第4話 遠き異国の地にて #7 遊園地で行こう

UPB特捜部が発足した翌日。
早くからインターホンと勢い良くドアを叩く音で起こされた。

???「まー坊! 起きてるんだろぉ。まー坊!」
ミュウ「んー、なに?」
???「はい!? まっ、間違え・・・てないよなぁ。うん。」


ドアの中から現れたミュウと、表札を見比べて納得する男。
この男の名は、秋津真悟(あきつしんご)。
俺の幼なじみで、俺が、東京に出るきっかけを作った男だ。

真悟「そうか。まー坊もとうとう・・・同棲かぁ。やるなぁ。」
まさと「何を人ん家の玄関先で、人聞きの悪いことを。」
真悟「よぉ。久しぶり。ちょっと出ない?」
まさと「・・・・・出ない。これから別の用がある。」
真悟「うぐぅ。ダチのことなんかどうでもいいんか。」
まさと「あほかっ。男はどうでも良いんだ。と、まぁ、とりあえず上がれ。このまま、ここで騒がしくしてるのもなんだ。」
真悟「ああ。すまん。」

中に入って真悟はさらに奇声を上げることになる。
いや、そりゃそうだ。
部屋の中は布団がびしっと敷き詰められて、女3人にこやかに座ってるんだから。

真悟「な、なっなっなっなっなっなっなっなっなっなっ!?」
まさと「なんだよ。」
真悟「ま、まーっまーっまーっまーっまーっまーっまーっ!!」
まさと「落ち着けっ。」

この後、真悟が落ち着くのに10分以上は掛かったか。

真悟「どうして、まー坊んちに、女が3人も居るんだよっ。」
まさと「ようやく日本語になったな。」
真悟「うるさい。それくらいおおごとだ。なんで、こうなってんだよ。聞かせろよぉ。」
まさと「かくかくしかじか・・・と言うわけだ。」
真悟「なるほど。よくわか・・・・・るわけ無いだろう。ほんとにかくかくしかじかって言うか? 普通。」
まさと「そろそろ説明するのが面倒になってきた。察してくれ。」
真悟「出来ねぇって。」

広江さんは目をつむって、人差し指をずっと眉間に当てたままだ。
こりゃ、真悟を良くは思ってないな。
全部は話さず簡単に説明しとくか。

まさと「えっとな。ちょっと旅先で、訳有りのこの二人と会ってな。それから一緒に動いてる。で、こっちは、その手助けをしてくれてる人ってことだ。説明終わり。」
真悟「え、偉く簡単だが、まぁ、そんなところからか。俺、まー坊の古いダチの真悟です。」
ミュウ「ミュウです。」
シルフィー「シルフィーだよぉ。」
広江「小染広江、です。」
まさと「んで、こっちのが、ポチ。」
ポチ「わふっ。」
真悟「犬はいいってば・・・・。」

自己紹介が終わったとこで、今度はこっちが聞く番。

まさと「それより。どうしたんだ。こんな朝早くから。おん出されたか?」
真悟「うっ。」
まさと「図星か。おい。今度はなんだよ。」
真悟「猫・・・いや、俺のこと理解してくんなくてさ。頭、冷やしてもらおうと思って、出てきた。」
まさと「嘘っぽいぞ。清美ちゃん。理解に深いはずだが。」
真悟「ううううう・・・・。」

清美ちゃんとは、この真悟の彼女で、この大都会で将来を夢見て同居中の、あつあつ面倒振りまきカップルのことだ。
この二人は親の反対を押しきって、駆け落ち同然に上京してきた、そのカムフラージュを買って出たのが、俺。
つまり、俺と、真悟が、東京で頑張るってんで、ダチ同士で上京したことになっているのだ。
清美ちゃんのほうは清美ちゃんのほうで、そういう同じ経緯の女友達がこっちにいる。
ああ、青春まっしぐら。

まさと「まぁ、いいさ。今更同居人が一人くらい増えても。タダし。邪な気配を感じたら追い出すからな。」
真悟「そんな。独り締めするなよぉ。」
まさと「・・・・・・・いきなりか。こら。そういうこといってると逮捕されるぞ。」
真悟「へ・・・・なにを?」

<チャリ>

広江さんが黙って手錠をかざす。

真悟「・・・・・・・・・うそっ。婦警さんかなんか?」
広江「一応、警部、です。」
真悟「まー坊。・・・・・・・・・・・・・・なに悪い事したんだ?」
まさと「なんで、発想がそっちしか行かんのだっ。」
ミュウ「ぷはははははっ。」
まさと「お前も笑ってんじゃないっ。」
広江「・・・・・・ふっ。」
まさと「ああ・・・・広江さんにまで。」


