第4話 遠き異国の地にて #4 マイテー
寝つきが遅くなったせいか、俺は、翌日昼まで寝てた。
いや、一度起きたんだ。
やさしくシルフィーに揺り起こされて、けど、結局、まだ眠たくって、二度寝したんだ。
ミュウと、シルフィーはマイテーの事務所のほうへ暇つぶしに行ってるはずだ。
もそもそとベッドから這い出して、俺も事務所へ。
中から、わいのわいのきゃいきゃいと、楽しげな話し声が聞こえる。
まさと「はよぉ〜。・・・・・・・・・・・・・・・・・・はっ!」
なぜか、バイトどもの刺さるような視線が。
バイト1「ゆるせねぇよな・・・・。」
バイト2「あんまりだぜ・・・・・。」
バイト3「ちっくしょう・・・俺の・・・俺のぉ・・・・。」
なんて、慇懃な目つき。
シルフィー「ううん。むこうでも、そうやって寝てたよぉ・・・。」
バイト1「うわぁぁ。」
バイト2「なんかされたら、俺、絶対助けに行くからっ。」
これか。嫉妬だ。
バイトどもは嫉妬のまなざしで俺を見てるんだ。同居してるのを妬んで。
どうしたもんか。
しかし、情報筒抜けとるな〜。
今日のことわざその一。
シルフィーの口に戸はたてられない。
ってとこか。
しかたないから、開き直り決定。
まさと「お前ら、仕事しないとバイト代出ねぇぞ。ほれほれ。」
ひとみ「もう。やっぱり彼女なんじゃない。うそつきっ。」
まさと「わぁっ!」
丸尾「まさ坊、俺の台詞とんないでよ。バイト代出すの俺なんだから〜。」
まさと「あ、いや、はよっす。」
ひとみさんはまたもや誤解してるみたいだし、おじさんはのほほんとして・・・・あ、こっちはいつもの通りなのか。
と思ったら、今度は絵師の小染さんが、頭をかきながら出てくる。
小染「ミュウちゃんごめん。もっかいおねがい。」
ミュウ「あーい。こう、こう、こう、で、こう! ね!」
小染「あ、そうかそうか。ありがとう。」
ミュウがグレンハート流の構えの振りをすると、小染さんは納得してまた作業部屋へ戻る。
ミュウも、シルフィーも、しっかりマイテーの一員になっている気がする。
まさと「一体、俺の知らない間に、どんなプロジェクトが動いたんだ?」
俺がそんな独り言を言ってると、ひとみさんがうれしそうに言う。
ひとみ「『マスターアップも近いが、せっかくいい素材が入ったんだし、殺陣とかいろいろグレードアップで、ああ、今夜も誰も眠れない』プロジェクト、発動中。ミュウちゃんたち本人もオッケー済み。」
まさと「・・・・・また。そんな無茶を。いや、本人がおっけ〜なのは見ててわかったけどね。んじゃ、修羅場突入っすね〜。」
ひとみ「そうそう。悪いんだけど、特典のコスのほうも、他のコの写真とか、こっちのデザインとか見せてオッケーとっちゃった。ごめんね。」
まさと「あ、ならいいっす。俺の手間省けた。」
ひとみ「ふぅうん。やっぱりか。」
まさと「え、なに?」
ひとみ「うん。昨日から思ってたんだけど、まさと君、随分変わったね。」
まさと「そ、そう? 変わったつもりはないんだけど。」
ひとみ「うん。変わった。あ、悪い意味じゃないよ。なんか、堂々としてる。」
まさと「そう?」
ひとみ「そう。前は、なんかこう、見てて危なっかしかったんだけど。それがなくなったよ。あ、ごめん。今、ひどいこといったかな?」
まさと「あー、いいよ。そうか、そう見えるんだ。まぁ、色々危ない目にもあったしなぁ。」
ひとみ「そう。うんうん。修羅場は男を鍛える、か。いい、いい。そうだ。お茶、飲むでしょ?」
まさと「あ、うん。」
にこっと微笑んで、ひとみさんはお茶の用意をしに行く。
で、流しから脅威の一言。
ひとみ「ねぇ。まさと君、今度デートにでも誘ってよ。」
一同「ぬぁにぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」
まさと「ひっ、ひとみさんっ!」
ひとみ「あ、いけない。てへへ。」
こりゃ、ひとみさんに、からかわれて遊ばれてるだけか。
一応、マイテー内での社内恋愛は厳禁、という事になってます。はい。
さっきのバイトどもの反応もそうなんだけど、風紀その物より、修羅場中にいちゃつかれたら他のもんが仕事に差し支えそうだからね〜。
そうゆうわけで建前上のものなんで、社屋内でいちゃいちゃさえしなかったら黙認されるんだけど。
あ、ミュウのやつ、けたけた笑ってやがる。
シルフィーも吹き出すの堪えてるし〜。
最近、どうも、おもちゃにされることが増えたな・・・。
ひとみさんの持ってきてくれたお茶を飲みながら、今日の予定をまだ伝えてないことを思い出した。
まさと「ああ、そうだ。ひとみさん、今日俺達抜けてていいすか?」
ひとみ「え? どうしたの?」
まさと「買い物行こうかと思って。服とか。」
ひとみ「ああ、そうなの。・・・・じゃぁ、あ、ちょっと待ってて。」
ひとみさんはおじさんのところまで行って何やら話しこんですぐ戻ってきた。
