとさん。シルフィー。ポチ・・タマ・・・・。それに、ミュウ。」
マリンさんは、やさしく微笑み掛けて来る。
ミュウは込み上げてくる物を押さえきれず、マリン、自分の姉にしがみついていた。
ミュウ「ねっ・・・・・ねぇぇさぁぁーーーーーーーんっ!」
マリン「あ、あら。ど、どうしたの、ミュウ。」
ミュウ「だ、だって・・・だって!」
俺は、こっちに戻ってからの事をマリンに話す。
マリン「そう。それで、サイファーの動きが早くなったのかもね。」
まさと「え? なにが起こったんですか?」
マリン「あなた達がアルヘルドに戻ってすぐ、ダイアの第二襲があったの、村に。」
ミュウ「ええ! 村が!?」
まさと「あ。そう言えば、城にはダイアがいなかった・・・。」
マリン「村にあなた達がいないのは計算外みたいだったけどね。結局、エルブンも焼け落ちて、皆はノスパーサの結界の中へ待避する事になってしまって。あ、もちろん、みんな無事よ。」
まさと「ごめん。結局、俺、城へ行っても、なにも・・・。ファルネも居なくなっちまったし・・・。」
マリン「!」
マリンさんは俺を包み込む様に抱きしめてきた。
マリン「ううん。そうじゃないわ。シルフィーも無事助け出せたんでしょ・・。ファルネもきっと・・消えただけ・・・だと思うから。礼を言わせて欲しいぐらい。だから、自分を傷つけない。ねっ。」
まさと「マリン・・・さん・・・・。」
マリン「・・・・・・・・・・・お義姉さんでしょ?」
まさと「やっぱり、それですか。・・・・・あ、そうだ。マリンお義姉さん。タマなんだけど、猫から戻れなくなってるみたいなんだ。」
マリン「え? ほんと?・・・・うーん。自己防衛の暗示かしら?」
まさと「なんすかそれ。」
マリン「うん。知らない環境に来たから、猫のまま、状況をやり過ごす暗示を自分に掛けちゃったんじゃないかしら? なら、もう、戻れるはず・・・。知った人に会ったからね。」
猫「にゃっ!」
タマの周りが一瞬ざわめき立ち。そして、タマはワーキャットの姿に。
タマ「も、戻れたにゃっ! 戻れたにゃぁっ!」
まさと「ああ。にゃぁにゃぁ言葉も懐かしい。」
清美「わぁ。」
真悟「うわっ。」
マリン「ほら。良かったね。タニア。」
タマ「にゃっ!」
マリン「で、話しの続き。その後なんだけど・・・。ダイアが引き払った後、サイファーの城が消えたのよ。転移したらしいの。」
まさと「え。あの、城が!? どこに!?」
マリン「気が付いてるでしょ? こっちの世界。いえ、地球に、よ。既にどこかに城を隠しているはず。」
まさと「ええ!? サイファーがもうこっちに・・・あ、それでか。ダイアがこっちでなにかしてた様子なのは。でも、何の為に。」
マリン「そこまでは分からないわ。けど、しばらく待てばパール達もこっちへ着くから、そしたらもっと詳しい事がわかるかも。」
まさと「パールが! どうやってこっちに?」
マリン「ええ。向かってるの。パールの作った大型移送艇ホエールで。空の上を渡って。」
まさと「空の・・・宇宙!? ホエールって船で宇宙をこっちに向かってるって事か!?」
マリン「そう。だから、もうしばらくの辛抱よ。沢山援軍がくるから。」
まさと「じゃぁ、人の姿をしたマーガレットは・・・。」
マリン「あ、あれは、マーガレットの強化版らしいわ。転送装置のテストで、魔獣と鉢合わせしたみたいね。お陰で、あなた達がこっちにいることがはっきりしたけど。私も、マーガレットに続いて転送自体のテストとかと、いろいろ先にやることがあって、転送してもらったの。美味いタイミングでほんと良かったわ。」