朝から珍客襲来で散々である。
この日は、本庁に行って、色々話しを聞いたりしなきゃいけないんだが、どうしたものか。

広江「まぁ、いいだろう。今日は、本庁で大事な話しがある。彼のやっていることに関して。口外しないという条件でなら、同行してもらっても構わないが。しばらくこの部屋に居るのなら、話さないわけにもいかないだろうし。」
真悟「本庁・・。このカッコでもいいんすか?」
広江「ああ、構わない。」
まさと「俺だって着の身着のままだぞ。」
真悟「じゃぁ、一緒に行きます。・・・は、いいんだけど。まー坊、そろそろ大学顔出さないとやばいゼ。」
まさと「うおぉっと。そうだった、なんだかんだで覗きに行けてねぇぞ。」
真悟「覗くだけかよ。いや、まぁそれはいいや。あのな、特別講義の受講申請、今日の午前中いっぱいだって聞いたぞ。」
まさと「おい。なんだよそりゃぁ。聞いてないぞぉ。」
真悟「ああ、だろうなぁ。まー坊が来てない間に、特別に必須単位が増えたんだ。急に。」
まさと「冗談だろ。」
真悟「そういってやりたいのは山々だがな。ほんとだ。」
まさと「ぐわぁ。あ、あの、広江さん、時間・・・ありますかねぇ?」
広江「んー。そうだな。1時間ぐらいならずれても大丈夫だろう。理由が理由だ。行ってこい。」
まさと「うへー。すんません、すぐ戻りますから〜。」


大慌てで、用意をして、俺は部屋を飛び出した。
俺の通ってる大学は工業系の名の余り通ってない小さな大学だ。
バイクをすっ飛ばして20分くらいのところにある。
で、そこに向かうべく、スクーターにまたがるわけだが。
バッテリーが死んでおります。うんともすんとも言いません。

まさと「くそぉ。そりゃそうかぁ、三週間も放置してたからなぁ。」

仕方なく、キック始動で掛けるのだが、これがなかなか。
キャブのガソリンが腐れているのか、なかなか始動しない。
ようやく掛かった時には30回はキックした後だった。
どうにかこうにか混雑をすりぬけて、大学に到着すると、学生課に突入。
要項に目を通して、即座に決定、そして提出。
本当にその講義を受けられるかどうかは、今の状況からすると判断つかないが、とりあえず、皮一枚で首は繋がった。
皆を待たせてるので、大慌てで帰路につく。
俺の乗ってるスクーターは、水冷80ccの小型二輪になる。
50ccでなくて良かったと、この時ばかりはほんとに思った。
50ccなら、1時間でとんぼ返りなど、無理だったろう。
いや、間に合ったかも知れないが、家計が真っ赤に燃えたに違いない。反則金で。
まぁ、そんな、バカな事を考えつつ信号待ちをしていると、すぐ横の路地に誰か居るのが目に付いた。

まさと「ん? ・・・あれ?」

その誰か、いや、女の子だ。その女の子は、見覚えがあった。
緑とオレンジの服と、白パンツ。茶の髪に、とがった耳。
・・・・まさか。
ダイア? か? 魔導三人衆のダイアか?
俺は、信号が変わるのも構わず、様子を見る事にした。
ダイアらしいのは、路地の片隅に置かれた木箱の上に腰掛け、なにやら熱心に手に持った物を口にあてがって・・いや、舐めとって居るようだ。
さらに・・・その手にした物は、ずっと細長く伸びていて、彼女のお尻のほうへ続いていた。
もしや、しっぽか?そうだ。ダイアは魔族だと聞いた。
なら、人にはない物が生えていたっておかしくは無い。
しかし、ダイアは一体ここで何をしているのか。
いや、ここにいる事自体が、何かに繋がってる。
それは間違いない。
俺は、気付かれない様に、出来るだけ静かに、スクーターを駐め、ヘルメットを取って、ダイアらしいのに向き直る。
が、ここで、運命のいたずら。
すぐ後に居た車が、俺が、走り出しもせず、駐輪した事で、腹を立てたのか、クラクションを鳴らし、回避しながら、フルアクセルでスタートダッシュして行った。
ダイアらしいのもこの騒音には気がつきこっちを向いてしまった。
案の定、俺とご対面。

ダイア?「・・・・・あ?」
まさと「・・・・だ。ダイア・・・・。」
ダイア?「うー?」

なにやら、さっきまでの行為に陶酔していたのか、ダイアらしいのは、ボーっとしていた。
が、すぐはっとなる。
なにが起こっているのかに気がついたんだろう。
気がついては欲しくなかったが。

ダイア「・・・はっ。やばっ!」

ダイアらしい、いや、この行動、間違いない。あのダイアだ。
ダイアは、俺に気がつくと、慌てて木箱から飛び降り、奥へ走って逃げようとした。
これは追うしかない。
追って、何をしていたのか、何をやろうとしてるのか、なんでもいい、手がかりを掴まなければ。
どうしたものか、長年会えなかった恋人に会えた気分。そう言うものを味わった気分だ。
俺は、とにもかくにも植え込みを飛び越えて、逃げるダイアを追った。