ひとみ「おっけー。私が良い店案内してあげるわ。」
まさと「え。でも。マスターアップ近いんじゃ。」
ひとみ「大丈夫! やることは決まってるから私が半日くらい居なくても仕上がるわよ。それに・・・ほっといたら、割高の服買いに行っちゃいそうだもの。」
まさと「はい・・・・ごもっともで。俺、女の服、良くわかんないし。」
ひとみ「ね。じゃ、着替えてくるからちょっと待ってて。」
まさと「はーい。」
着替えてきたひとみさんに連れられて、買い物へ。
ポチは俺の部屋で留守番。あいつは服も化ける時にどうにか出来るらしく、改めて買う必要はないそうだ。
ミュウたちは人間の町をほんと珍しがって喜んでる様子。
ひとみさんは、それを見てさらに喜んでいる様子。
繁華街を少しはずれまで行ったところにそのひとみさんのいう店はあった。
総合ブティック・BoM!コンテナ再利用の実に素朴な店だった。
店員「あれー。どうしたの?」
店員は、ひとみさんを見止めると、人懐っこく寄ってきた。
そしてその容姿にびっくりさせられた。あの、ファリアにそっくりなのだ。
耳が長くないので、別人なのはすぐ分かったのだが。
店員「へぇ、そんなに似てんだ。」
まさと「うん。思わず声をかけそうになった。」
店員「あ、あたいは聖子、そうかぁ、とりあえず、その人連れてこないでね。」
まさと「なんで?」
聖子「いや、ドッペルさん見ると死ぬっていうし。」
まさと「・・・・・ど、どっぺるさん・・・。」
聖子「で、あんた達ね、期待の新星ってのは。」
まさと「し、新星?」
ひとみ「そうそう。まさと君は知らなかったよね。今、コスの衣装、聖子さんに作ってもらってるの。」
まさと「え、あ、そうなんだ。」
聖子「ふーん。思ったより胸あるなぁ。ごめん、ちょい、計らせて。」
ミュウ「え? あたし?」
聖子「そうそう。ポロっと行きたくないでしょ? 彼氏はうれしいかもしんないけど〜。」
聖子さんは、ジェスチャーを交えながらいたずらっぽく笑っていう。
なんか、ひとみさんの誤解がそのままストレートに伝わってるのを実感したり。
ミュウの体のサイズをほうぼう計り倒すと、メモをとっていく。
聖子「かなりぴっちりしたやつだから、きちっと計っとかないと動いた時にやばいのよね。キャンペーンもやるって聞いてるし、開陳しちゃうと、あと大変だからね〜。」
そんなにやばい衣装なのか。怖いやらうれしいやら。
聖子「さてと、いいわよ。あぁ、服選びに来てくれたんだっけ。じゃぁ、ちょっとアドバイス。あんたは、細身だから、飾りの少ないそれを強調するののほうが良いだろうね。可愛く見えるよ。」
シルフィー「ふんふん・・・。」
聖子「昔は、逆の事やってたみたいだけど、今は、個性の時代だから。で、こっちは・・・・動きやすいのが良いだろうね。で、自分が似合うって思うのしか似合わないと思う。個性強いね〜。レザー系なんていいかも。」
ミュウ「・・・・・・・うぅ。」
んー。鋭い。個性を見事に見切っている気が。
さすが、ひとみさんが薦めるだけのことはある。
聖子さんのアドバイスを受けると、ミュウとシルフィーは好きな服を選び始めた。
ひとみさんも物色してる。
俺は手空きで、ぽつねんと。
まさと「・・・しかし、個性をズバッと見切ってますね。驚いた。」
聖子「まぁねぇ。それで食ってるわけだから。それより。」
まさと「ん?」
聖子「二人も抱えこむなんて、好きだねぇ。それも両極端で美味しいとこだし。あたいも混ぜてよ。どっちが本命? やっぱり両方?」
まさと「・・・い、いや、そういうわけでは・・・そういう風に見えます?」
聖子「んー。いや、どっちかってぇと、あんたのほうがおもちゃにされるか。」
まさと「・・・・・・・まぁ。どっちかというと。そう。」
聖子「あは。でも、二人ともあんたの顔色見てるよ。信頼はされてるから、まぁ、頑張りな。」
なんだか、妙な励まされ方をしてる気はする。
でも、なんだか、ファリアに会えたみたいで、ほっとしても居たり。
服を選び終えると、なんにかもってシルフィーが戻ってきた。
シルフィー「これ、いいかな?」
手にしているのは、カッパさんだった。
そうか、シルフィーはこういうものが好きか。
まさと「ああ、いいよ。」
シルフィー「わぁい。」
良く見ると、そのカッパは携帯電話用のケースになっているらしい。
そうか、これから先、別行動する時に便利かも。
まさと「ああ、この辺、携帯扱ってるとこあります?」
聖子「携帯? ん。プリケなら。」
聖子さんはレジになってるコンテナに入ると申込書やらなんやらもって出てきた。
シルフィー「なぁに?」
まさと「携帯電話。遠くに離れてても話せる道具な。」
ちょちょっと分かりやすく説明して、使い方を説明してみる。
ミュウは、理解しきれないだろうから、シルフィーに持っててもらえば良いだろう。
シルフィー「うん。多分、使えると思う。」
まさと「あ、じゃ、俺名義で、二つ。」
聖子「はいはいー。じゃ、これ書いてね〜。」