まさと「そう・・・だったのか・・・。いや、正直、気が楽になったよ。」
ミュウ「うん。気が楽になった・・・。なったら、お腹すいちゃったぁ・・・。」
まさと「とことん食い気なやつ・・・。」
ミュウ「なによぉ。」
マリン「またちょっと仲良くなったみたいね。ふふっ。・・・・・・で、まだ、キスだけなの? その先は?」
ミュウ「あ、あぅ。」
まさと「よ、読まないでくれ。そういうのはっ。」
いやほんと。マリンさんには隠し事できないね。
良き理解者ではあるから、助かる事のほうが多いけど。
清美「ほんと。まさと君、色々大変なのね・・・。あ、もっと話しも聞きたいし、みんなで食事に行かない?」
まさと「ああ、そうだなぁ。どこかで腰を落ち着けたい。」
広江「あー、そういうことなら、すぐそこに知り合いのレストランがあるが。」
まさと「そうなんすか。じゃ、そこ行きましょうか。」
広江「あ、ああ、そっ、そうだな・・・・。」
まさと「あ、でも、タマどうしよう。人に化けたとしても服が。」
マリン「ああ、それなら、私が替えを持ってるから何とかなるわよ。」
まさと「おし。じゃ、皆で、行こう!」
広江さんが携帯でそのレストランの特別予約席を押さえてくれた。
そのレストランは遊園地のすぐ傍、同じ大河グループの経営する高級ホテルのレストランだった。
まさと「うわぁ。高そうぅ・・・・。」
広江「心配するな。私がおごるから。今日の疲れを美味しい物で癒してくれ。」
まさと「あ、でも、マナーとかは良く・・・。」
広江「その為に、特別予約席を押さえたんだ。他の席とは完全に隔離された個室だ。好きに食べて良いし、くつろげるぞ。」
まさと「なおさら高そうですねぇ。良いんですか?」
広江「ああ。」
ミュウ「ああ・・・ああ・・・こんなところで・・・食事・・・・あぁ。」
ミュウはもう既に心ここに無いようだ。目が光り輝いている。
レストランに着くと、早速予約席に通された。
隔離されているという言葉通り、重々しい扉で隔てられており、外の喧騒など微塵も聞こえない。
VIP用とか、そういった、特殊な予約席の様だ。
ほんと、こんな高そうなとこで良いんだろうか。
まぁ、確かに、話しの特殊性もあるから、こういったとこのほうが気がね無くやれそうではあるけれど。
シェフ「シェフの大河です。本日はようこそおいで下さいました。」
まさと「あ、どうも。」
シェフ「小染様のお知り合いの方たちばかりとお聞き致しました。満足の行く心のこもったお食事をしていただきたく思っております。ご要望がありましたらお気軽にお呼び下さいませ。」
挨拶を終えるとシェフは一礼して準備の為厨房に戻る。
まさと「広江さん。ほんと、顔広いですねぇ。」
広江「い、いや、そうでもない。ここは縁があっただけだ。」
まさと「あ、大河って言ってたか。そうか、大河グループの繋がりかぁ。」
広江「まぁ、そんなところだ。」
しばらくして、給仕がオーダーを聞きに来た。
ミュウ達はさすがにここのメニューが読めず、目を回している様子。
広江「あ。シェフにお任せします。気軽に食べられる物をと伝えて下さい。」
給仕「かしこまりました。」
料理は気軽に食べられるの言葉通り、かしこまった物でもなく、良く見知った食材を使って、なおかつ貧相に見えない盛り付けをされた物ばかりが次々と運ばれてきた。
しかも、どれも驚くほど美味い。
ミュウなんてもう凄い幸せそうな顔で料理に奇声を上げている。
ミュウ「お、美味しい。ほんとに・・・・と、とろけるっ。とろけるぅ。」
まさと「ああ、顔がとろけてるぞ・・・。」
ミュウ「そ、そう?」