まさと「ダイアっ!」
ダイア「ちっ。やっぱアイツか。」


そんな、ダイアの舌打ちが聞こえる。
ダイアは、思ったより動作が鈍く、スタートが遅れた俺でも、路地を半分行ったとこでどうにか追いつく事が出来た。
そして、一番近くの、手元に近づいた、彼女のしっぽを掴んだ。力いっぱい。

まさと「待てよっ! コラッ!」
ダイア「ぅあっひっ!」

ダイアは俺が、しっぽを掴んだ瞬間、全身をびくっとさせてよろめき、前のめりにそのまま倒れてしまった。

ダイア「ぅぅ・・・・ああ・・ぁ。」
まさと「あれ?」

俺は、なにが起こったのかわからず、尻尾を握ったままだ。力強く。

ダイア「・・・・ぐっ!」
まさと「わっ。」

突然、跳ね起きたダイアが俺の手を払う。
俺は、慌てて手を離し、身を引いた反動で退いてしまった。
その隙をついて、ダイアは・・・・・・。

まさと「なに!?」

ダイアは、背中から、羽根のような物を出して、急速に上昇、一瞬で点になってしまった。
そして、じわっと、目の前から掻き消えた。

まさと「ちっくしょう。手を離すんじゃなかった。」

確かに、今のはダイアだった。
他に、こんな真似が出来る者は知らない。空を飛んで逃げるなど。
しかし、前に見たダイアとは、どこか微妙に違っていた。
角が増えていたような気がするし、まして、しっぽや、羽根などは、以前は見た覚えがない。
羽根を急に生やしたところを見ると、自由に変化できる物なのか。
なんにしても、なにも聞く事が出来ず、取り逃がしたのが悔やまれる。
タイムロスをしたので、携帯で、シルフィーに連絡をとる。
このままでは少し遅れそうだ。

まさと「・・・・って訳で、取り逃がしちまったんだけど。どう思う?」
シルフィー『・・・うーん。ダイアかなぁ。魔族はしっぽとか羽根とか、出せるはずだよぉ。』
まさと「そうか。やっぱり、ダイアだったか。こっちに見覚えがあるような素振りだったし、間違いないな。」
シルフィー『うん、そう思う。あ、・・・・。』
ミュウ『なにやってんのよっ。』
まさと「ああ。聞いたか。」
ミュウ『なんで、そこで、手を離したの。惜しいとこで、もう・・・。』
まさと「なんだ?」
ミュウ『魔族はね、しっぽとか、敏感な感覚器なの! だから、必要の有る時以外は出さないのよ。もうちょっと、しっかり握るなり、引っ張り倒すなりすれば、捕まえられたのに。』
まさと「・・・・・・・・・・・知らんと言うのに。いや、そうか、そういうことか、急に倒れたのが分かった気がする。まぁ、とにかくだ、そう言う訳で、かなり遅れそうだ。で、だ。警視庁で落ち合わあないかって、広江さんに伝えてくれ。」
ミュウ『あー。うん。・・・・で、・・・って。うん。・・・・・・。ん。あ、それでいいって。』
まさと「ん。じゃぁそうしてくれ。俺も、これから警視庁のほうへ向かうから。」

俺は再びスクーターにまたがると、警視庁のほうへ走った。
警視庁で、皆と合流すると、UPB特捜部へ。
そこでは、警視総監と、高砂さん、そして、数名のオペレータが待ちかねていた。
こっちのメンバーは、俺に、ミュウ、シルフィー、真悟。と言ったところ。ポチは留守番だ。
ミュウとシルフィーはなんだか、めかしこんできていた。
来る途中でどこかで買って着替えたらしい。
広江さんのおごりだそうで、なんだか申し訳無かったり助かったりする。
高砂さんは、定年だったと思ったが、どうやら、俺達と同じく、顧問として、知恵袋的にサポートをしてくれているらしい。出来る時だけらしいが。
ここで、現在までに確認されている転送事件の概要を知らされた。
10数年前から、しばしば、転送と思われる事件が起こり、近年、俺がティラへ飛んだちょっと前から頻発化していたらしい。
ティラ自体の存在も、NASAのほうでは、その存在だけは確認できているらしい。
俺の持ってきた情報を伝えた時点で、ICPO経由で情報が入るようになったと言う。
ミュウ達は探査衛星からの映像を記録した写真に見入っている。

まさと「・・・そうか。やっぱり、太陽の向こうにあるんだ。あいつの言ってたことは本当だったんだなぁ。」
ミュウ「へぇ、こんな風に見えるの? ティラって。でも、こっち側に居る人は大変だねぇ。落ちそう。」
まさと「お、お約束なやつだなぁ。落ちないよ。みんな、この丸いのの中心に足を向けて立ってるんだってば。」
ミュウ「なによー。」
まさと「いや、多分こう思ってるだろうけど、空よりももっと上、宇宙では、上下とかそういう感覚は無いぞ。」
ミュウ「な、無いの? 落ち・・ない?」
まさと「近いもんは有る。地球とか、ティラとか、とんでもなく大きい物には引力って言う、引きつける力が出来て、近づくと引き寄せられる。その力で、地上では上から下に物が落ちるんだ。」
ミュウ「はぁ。わかるようなわからないような。」
まさと「実感はしづらいだろうな。まぁ、そういうもんだと思ってりゃいいさ。」