申し込み手続きをしてもらった。これで、離れてもすぐ連絡はつく。
しかし、一体何屋さんなんんだここは。便利で助かるけど。
聖子「はい、もう使えるよ。」
まさと「ども。」
早速、互いの番号を登録して、シルフィーにかけてもらう。
シルフィー「んー・・何か音がしてる〜。」
まさと「もしもーし。」
シルフィー「ああ、まさとさんの声がするぅ。」
まさと「・・・という物だ。」
シルフィー「うん。わかったぁ。」
ミュウ「あ、えっと、あたしのは?」
まさと「使い方・・・・さっきのでわかるか?」
ミュウ「あははは・・・・そだね。がくっ。」
肩を落とすミュウ。
まぁ、仕方ない。使えるようならその時用意してやれば良いだろう。
まさと「そうそう。このポーチとかも。」
ソーサルブースターをしまっておいたり、色々必要になるだろうから、ウエストポーチも仕入れ。
これで、準備は整ったのかな。
ポーチと言って、気がついた。
ポチ。だ。
今のままだと、ポチは犬に化けても外を出歩けば野良扱いされかねない。
そこで、ポチに首輪をつけてやってはどうかと考えた。
そうすれば一見どこかの飼い犬に見えなくもない・・・はず。
まさと「あ、この辺、ペットショップってなかったすかね?」
ひとみ「餌?」
まさと「いや、ポチは雑食みたいで、大概食べます。餌じゃなくてね。首輪をつけてやったほうが何かと都合良いかななんて。」
ひとみ「ああ、そう言えば、あっちの角を曲がったとこに。うん、あったと思うわよ。行く?」
まさと「はい。じゃ、俺達はこれで。」
聖子「はぁい。また寄ってよね。」
聖子さんの店を離れて、ペットショップへ。
一人店内に突入した俺は、POCHIとネームの彫られた比較的調整の容易そうな首輪をゲットすると、足早に店を出た。かなり時間食ってたし。
まさと「すみません。付き合ってもらって。」
ひとみ「ううん。済んだ? じゃぁ、何か食べに行こう! 近くにバイキングがあるからそこでどう?」
まさと「ああ、いいっすね。」
バイキング形式なら、メニューが分からなくても、ミュウ達は好きなものが食える。
さすがひとみさん、目の付け所が違う。
もちろん、そのお店についてからのミュウの活躍はいうまでもない。
目を輝かせて全メニューを平らげんばかりの勢いだった。
ひとみ「・・・・ぱわふるぅ〜。」
まさと「いや、あれでまだ実力の半分も・・・・あいて。」
後のほうから戻ってきたミュウに小突かれる。
シルフィーも見たことのない料理に嬉しそうではあった。
まさと「どう、口にあう?」
シルフィー「うん、おいしいよ。」
まさと「食べられるだけ食べて大丈夫だからな。料金は一緒だ。」
シルフィー「はぁい。」
ミュウ「はぁい。」
まさと「・・・・・ミュウ。腹壊さない程度にしとけな。」
ミュウ「う。なんで、あたしだけそういうこと言うのよう。」
まさと「いや、ほっとくと、他の人のぶんも食べてしまいそうではないかなと俺は心配にな・・・・あっ、わっ、今のは俺が悪かったっ。」
拳を握り締めるミュウ。
はいはい。言い過ぎましたよっと。
ひとみ「いいなぁ。こういう食事。」
まさと「ああ、そうか、いつもは交代で一人ですもんね。」
ひとみ「男のコと出ると何かとあれだしね。実は、今日はこれ目当てで出てきたとも〜。またいろんなとこ食べ行こうね〜。」
シルフィー「はぁい。」
ミュウ「うんうん。」
まぁ、今日は、ほんと、ひとみさんに感謝だな。
俺だけならここまで気は回らなかっただろう。
たらふく食べ終わって、事務所の方へ、戻ろうとした時だった。
どこからか、爆発音のような物が聞こえた。
まさと「なんだ? どっか工場でも吹っ飛んだか?」
ひとみ「んー、銃声じゃないかな? 物騒ね・・・・。」
そんなやり取りをしてる目の前を、見覚えのある何かが横切った。
ミュウ「あっ!」
まさと「・・・・・・・・なんだって・・・!?」
目の前を横切って行ったのは、紛れもなく、魔獣だった。
ひとみ「なに・・・あれ・・・・・。」
ミュウ「どうする?」
まさと「いこう! 魔獣なら何とかしないとまずい! シルフィーはひとみさんとここに居て!」
俺とミュウは魔獣が走り去った方向へとにかく走った。
幸い魔獣は人気のない更地へと逃げ込んでいた。ここなら。
まさと「くさなぎっ!」
ミュウ「あ、よし。ソーサル・セットアップ・ミスティック・ミュウ!」
俺はくさなぎを呼び出し、魔獣に斬りかかって行く。
ミュウは、その俺を様子を見て、変身。
まさと「でやあああああっ!」
ミュウ「ミスティックボンバーーーーーーーッ!」
魔獣は切り裂かれたところにボンバーを食らって、砕け散って泡となる。
被害もほとんど出てない様で、安堵した。
だが。
???「おいっ! お前達っ!」
誰かに声をかけらた。
見ると、声がしたほうには、スーツ姿のきつい目をした女性が立っていた。
その手にはリボルバーを構えていた。
まさと「あ、やばっ。」