まさと「けど、ほんとに美味いな。こういうとこのは高いだけで、形式ばかりかと思ってたとこがあったけど。ほんとに・・・。」
料理に舌鼓を打ちながら、馬鹿話や、経緯の話など、本当に話しが弾んだ。
まさと「ああ、そういや、さっきマリンさん、髪の毛赤かったけど・・・。」
マリン「あれ? そうよ。私の髪の色はほんとは赤よ。染めてるの、これ。」
まさと「へー、そうだったんだ。なるほど、いわれてみれば双子なんだし、変じゃぁ無いよな。」
マリン「赤いほうがいい?」
まさと「あー、いやー、赤いのも黒いのも、いいなぁとか、言ってみたりして。」
マリン「最初は身の上を隠すのに染める習慣をクレーデルの家で教えられたんだけどね、最近は気にいって染めてたりするのよね。今は、もう隠す必要無くなっちゃったから、染めなくても良いんだけど。」
まさと「あ、じゃぁ、変身する時だけ元に戻ったりするんだ。面白いなぁ、ソーサルブースターって。」
マリン「そうね。パールの話しだと、使う者の意思次第で色々変わるらしいわよ。形だけじゃなくて、能力も、強さも、ね。」
ミュウ「あー、うん。そんな感じはあるね。今日なんか、ほんとにまさとに助けてもらったし。」
まさと「え? 俺、なんかしたか?」
ミュウ「ああ、気付いてない気付いてない。」
シルフィー「うん。ないない。」
まさと「えー・・・・?」
マリン「・・・・だから、いいのかな? ね?」
ミュウ「あ、ひゃ、はははっ。・・・う・・・・・うん。そうかも、ね。」
まさと「な、なんなんだよ〜。」
マリン「ほんと、おもしろいわ。うふふっ。」
なんだか、出汁にされてる気がするんだが、ま、盛りあがってるから良いか。
久しぶりにマリンさんやタマとも再会出来たし、先の希望も見えてきたことだしな。
で、そうしているうちにそろそろ料理も終りらしい。デザートが運ばれてきた。
ただ、そのデザートが気になった。
ハート型に盛りつけられたアイスクリーム。
それを、またハート型に切り取られたキウィが取り囲んでいる。
まさと「んー、なんだろね。これは。」
広江「こ・・・・これ・・・・・は・・・・。そう・・・。」
広江さんはそのアイスクリームをしげしげと見つめ、これまで以上に味わうような様子で、食べている。
別段、形だけで、味その物は変わり映えしない物だったのだが。
全てを食べ終わると、またシェフがやってきた。
シェフ「ご満足頂けましたでしょうか?」
まさと「あ、すごく美味しかったですよ。」
ミュウ「うん、また食べに来たいぐらい。」
うわ。またって。さすがにここの払いを持つのは怖いぞ。
広江「最後のデザート。私が最初に来た時の物ですね。本気ですか?」
シェフ「ええ。そう受け取って下さい。」
広江「・・・・・・そう、ですか・・・・。じゃぁ、そうします。正人さん。」
え? 正人? なに!? じゃ、このシェフの大河さんが広江さんの元フィアンセ!?
そういう繋がりだったのか、ここ!
シェフ「私はあなたの一部しか見ていませんでした。そう思います。」
広江「私も・・・今まで、自分を上手く出せませんでしたから。」
なんだ? 一体、今なにが起こってる?
広江「でも、あのアイスクリームは直球ね。相変わらず。」
シェフ「ええ。あのほうが私らしいんじゃないかと。」
広江「あなたをアイス(愛す)。ふふっ。でも、私はあなたの思うようには・・・。」
シェフ「かまいませんよ。あなたのままで居て下さい。今は、本当のあなたが見えるようになりましたから。」
広江「・・・・はい。そういうことなら、喜んでお受けします。」
なにぃぃぃ!? 愛す!? お受けする!?んじゃ、これって、元の鞘に納まるとか、そういうことか?