転送が起きる時、前後30分くらいの間、特定の電磁波が観測されるらしいと言うのを前に聞いた。
その観測装置がここ一ヶ月かかって、都内何箇所にも設置され、その観測に当たっているのが今日はじめて会った、オペレータ達だということだ。
昨日、広江さんは、マイテーの裏の公園に転移が起きるのを、署で電磁波発生の報告を受け、慌てて掛けつけてくれたらしい。

まさと「なるほどなぁ。場所によりけりだけど、それなら、なんとか対応できるのか。」
広江「いや、そうでもない。電磁波が観測されても、転移があるとは限らなくてな。ヤマをはる必要がある。」
まさと「そりゃ難儀な。」
オペレータ1「それでも、ここ数週間は転移が起こる確率が上がってきてますけどね。転移が起これば、より強い電磁波が発生するので、確実にわかります。」
オペレータ2「で、電磁波についてなんですが。このところ発生場所が集中し始めてます。」
広江「何?」
オペレータ2「今まで散発的だったのが、どうやら1ヶ所に向けて発生範囲が狭ばってきているんです。」
広江「どこへだ?」
オペレータ2「中心は、東京湾。です。もっとも、海上には監視装置を設置していませんので、正確に割り出せていないのですけど。」
広江「そうか、海上警察と連携して、設置を急いだほうがいいかもしれないな。」
オペレータ1「それと、ついさっき、なんですが。また、都内で散発的に電磁波が観測されています。これは、短時間の物なので、転移が起きるかどうか不確定なのですが、主に、この辺りに。」

オペレータが地図で指示した先は遊園地”東京ドリーミーランド”だった。
東京ドリーミーランドとは、最近流行りの体感系アトラクションを豊富にそろえた遊戯私設で、利用者も多い。
そんな場所に魔獣が転移したら、どんな騒動になるか。
いや、騒動にならずに、被害を拡大してしまう事もあると、広江さん達警察側の意見は一致していた。
俺も、そう思えた。
魔獣をアトラクションだと思ったら・・・。マイテー裏での事が脳裏に甦る。
逃げずに犠牲になってしまう人が出る可能性が高い。
早速、この足で、ドリーミーランドまで調査に向かう事になった。
このやり取りの間。
一緒に居た真悟がついてこれないのか、ずっと、目が点になったままだったのはいうまでもない。
移動する覆面パトの中で、ようやく真悟が口を開いた。

真悟「なんか、大変な事になってんだな。まー坊が、そういうことに関わってたなんて。」
まさと「まぁな。俺が一番意外なんだけど。それでも、ほっとけないし、俺、一応、退治に有効な手段持っちまったからなぁ。」
真悟「そうだなぁ。俺も、何か出来るといいんだけど、なにもないや。」
まさと「あ、そうだな。もし、妙なのが現れたら、どっかに隠れてるとか、回りの人を逃がすとか、そういうのでいいんじゃないか?」
広江「そうだな。真っ先に逃げてもらいたいところだが。被害を小さくする協力は欲しい。」
真悟「はい、そうします。」
まさと「自分が逃げ遅れるなよ。」
真悟「ははっ。逃げるならまかせてくれ。」
広江「まぁ、まだ転送が起きると決まったわけでもないから、それまでは適当に園内で過ごしてくれればいい。」
まさと「お。ってことは?」
広江「まぁ、遊び放題だな。何も起きなければ。」
まさと「うわはは。そりゃそうか。って、意外だな。広江さんがそういう事言うとは。今まで、そういうことは口が裂けても言いそうに無かったのに。」
広江「そうだな。宗方に会うまではそういうことは言わなかっただろうな。」
まさと「お、俺ですか?」
広江「ああ。宗方だ。」
ミュウ「ねぇ、遊ぶって、遊園地って、何?」
まさと「あ。そうか。そういうのを見た事が無いか。まぁ、遊ぶ為の施設が集まってるとこだ。行ってしばらく居たらどんなものかすぐわかるよ。」
ミュウ「へー、やっぱり、遊ぶ為のとこなんだ。へへっ。」
まさと「うれしそうだな。」
ミュウ「ま、ね。そういうところへ行けるとは思ってなかったから。ね。」
シルフィー「うん。」
まさと「まぁ、何も起きてないか確認しながら、遊んでりゃいいさ。」
広江「そういうことだ。本懐を忘れないで居ればいい。」
真悟「なぁ、まー坊、この人と、何かあったのか。」
広江「何も無いぞっ。」
まさと「・・・・・・・間髪入れずにしかも力強く否定せにゃならん事は、な、無いと思うんですが。」
広江「え、あ、そ、そうだな。」