ミュウ「なに?」
まさと「あ、私服警官。あー、こっちの世界の騎士みたいなもんだ。」
ミュウ「あ、じゃぁ、仲間ね。」
まさと「いや、そうでもない。とっつかまるといろいろやばいから、ここは逃げるぞっ。」
ミュウ「えー、結局どっちなのよ!」
わたわたとそこを走り去る俺達。
私服警官「あっ、待ちなさいっ! 止まりなさい!」
待てませんて。
結局、足の遅い俺を見かねて、ミュウが俺を抱えて、文字通り、ビルをひとっ飛び。
なんとか逃げおおせた。
人気のない路地で、ミュウが変身を解くと、俺達は何食わぬ顔でシルフィー達の元へ。
早速合流の連絡に携帯が役立った。
まさと「お待たせ。」
シルフィー「どう?」
まさと「ああ、すぐ片付いた。向こうが隙だらけだったから。」
ミュウ「そうだね。こっちの世界に面食らってたのかも。」
ひとみ「・・・・なんなの、あれ?」
まさと「ああ、魔獣、あっちの世界の化けモンっす。」
ひとみ「あんなのと戦ってたの? 向こうで・・・・。」
まさと「ええ、まぁ。あの程度なら序の口ですけど。」
その後は何事もなく無事に事務所まで戻ることが出来た。
たまたまなのか、よくはわからないが、現にこっちに魔獣が出たってことは、そう気を抜いても居られないな。
次はあって欲しくは無いけど。
こうなってくると、確認を急いだほうが良いのかもしれない。
事務所に戻ると、俺は、おじさんに竜崎やパールのことを確認する方法がないか、尋ねてみた。
丸尾「ううん。そういうことなら・・・・。おーい。小染ちゃん、ちょっとぉ。」
小染「はいぃ。」
ちょっと間があって小染さんがやってくる。
丸尾「悪いね。まさ坊の頼みなんだけど、聞いてやれないかな? 行方不明者とか。」
小染「え・・・まぁ、なんとかなるとは思いますが。あの人、捕まらないからなぁ。急ぐ?」
まさと「え? 知り合いでも?」
小染「うん。話してなかったけど、身内がね。警視庁に。」
まさと「・・・それならっ。お願いしますっ! えっと、急ぎますけど、出来るだけで良いです。そんな、無理言えないし。事が事だし。」
小染「うん。後で、話しを通しておくよ。あ。あんまり期待はしないでね。僕はその、疎まれてるんで。」
まさと「そうなんですか? なんか、意外だけど。」
小染「まぁ、いろいろね。周囲ってのは期待するから。じゃぁ、何かわかったら教えてあげるよ。あ、誰を調べるの?」
まさと「はい。じゃぁ、この名前で、実在するか、行方不明になってないかどうか・・・。」
小染「ふんふん。りゅうざきまもる、に、むかいたまみ、ね。漢字は・・・ああ、わかんない?」
まさと「口で聞いただけなんで。あと、あっちの世界のことは出来るだけ出さないで下さい。まずいかも・・・。」
小染「ん。わかった。ひとみさんからさっきあったことは聞いてるよ。勘ぐられるとまずいだろうね。全部話して協力を取り付けられると良いけど、話したからってそうなるとは限らないし。証拠が少ないから疑われるだろうねぇ。なんとかブースターを作った人が居ればあるいはとは思うけど。」
まさと「ええ、そう思います。今は。」
聞いてみるものだ。
まさか、小染さんの身内にそういう人が居るとは。
とにもかくにも、情報待ち、か。
あとは、さっきみたいに魔獣とかがまた現れないのを祈るだけ。だ。
その後は、ゲームのテストに専念することにした。
ミュウ達の食い扶ちも稼がないとな。向こうじゃ、俺も世話んなったんだし。
そのミュウ達も作業に興味深そうに見入っていた。
そしてまた、例のパール達の居る部屋。
パール「また、ビーコンが・・・。」
ルビー「また? 何か起こってるのね・・・。」
パール「そうとしか・・・・考えようないわよね。のんびりとはしてられないか・・・・。」
ルビー「目処は立ってるの?」
パール「んー・・・。理論上はね。後、最終調整したら動かせそうなんだけど。どう? 実験台やる?」
ルビー「・・・・遠慮しとくわ。」
パール「そうよねぇ。・・・・・はぁ。まぁ、頑張るしかないか。」
ルビー「あんまり無理しすぎない様にね・・・。」
パール「うん。それはわかってる。」
ほんとうにパール達は何を準備しているのか。
マイテーで製作中のゲーム。
つまり、今、皆総出でテストと練り上げを行っている、俺がティラへ転移した時にもやっていたゲームのことだが、舞台設定はミュウ達の世界、ティラにそっくりだ。
俺がそうだった様にその世界へ転移した主人公がミュウと言う少女に出会い、またその知り合い達とめぐり逢って行くことで、道が開けて行く、異世界ヒロイックファンタジー。
ただし、ソーサルブースターなどの変身の概念はない。
純粋な剣と魔法モノだった。
まぁ、この程度の偶然の一致は、起こり得るのかも、と、思えるくらいだが、やはり、何か意味があるのだろうか?考えるばかりで、答えは見つからないのだが。
しかも、ミュウ達がこっちの世界に現れて、急遽変更した物が入ったので、偶然なのか、意図的に似せてあるのか、判断のつかない物になりつつあった。