まさと「あの・・・。」
広江「あ、ごめんなさい。紹介するわ。私のフィアンセの大河正人さんです。大河グループ総帥の三男のかたです。」
まさと「やっぱり。」
広江「最初にね。私がここに来たのは、この正人さんとのお見合いの席だった。この部屋で。そのときに出たデザートがさっきのアイスクリームと同じ物だった。そういう話し。」
まさと「あの。じゃぁ、同じ物が出たってことは・・・。」
広江「そう。君のおかげでね。」
まさと「俺? へ?」
広江「君が私を変えてくれたから、もう一度、お付き合い出来るようになった。そういうこと。」
まさと「おおお。そうなんですか!・・・俺、何かしたっけ?」
ミュウ「あー、また、気付いてない気付いてない。」
シルフィー「うんうん。ないない。」
清美「ああ、おめでとうございます。お幸せに。」
マリン「いい話ね。」
まさと「お、俺は、気付かずに人の人生を左右してるのか・・・・。」
シェフ「いや、そういうものですよ。いろんな物が影響しあってうまく動いてるんです。料理でも同じ、なんですけれどね。」
広江「だから、味のハーモニーなどと言う、でしたっけ。」
シェフ「ええ。」
まさと「はぁ、上手い事言ったもんだな。とにかくもおめでとうございます広江さん。」
広江「ありがとう。本当にね。」
いや、なんか、いっぺんに色々解決した気がする、真悟達の事、広江さんたちのこと、そしてこれからの事。
新たな問題も出てきていたりはするけど、今生まれた希望に比べれば小さい、かも。
シェフ「今日は、私からの心づくしと言う事にさせて頂いてよろしいですか?」
広江「あ、でも、それは。」
シェフ「そのかわり、後でお時間を少し私の為に裂いて下さい。」
広江「え。それはつまり。」
まさと「じゃぁ、広江さん。俺達は先に戻りますんで〜。」
広江「あ、ちょ、ちょっと待て。待ってくれ。」
とっとと移動をはじめた皆の中から俺だけ呼び戻されると言うか、引き戻された。
まさと「どうしたんすか?」
広江「いや、参考の為に聞かせて欲しい。もし、そういう風になったら、私は・・・。」
まさと「どういう風にですか。」
広江「だ、だからだ。その、経験に浅いのだ。そういうのは。」
まさと「えっと。ああ、そういうことか。まだ、向こうとは何もなかったの?」
広江「無い。それで、君ならいくらか知ってそうだと。」
まさと「広江さぁん。なんで俺なんですか。・・・・まぁいいや。俺も経験は浅いです。」
広江「・・・・そうかぁ。ああ。動揺してきた。」
まさと「良いんじゃないですか。今ので。」
広江「何がだ?」
まさと「今、広江さん、素、でしょ?」
広江「・・・・あ。」
まさと「だから、素で、良いんじゃない? 大河さんならそれで理解してくれそうな気がする。前は知らないけど、今はそういう感じするよ。」
広江「・・・・・そうだな。ありがとう、気が少し楽になった。」
まさと「ですよ。大河さんに甘えちゃえば良いんです。男はそういうのに弱いから。ははっ。」
広江「そ、そうか。」
まさと「あとはそうだなぁ。難しいだろうけど、公僕だとかそういうのは忘れて、流れに乗っちゃえばってところかなぁ?」
広江「うむ。うむ。そうか、そうだな。」
まさと「んじゃ、俺、そろそろ行きます。」
広江「ああ、あ、今夜は・・・。」
まさと「あー、帰ったら鍵掛けて寝ちゃいますから〜。俺。・・・・ね。」
広江「ば・・・・馬鹿・・・・・。」
広江さんは真っ赤になっている。
いや、なんだかんだいってかわいい人だ。
いや、ほんと、お幸せに。
俺は、警視庁にスクーターを駐めてあるので、皆とは別行動。
皆には先にアパートに戻ってもらった。
俺がスクーターでアパートに戻ると、皆で、なんかもう盛りあがっていた。
ミュウ「あ、おっかえりー。」
シルフィー「おかえりなのらー。・・・・うっぷ。」
まさと「誰だよ。シルフィーに酒飲ましたの・・・・・・。」
真悟「俺〜。」
やれやれ。今夜は夜通しパーティーか?
まぁ、そういうのも良い。
今夜は本当にめでたい気分だしな。