なんだか、広江さんは照れて居るようだ。
会ってすぐにこういうのはわからなかったが、今は、わかるようになった。
俺が、そうなったのか、広江さんが変わったのかは今一つはっきりしないけど。
しばらくして、ドリーミーランドについた。
駐車場に車を入れると、入場ゲートのほうへ。
チケットを買いに行こうとして、広江さんに呼びとめられた。

広江「ここで待ってろ。」

しばらくして、なにやら、生真面目そうな人を連れて広江さんが戻ってきた。
その人は、この遊園地の警備担当の人らしい。

警備担当者「いや、どうにもそういう事があるって言うのが理解できなくてねぇ。ほんとに警察の人?」
広江「そうです。もう一度手帳をお見せしましょうか?」
警備担当者「うーん。確かに、変な物を見たって報告はあるんですよ。一応。」
広江「え?」
警備担当者「あ、いや、アトラクション中にね。用意されたのじゃないのが出たとか、操作担当とかから、そういう話しがあるんですよ。ここ1週間ほどですが。確認しに行っても、そういうのは無かったんで、錯覚かなんかかと思っていたんですが。」
まさと「ま、まずかないか・・・それ。」
広江「確かに。」
警備担当者「まずい・・ですか? それじゃ今日は早めに休園して・・・。」
広江「いや、そこまでは。私達で異常が無いか調べてみようと思うのですが、入園させてもらってかまわないですか?」
警備担当者「え、あの、この方達も、でしょうか?」
広江「ええ。全員です。彼らは、こう見えて、エキスパートなんですよ。若いので誤解されがちなのですが。」
警備担当者「こ、この人達が!? か、怪獣退治の専門家?」
広江「え、ええ、まぁ、そういうものですね。まぁ、出ると決まったわけでも有りませんので、用心だけしていてくださればいいと思います。何かあれば警備事務所まで即時連絡を入れますので。」
警備担当者「はい、では、ちょっと、オーナーと連絡して、確認を取りますので・・・・。」
広江「はい。」

警備担当者は携帯を取り出すと、オーナーらしい相手と通話をしている。
しばらくして、警備担当者は広江さんに電話を変わる様にいってきた。

広江「はい、変わりました。ええ・・・・そうです。小染広江です。ご無沙汰しております。」
まさと「は? ご無沙汰?」
広江「ええ、そうです。・・・・はい・・・はい。それはもう。はい。では、そう言う事で。」

また警備担当者に電話が戻り、すぐに通話は終わった。

警備担当者「いや、ですねぇ。大河オーナーのお知り合いならそうおっしゃって頂ければいい物を。はい、入園お願いします。」
まさと「はい?」
広江「いや、公私混同はしたくないので。」
警備担当者「そうですか。あ、もちろん無料で入園していただきますので。その、よろしくお願い致します。」
広江「はい。」

なんと、調査とはいえ、無料入園を勝ち取ってしまった。
入園してすぐに広江さんに聞いて見る。オーナーの事を。

まさと「あのー。オーナーって、知り合いの人なんですか?」
広江「いや、まぁ、な。そのうち、な。」

なんだか、話したくなさそうなので、それ以上は聞かない事にした。
それはそれとして、早速、調査の段取り決め。

広江「と言う訳で、君らは好きに回ってくれればいい、私は、地味目に調べて見るから。」
まさと「なんすか、その地味目ってのは。」
広江「ああ、普通は行きそうに無いところだ。お前達が普通に遊び倒しているところ以外をと言ったところだな。それで効率良く調べられるだろうし、そっちも楽しめるだろう。」
まさと「ああ、それは言えてる。じゃぁ、こっちは遊び倒して調査になるわけだ。」
広江「アトラクション代は自腹だがな。」
まさと「あはははは。まぁ、そのくらいは。」
真悟「あ、じゃぁ、彼女達の分、俺、半分出すぜ。」
まさと「おお、いいやつだなお前。」
真悟「知らなかったか?」
まさと「ほー。」
真悟「まぁ、そう言う訳で、ダブルデート、かな?」
まさと「にゃにぃ?」
シルフィー「デート?」

そういって、シルフィーは真悟の肘を掴む。

真悟「そうそう。俺と組んでくれるの?」
シルフィー「うん。で、ミュウとまさとさん、だね。」
ミュウ「まぁ、妥当かぁ。」
まさと「真悟。」
真悟「なんだよその目は。」
まさと「いや、後ろめたい事だけはするなよ、まじに。」
真悟「何をだよっ! 何もしねぇってば。」
まさと「っちょっとこいっ。」

俺は真悟を引っ張って、ちょっと離れる。
あの事だけはちゃんと伝えておかないと。

まさと「あのな。お前が清美ちゃんを裏切るような事をしないとは思ってるが。シルフィーにアルコールは厳禁だ。トラの罠が待っている。」
真悟「と、とら? そうなのか。」
まさと「まぁ、雰囲気が変わるだけだから、内輪だけのときはいいんだけどな。外だとさすがに。」
真悟「ああ、なるほど。わかった。健全にいく。」
まさと「まぁ、そういうことだ。」
シルフィー「ぶー。」
まさと「うわぁっ。」
真悟「あ。」