その辺のことを傍でじっと見ているミュウに尋ねてみることにした。
まさと「・・・と言うわけなんだけど・・・どう思う?」
ミュウ「ん〜、それがねぇ。・・・・・・わかんない。」
まさと「ぐあ。・・・・・・そ、そうか。」
ミュウ「あ、読めないから。こっちの文字。ぱっと見は似てる気はするけど、それ以上はねぇ。」
まさと「・・あ、そういうことか。・・・・・・ん?」
そこまで話しててやっと気がついた。
俺とミュウ達はなんのためらいもなく会話している。
しかし、俺はティラの、ミュウは日本の文字がそれぞれ詠むことができない。
それなのに、どうして会話が成立しているのか?
まさと「・・・・おい。ほんとに読めないのか? こうやって話してるのに。」
ミュウ「そだよ。まさともあたしたちの使ってた字は読めないんでしょ?」
まさと「いや、そうなんだが。・・・・だったら、なんで、話しが出来るんだ?」
ミュウ「ああ、それ言ってなかったね。」
まさと「ん?」
ミュウ「ティラでは意思疎通にマジェスティックスが作用してるんだって。」
まさと「・・・・ぅにゃにぅを!?」
ミュウ「あ、あたしも詳しくは解らないんだけど、エルフはエルフ、人間は人間、獣人は獣人、それぞれ、自分達の母国語で話してるらしいの。それが、マジェスティックスが共通の言葉に直して、それから、それぞれが理解できる言葉に直って、伝わるんだって。だから話せるの。」
まさと「・・・・なんとまぁ。そういう仕掛けが動いてたんか。マジェスティックスが通訳ねぇ・・・・て、まてよ!」
ミュウ「ん?」
まさと「それじゃ、今、こうやって話せるってことは・・・。」
ミュウ「ああ、そうだねぇ。こっちにもマジェスティックスはあるんだ。」
まさと「・・・そういうことになるよな。つまり、未だ発見されてない、素粒子とか、そういうものの部類に入るって事か。
マジェスティックスは。」
ミュウ「そ・・そりゅ・・・・なに?」
まさと「素粒子。言ってみれば、いろんなモノを形作ってる、基礎になるような目で見えない小さな粒のこった。水とか、鉄とか、みな、そういうものが固まりになって出来てんだ。」
ミュウ「あー、なるほど。そういう話しは聞いた事あるなぁ。目に見えないから、そういうものだって事しか、わかんないけどぉ。」
まさと「そか。まぁ、そういうもんだ。俺だって概念を覚えてるだけだ。普段目に見えるわけじゃないから。けど、そうかぁ、これはひょっとすると、地球もティラも、元をたどると似たような物なのかもなぁ。進んだ道が違うだけって言うか。こっちにだって、魔法だの、呪法だの、そういった話しはあるからな。言い伝えだけとも言えるけど。」
ミュウ「そう、かもね。ただ、同じじゃないと困るよね? 空気が違ったら、息できなくて、死んじゃうし〜。」
まさと「ははっ。そう言われてみればそうだ。さすがは勇者が行ったり来たりする双子星ってとこだなぁ。」
ミュウ「そだね。」
そうやって話しこんでると、傍をひとみさんが困った顔で通る。
ひとみ「こらこら。仲良くするのは、自分の部屋だけにしてね。」
まさと「あ。すんませぇん。」
ひとみ「部屋でやってくれても良いわよ。テストだけでしょ?」
まさと「あ、はい、受け持ってるのはバグ出しテストだけで。」
ひとみ「じゃぁそうして。なにかあったらイントラのほうで、情報くれればいいから。でないとほら・・・。」
まさと「ん? ・・・・・・あ。」
振り返ると、時々他のバイトどもがこっちを注目していた。
シルフィーとなにやらへらへらと話しこんでるやつもいる。
納得。他の仕事が遅れる原因になってたのか。
まさと「そ、そうします。すんません。」
ひとみ「よろしくね。あ、まさと君の事情はわかってるから。その辺は気にしないで。作業が進めば良いってことだから。ね。」
まさと「はい。助かります、じゃ・・。」
セーブしてゲームを終了させ、使ってるマシンを空ける。
部屋に戻ったら、自分のマシンを起こして、このセーブデータを引っ張ってきて、続きをやればいい。
これは終業時間外でもテストの出来る、アルバイター向けの措置だったりする。
月額固定のバイト料と、有益なバグ情報の件数によって、出来高のバイト料が入る。
それがここのバイト料の算出方針だ。
やりやすい反面、計算など大変らしいのだが。
致命的なバグを見つければ見つけるほど、バイト料が良くなるので、アルバイター達の熱心さもうなぎ上り、計算の大変さを差し引いても、仕上がるソフトの確実性に役に立ってるらしい。
出すソフトの確実性があがれば、後のユーザーサポートで裂く時間が減らせるのも結構重要なのだとか。
イントラとひとみさんが言っていたが、これは、社内のネットワークのことで、このイントラ網が、社屋のすぐ隣の丸尾コーポ、つまり、俺の住んでるアパートの各部屋まで簡単につなげられる設計になっているのだ。
丸尾コーポは、マイテーの社長、おじさんのアパートで、この家賃などの定収入が、マイテーの経営安定に一役買っていると言う話しだ。
多角経営というやつ。
で、さらに言うなら、このアパートは、半分くらい社員寮になりつつある。
便利なのとマイテーに勤める限りは敷金家賃一切ない。光熱費と食費等だけで生活できちゃうのだ。
親父が困ったらおじさんに相談しろと言っていたのは、この辺のことがある。特に住む所に関しては。
でなきゃ、この都会で、俺みたいな、いい加減なのが生きていけるはずもない。
助かってるんだよね。ほんと。
さすがに、全部屋が社員で埋まるときついらしいので、マイテーの社員はそうは多くない、少数精鋭になったりもしているのだが。
もっとも、ひとみさん曰くだが、今、非常にそのバランスが良いらしい。けど。
まぁ、そういった訳で、邪魔になるので、ミュウとシルフィーを引きつれて部屋に戻ると、俺はゲームのテストの続き、ミュウ達はビデオ鑑賞やゲームと言った按配になった。
それから、さっき買ってきた首輪をワーウルフに戻ってるポチに見せる。
まさと「・・・と言う訳で、これをつければ表を連れて歩きやすくなるんだ。悪いけど、そうしてくれないか。」
ポチ「はい。そのほうが都合良いのなら。で、何と書いてあるのですか?」
まさと「こっちの言葉で、ポチだ。」
ポチ「ああ。これで。判りました。早速。」
ポチは短い指を器用に使って、首輪をつける。
ポチ「こんなモンですかね?」
まさと「うん。そうだな。きつくないか? 人に化けたときとか締めすぎてると苦しかったりとか。」
ポチ「ああ、こんなもの・・・ですね。大丈夫です。」
まさと「そうか。自分で調整できそうだからなんとかなるよな?」
ポチ「はい。」
ミュウは、ビデオはもちろんの事だが、ゲームが気にいったらしい。
格闘物は気晴らしになるようで、嬉々としてやりこんでいる。
それと、面白いことに、キャラクターが空を飛んでステージをクリアして行くゲームがあるんだが、これが、ミスティックの時に役に立つらしい。
まさと「これがねぇ・・・。」
ミュウ「うん。今まで感じが掴めなくて。ほら、パールが飛んでたりしてたでしょ? あれが良くわかんなかったの。」
まさと「なるほど・・・。そうか、飛ぶってことの概念かぁ。」
ミュウ「そうそう、それそれ。今まで、ジャンプしか出来なかったから。」
言われてみれば、今まで、ミスティック・ミュウは走りまわるか飛び上がる程度しかやってない。
飛べていたなら、エルフの村でダイア相手に空中戦を展開できたはずだ。
ミュウ「で、やってるわけなん・・・だけ・・・・あっ!」
シルフィー「きゃは。また当たり〜。」
これがどうも上手くゆかないらしい。障害物にどんどこぶち当たっている。
まさと「・・・・んー。傍になってから避けたんじゃ避け切れんだろうが。」
ミュウ「うん・・・そうだねぇ。いまいち踏ん張り利いてないって言うのが、飲みこみきれなくて。」
まさと「ああ、それだろうな。ミスティックの時に踏ん張れるんならそれで行けるんだろうけど、違うか?」
ミュウ「うん。このゲームみたいなの。ふわふわと、踏ん張りが利かないって言うかぁ。」
まさと「じゃぁ、熟れるしかないか。このゲームで。」
ミュウ「だよね。・・・・・ところで。」
ミュウは、ゲームをポーズ掛けるとこっちに向き直る。
まさと「どした?」
ミュウ「それ。」
ミュウは俺がテストしているゲームが走ってるパソコンを指差す。
まさと「ん? あ。これか?」
ミュウ「やっぱり、エッチだったね。」
まさと「・・・・・・・・・・・・・・・・・げっ。」
ミュウ「げっ。じゃないって。」
まさと「ぎくっ。」
そうだ。
俺がティラへ行った経緯をその日ミュウに話したときに大きな誤解が発生していたかも知れないのを思い出した。
パソコンのゲーム。
これをミュウに上手く説明し切れなかった。
それが今、目の前にある。
そうだ。
このゲーム18禁だったのだ。そいつをとんと忘れていた。
まさと「あ・・・いや、そうか。・・・・・・・・ごめん。」
ミュウ「いや、やっとどういうものか解ったってことなんだけど?」
まさと「へ? 怒ってんじゃないのか?」
ミュウ「・・・・・・微妙。」
まさと「・・・・うっ。」
ミュウ「けど、思ってたのとは違うからなぁ。どういうモノなのかなんとなくわかるし。だから、微妙。」
まさと「うぅ。」
ミュウ「とにかく、文字が読めないもん。なんともねぇ。」
まさと「・・・あ、そうか。話しわかんないよな。」
ミュウ「そうそう。でも、絵は綺麗だね。広夢さんの絵だよね?」
まさと「そ、そう。元の線は広夢さんが描いてる。重要なのは広夢さん自身が塗ったりしてるし。」
シルフィー「わたしそっくりのもでてるのぉ。絵が綺麗〜。」
シルフィーがなんだかうれしそうに話す。
・・・・シルフィーって、ひょっとして、やっぱ、なんというか、・・・・・えっち?