シルフィーが真悟の腕から手を離しておらずくっついてきていました。

シルフィー「ぶーぶー。」
まさと「ああ、・・・・・ごめん。」
シルフィー「まさとさんも、健全に、だよぉ。」
まさと「うわ。そうきますか。まぁ、馬鹿やって、久しぶりに何発か殴られそうな予感はするが。」
真悟「殴ら・・・・どう言う関係なんだ、一体。」
まさと「いや、まぁ、なんつーか。あっちから一方的に殴ってもいい間柄。らしい。」
真悟「・・・・・・なんだそりゃ。」
ミュウ「もう、あたしが乱暴者みたいじゃない。こっち来てから大人しくしてたのに〜。」
まさと「うわっ!」

ミュウまで、こっち来てたとは。後から羽交い締めされちゃいました。

まさと「うぉ。放せって、放せよこらぁ〜。」
ミュウ「誰が放すか。今日一日引きずりまわしてやる。」
まさと「うがぁ。わ、悪かったって。」
真悟「・・・・・なかなか、いいコンビって事か。」
まさと「なっ!?」
シルフィー「うんうん。」

まさか、真悟にまでいいコンビと言われようとは。
まぁなんだ。ミュウのやつ、大人しくしてた、とは、かわいいことを言う。
遠慮でもしていたんだろうか?
今日は、せいぜい好きなとこ回って羽根のばしてもらうか。
せっかく、遊園地にいるわけだし。
そう言う訳で、三方にわかれて、行動開始。

まさと「さてぇ。どっから回るかなぁ? なにか、好きなのあるか?」
ミュウ「あー、えっとねー。良くわかんないから、まかせる。ゲームとかはまさとん家にあったから、見てわかるんだけど。」
まさと「そか。ぱっと見ただけじゃ、わかんねぇわな。そうだなぁ。
何か適当に入るかぁ・・・。」
ミュウ「ほだね。あ、乗る物とかは見てわかるよ。うん。」
まさと「ああ、そりゃそうだな。まぁ、とりあえず、あれ入るか。スカッとする系。ってことで。」

近くにあったバーチャルシューティング物に入ることにした。
カウンターと当り判定用ジャケットをつけて、経路を進んで行き、最終的なヒット数等を競う物だ。
パーフェクトが出れば、特別賞が用意されている。

ミュウ「・・・・・訓練場?」
まさと「・・・・・それは誤解だ。外れても無いけど。」
ミュウ「でもこれ・・・。」

ミュウは身につけているジャケットと銃を見比べている。

まさと「おもちゃだよ。ほんとに弾が出てるわけじゃない。光りが出てて、それで当ったかどうかを機械が判断して数えてる。まぁ、実際に走りまわるゲームって事だ。」
ミュウ「ああ、そういうものなんだ。じゃ、がんがん撃っちゃえばいいんだ。」
まさと「いんや。そうでもないぞ。当ってない弾は減点になるぞ。少ない玉数で高いヒット率を、だ。」
ミュウ「な〜る。面白そう。で、もう、行っていいの?」
まさと「あ、まだだ。係員が合図するまで待て。前の組と距離を空けてるから。」
ミュウ「あーい。」

なにやら、うれしそうに銃を構えてそわそわしてるミュウ。
ここに入って正解だったか。
係員から合図があって、俺達も中へ。

まさと「俺は、こっち側受け持つから、お前はそっち側な。」
ミュウ「うんうん。あっ。それっ。」

いきなりターゲットを見つけ撃ち始めるミュウ。
こういう反応はやっぱ早いな。
しかし、うまくターゲットにヒットしていない。
照準のつけ方がまだなれてないからか。
こっちも、ターゲットが見えたので、そっちを向こうとした瞬間。
ミュウが、最初のターゲットに向かってダッシュしかけたので慌てて止める。

まさと「おぉーっと。待った待った。」
ミュウ「え?」
まさと「何をしようとした?」
ミュウ「いや、当らないから、ぶん殴って倒そうかと。」
まさと「・・・・そうきたか。あ、いや、それ、無し。遊びだから。銃限定。それに、殴って壊したら怒られるって。遊園地の人に。」
ミュウ「ああ、そう、だね。ははっ。」
まさと「もうちょっと、腕をまっすぐ的に向かって突き出してみろよ。当るようになると思うぞ。ホレ。」


俺は、さっき目にしたターゲットをヒットして見せた。

ミュウ「おぉ。どれどれ。・・・・・あ、なるほど〜。」

飲みこみが早く、急に的に当るようになったミュウ。

まさと「さぁ、これから本番だぞ。今の的は練習用みたいだ。こっから先は的は動くし、反撃してくる。避けないと、どんどん減点されるぞ。」

施設の中は薄暗く、こちらもターゲットも撃ったレーザーの軌跡がはっきりと光って見える。
ターゲットと打ち合う様はなかなかどうしてカッコイイ。
ミュウは、嬉々として、トリガーを引きまくっていた。
結果、僅差で、俺のほうが得点はよかった物の、ミュウの適応力の高さは驚かされた。
初回で一般レベルはクリアしてるんだから。
問題あるとしたら、無駄弾が多いってとこかな?