まさと「・・・・ひょっとして、どう言う物か、全部・・・知ってる?」
ミュウ「うん。コスの話し聞いたときに大体。ひとみさんに聞いた。」
まさと「・・・・・・・・・・・うわぁ。」
ミュウ「だからぁ。思ってたのとは違うって。それくらい。ねぇ。」
シルフィー「うん。」
まさと「は?」
ミュウ「言っちゃぁなんだけど、もっと、すけべぇだと思ってたから。まさとの事。はははっ。」
まさと「うぐぐ・・・・・そ、そう見えてるのか・・・。ひ、否定も・・・出来・・・な・・・・。」
ミュウ「まぁ、初日から覗きを働くとは思ってなかったし。」
まさと「・・・・・・・・・・ぐはぁっ。」
初日の覗き。
そうだ。
そう言えばそういうことが。
まさか、あれ、バレバレ・・・・・・・?
ミュウ「えっとね。よっく見えちゃってたから。あれ。覚えてる、よね?」
まさと「は、はひ、・・・・身から出た錆。」
ミュウ「ふぅん。」
シルフィー「あ、わたしも見たよ〜。うんうん。」
で、なんでそこで、うれしそうにしてますか、シルフィーは。
まさと「うおぉ。俺ってやつはよぉ・・・・・。」
シルフィー「ふふっ。」
だからなんでそんなにいつも通り・・・・。
あれ? 良く見ると、ミュウもいつも通りか?というか、何かおかしい。
いつもなら、そろそろ殴られてもよさそうなもんだが。
ミュウ「ああ、やっぱりわかってないか。」
まさと「はい?」
ミュウ「あの、ね。割りと平気なの。そういうの。」
まさと「は?」
ミュウ「特にうちの村はね。皆が家族みたいな物だから。良く、皆で一緒に大温泉とか入ったりしてるし。」
シルフィー「うん。また行きたいなぁ。」
まさと「・・・・・はひ?」
ミュウ「だぁかぁらぁ。見られるくらいは平気だって言ってるの。覗きは怒ってるけどね・・・・。」
まさと「う、うわぁ。そ、そういうことか。」
ミュウ「こっちではそういう習慣、無い、よね? セントヘブンなんか人は割りとそうだったし。」
まさと「そ、そう、だ。ごめん。」
ミュウ「まぁ、あれ一回きりだったし。こき使ってたしねぇ。こっちも。」
まさと「うう。ほんと、済まん。」
思わず頭下げる。土下座する。
そうか、慣れっこだったわけだ。裸の付き合いくらいは。
道理で、胸の聖印を消しにシルフィーが入ってきてたとき、ミュウが大笑いしてたわけだ。
笑いの意味がようやく納得できた。
やぁ、ほんともう、形無し。
と思ったら、頭をなでられた。そうか、シルフィーか。
と思えば。
ミュウ「まぁ、悪いって思ってくれてるならいいよ。」
頭をなでてるのはミュウだった。
つ、つかめん。ミュウのキャラがつかめん。
まさと「うぁ。ミュウだったのか。」
ミュウ「うわって。あたしだけど。・・・・・変?」
まさと「いや、なんつーか。済まん。シルフィーかと。」
ミュウ「言うに事欠いてそれ〜? もう。」
こつんと頭を叩かれる。ごく軽くだが。
なんか、ここんとこミュウの当たりが柔らかいので、肩透かしを食らった気分ではある。
何より、思いっきり殴られたほうがまだましな気もする。
まさと「いや、お、俺が、悪かったから。」
ミュウ「うん。で、今度は一緒に入る?」
シルフィー「そうだねぇ。けどぉ、3人は無理かなぁ。」
まさと「あっ、やっ・・・いや、遠慮しとく。情けなさ過ぎる。」
ミュウ「ふーん。・・・・ん。わかった。」
シルフィー「照れてるぅ?」
まさと「は、恥ずかしながら・・・。」
ミュウ「あはは。意外に気が小さい。」
まさと「うぅ。」
シルフィー「かわいいぃ〜。」
まさと「あうぅ〜。」
ああ。この二人には今後絶対に頭が上がらんな。
ミュウ「・・・うーん。なんかなぁ。」
まさと「うー。」
ミュウ「もうちょっと、しゃきっとしてよ。」
まさと「は?」
ミュウ「だからね。ねぇ、シルフィー。」
シルフィー「うん。胸張るの。」
まさと「えっと・・・え?」
ミュウ「しかたないか。あのね。」
まさと「ん?」
ミュウ「頼りにしてるのよ。つまり。あたしもシルフィーも。」
まさと「た・・・・。」
ミュウ「こっちのこととか、わからないこと多いし、まさと無しじゃやってけないよ。だから、しゃきっとして。」