ミュウ「うー、勝てなかったよう。」
まさと「俺に勝つ気だったんか?」
ミュウ「当たり前〜。」
まさと「それなら無駄撃ちなくせ。俺よりヒット率は高いのに、無駄撃ちで減点されてんだ、ほれ。」

結果表を見比べて見せる。

ミュウ「あれ。こんなに外れてたっけ?」
まさと「外れてるよ。パカパカ光ってたじゃないか。明後日の方向に。」
ミュウ「・・・・ああ、そうだね。そう言われて見ればぁ。えっと・・・。」
まさと「何を突っ立ってる。とっとと歩け、もう一回入るんだろ?」
ミュウ「えー、あー、うん。でも、高いよね、これ。」
まさと「・・・遠慮する柄か。」
ミュウ「あう。そうなんだけどぉ。」
まさと「おばちゃーん、おっきな子供2枚。」

そう言いながらチケット発行機にお金を投入する。

ミュウ「ああ、おっきな子供って・・・。なに? あたし?」
まさと「そうそう。俺もな。・・・・てっ。」

後頭をぱかっとやられる。やっぱ、殴られたか。

まさと「てぇ。ふっふっふ。悔しかったら俺に勝ってみな〜。」
ミュウ「そ、その勝負乗ったぁっ。」

勝負してどうするんだか。
でも、そう言いながらもミュウはうれしそうにしてる。
まぁ、楽しめてるならそれでいいさ。
結局、この後、3回連続で、突入。
3回目にはミュウはとうとうパーフェクトをたたき出した。
商品のあんたが一番Tシャツと、バッヂをもらう。

ミュウ「か、勝ったぁっ。」
まさと「こ、子供か。ほんとに。じゃぁ、勝利の祝いに飯をおごってやろう。そろそろ腹減ったし。」
ミュウ「あ、お金ならあるよ。ひとみさんにこないだのバイト料ってのもらったから。」
まさと「おごらせろよ。」
ミュウ「えー、あー、うんっ。」

そう言いながらレストランのほうへ向かう俺を、ミュウはひょこひょことついてくる。
レストランにつくと、シルフィーと真悟も来てた。

まさと「よう。そっちはうまくいってるか。」
真悟「ああ。まー坊。シルフィーちゃん。・・・・かわいいな、マジで。」
まさと「ぶん殴りたくなるから真顔でそう言う事を言うなっ。」
真悟「あっ、そういうんじゃないよっ。かわいい物をかわいいと言ってるだけだって。」
まさと「あ、清美さん、来てたの?」
真悟「わぁ、き、どこっ!?・・・・・・・あ、引っ掛けたなぁ。ひでぇ。」
まさと「・・・・やっぱ、後ろめたい事があるんだな。」
真悟「し、信じてくれよぉ。」
まさと「あー、シルフィー。真悟のことよろしくぅ。ってとこな。」
シルフィー「うん。わかってるよぉ。真悟くん、かわいいからぁ。」
真悟「か、かわ・・・・。へ?」

実のとこ、シルフィーの実年齢のことは真悟には話してない。
聞いたらぶったまげるだろうから、言ってない。120歳だものなぁ。
さすがと言うか、120年生きた知識の蓄積がある。
見た目はかわいい女の子だけど。
年の功もあるので、間違いがあるなんて〜ことは、決して無いだろうから、真悟をからかって遊べるんだけど。
まぁ、俺の横に立ってるのも60歳だけどな。
各々好きな物を頼んで、席につく。

まさと「あれ? お前らこっちの文字読めなかったんじゃ? 素でメニュー言って注文してたよ、な?」
ミュウ「カタカナくらいはもう読めるって〜。」
シルフィー「そうそう。」
まさと「あら、そ。すげぇなぁ。俺、全然向こうの文字わかんなかったぞ。」
ミュウ「愛の力よ。」
シルフィー「だよ。」
まさと「あ、愛!?」
ミュウ「文字が読めればおいしい物が・・・。」
まさと「ああ、そういう愛か。食い物への愛。・・・・大いなる愛だ事。」
ミュウ「へへっ。食べ物は生きる事に繋がるんだからねぇ。侮っちゃダメ。」
まさと「はい、侮りません。侮れません。」
真悟「・・・・・なんか、口調は軽いけど、すげぇ深い会話して無い?」
ミュウ「あはははははっ。」

馬鹿話しながら、楽しい昼食。
そこへ、広江さんが俺達を見つけてやってくる。

広江「どうだ。何かあったか?」
まさと「あー、ミュウが素手でアトラクション壊しかけたくらいは別段。」
ミュウ「ぶっ。あ、それ無し〜。」
広江「ん〜? あ、ああ、そうだな。そういうこともありそうだ。こっちも特にそれらしいのには当らなかった。」
まさと「そうっすか。」
広江「まぁ、何事も無いほうが良いのは良いからな。」
まさと「そりゃそうだ。じゃぁ、昼からもこんな感じで、ですかね。」
広江「そうだな。一応、閉園時間までは居たほうがいいな。その後の夜警も出来たら、か。」
まさと「ああ、夜警も。そりゃそうっすね。電磁波のほうは?」
広江「ああ、さっきオペレータに電話で聞いたが、散発的に出てるそうだ。気だけは付けておいた方がいい。」
まさと「ん。出る可能性はまだあるって事か。さて、昼からどこ行くかなぁ。」
シルフィー「あのね。あのね。」
まさと「ん?」
シルフィー「温水プールがあるの。」
まさと「あ、そういや、奥にそういう施設があったな。冬季以外やってたはずだ。」
シルフィー「みんなで行きたいなぁ。」
まさと「え、でも、水着・・・・ああ、レンタルのとかあるか。」
真悟「ああ、あった。」
まさと「調査済みかい。」
ミュウ「なに? 温水プールって?」
まさと「あー。お前ら〜、海で泳いだりとかする事あるんだよ、な?」
ミュウ「うん。あるよ。暑くなったら南のほうへ行って海で。あと、川で水浴びとか。」
まさと「それだ。プールってのは人工の池みたいなもんだ。冷たい水じゃなくて、暖めた水が張ってあってな。今でも入れるぞ。」
ミュウ「へー。いいね。」
まさと「じゃ、決まりか。あ、広江さんは・・・。」
広江「ああ、私はやめておく、何かあったらすぐ動けるようにな。お前達は好きに遊んでていい。ブースターとか剣とかすぐ使えるのだろ? そうしてくれていれば遊んでくれていい。」
まさと「ええ、そうっすね。くさなぎも出せるし、ブースターも持ってれば使えるし。じゃ、俺達だけで悪いけど。」
広江「ああ、気にしないでいい。」
まさと「んじゃ、昼から温水プール決定な。」

レストランを出て温水プールの施設へ。
完全屋内で、室温も調整されてて凍える事も無く、ドームが透明なので日の光も差しこんでくるので、甲羅干しさえ出来る。
よく出来たプールだ。
俺はトランクスタイプの水着を借りた。
真悟は・・・・ビキニタイプだよ、あの細っこいの。いい度胸してる。
中に入ると、気温も高くほんとに夏になった気分。バーチャル夏って事か。さすが体感系遊戯施設。
さて、ミュウとシルフィーはどんな格好でやってくるのか。
しばらくすると、二人がやってきた。
シルフィーは浮き輪をもって、ぱたぱた掛けて来る。

ミュウ「お待たせ〜。着方がわからなくって、お隣の子に教えてもらっちゃった。」
シルフィー「大丈夫かなぁ?」
まさと「教えてもらったって、そりゃ・・・・・紐?」

シルフィーは極普通にかわいい女の子っぽい水着。なのだが、ミュウのほうが。
どう見ても、紐。露出バリバリの水着だった。

まさと「こぼれるぞ。それ。」
ミュウ「平気だよ。ほら。全然大丈夫。」

ミュウは、目の前であっちこっちと体をゆする。
が、ほんとにこぼれるといった事はなさそう。
ほんとに体にピッタリ合ったのがあったんだろうな。でないと、このピッタリ感は。

ミュウ「別のにしようか?」
まさと「いや、大丈夫なら。それで良いだろ。一応、似合ってるみたいだし。」
ミュウ「ん。そう? へへ。」
まさと「で、シルフィーって、泳ぐの不得意だったのか?」
シルフィー「ううん。綺麗で面白そうだから借りたのぉ。」


シルフィーは目の前で、くるくると浮き輪を回す。
透明のビニール製。
向こうにゃこういう透明のビニール製品なんて見かけなかったから、珍しかったんだろうな。

ミュウ「けど・・・まさと、筋肉無いね〜。」
まさと「い、いわれたくないぞ。これでも、こっちじゃついてるほうだ。」
ミュウ「あー、そうだねぇ。回りはみんな細っこいか。」
まさと「お前はムキムキなのがいいのか?」
ミュウ「ううん。どっちでもないよ。」
まさと「んじゃ、そういう事いうなよ〜。シャイな俺のハートがずたずただぁ。」
ミュウ「どこがっ!?」
まさと「・・・・・力強く聞き返すな。さて、泳ぎますか。」

造波プールに、流水プール、競泳プールに、飛び込み用。そして、流水スライダー、つまり、水の流れる滑り台。
いろんなのがある。
あっちこっちと俺達は大移動を繰り返しながら泳ぎ倒した。