まさと「あ。」
ミュウ「こっちに出たとき、ね。凄く不安だった。見覚えのあるところに出たけど、そこからあまり離れられなかった。どうなったのかも良くわかんないし。だから・・・・。悪いと思ったんだけど・・・。いろいろ・・・。」
まさと「あ、ああ。コンビニ。とか・・・か?」
ミュウ「・・・・うん。ダメだよね? 普通、ああいうのは。」
まさと「あ、そ、そうだな。いいこと・・・じゃない。」
ミュウ「まさとのお父さんにも迷惑かけちゃったし・・・・。ね。」
そういえばコンビニの店員に代金払ったり、色々。
親父にも頭あがんないよな・・・。
ミュウ「お父さん、あたし達が取った分、後で、全部回るって言ってた。いうなって、口止めされたんだけどね。やっぱり言っとく。そのほうがいいよね?」
まさと「な、なにっ!? そう・・か。親父・・・・。被害のぶん支払いに。」
ミュウ「うん。いいお父さんだよね。」
まさと「そ、そうだな。ちょっと、乱暴だけど。」
ミュウ「えー、そう? 要らないならもらうぞ。」
そうだ。
ミュウは親父さんが居ない。
・・・・・・事になっている。
カイゼルは、父親であることを隠してるし、今はここに居ない。こっちに居ない。
親父のことを悪く言うのは、ミュウから見て贅沢にしか見えないだろう。
まさと「そう、だな。だけど、もらったり出来るもんじゃねぇぞ。」
ミュウ「そうでもなかったり。」
まさと「は?」
ミュウ「ううん。えっと、まぁ、そういうわけだから、これからも世話になんないといけないでしょ。だから、しゃきっとしててよ。あたしたちがこうどーんと持たれかかっても平気なくらいに。」
まさと「う、ああ、そうだな。わかった。あ、でも、覗きは金輪際やらん。誓って、やらん。」
ミュウ「ん。わかってる。」
俺って、結局、誰にも頭上がらないのかもしれない。
シルフィー「あのね。」
まさと「ん?」
シルフィー「いつでも背中は流してあげるから、呼んでねぇ。」
まさと「う、うあ・・・・。」
ミュウ「・・・ははっ。シルフィー。甲斐甲斐し過ぎ。」
シルフィー「・・・・うーん。そうかなぁ?」
ミュウ「まぁ、ほどほどにね。あたしのお腹がよじれて切れちゃうと思うから。」
まさと「・・・・そうだろうな。」
ミュウ「まぁね。下手なこと出来ないのは、わかるようになっちゃったから。余計に笑えちゃうんだけど。」
まさと「うう。やっぱそうか。」
ミュウ「そうそう。信頼を裏切らないでよね〜。」
まさと「あ、ああ、わかってるよ。」
シルフィー「呼んでね。」
まさと「う。あ、ああ、そうだな。必要になったら呼ぶよ。うん。」
シルフィー「うん!」
これは、呼ぶわけにもいかんな。
ミュウも納得いったという感じの顔をしてるが、多分、これは、呼ぶつもりがないのを理解してのことだろうな。
なんにしても、二人に頭が上がらないのは変わらないか。
それと、明日にでも親父に電話して、被害のこととか話さなきゃなぁ。なまじ事件として扱われてることだし。
ミュウ「じゃぁ、あたしは練習に戻るね。まさとも、頑張るんだよ。飯の種。でしょ?」
まさと「ん、あ、そうだな。あ、そうだ。明日、ディスカウントショップで、あれ買いこんできてやるからな。コンビニより安い。」
ミュウ「んー?」
まさと「ほら。コーラだよ。」
ミュウ「お! ほんと!?」
まさと「ああ、まとめて買ってくるから。」
ミュウ「んー。愛してる!」
まさと「・・・お、おいっ。たかが飲み物でそう言う事を・・・。」
ミュウ「ふふん。コーラを。だよ。」
まさと「・・・・そ、そうか。」
シルフィー「ミュウったらぁ・・・もぅ。」
ミュウ「へへっ。っと、それっ! クリア〜!」
なかなかクリアできなかったステージをようやくクリアーするミュウ。
コーラパワーですか? これは。
まさと「お。やっとなじんできたか。」
ミュウ「うん。なんとかわかってきた気はする。」
それから夜中近くまで、作業して、イントラ経由で動作報告して、休む事にした。
じゃんけんバトルの結果、今日は俺が床布団で、ミュウとシルフィーがベッド。
こういうのもキャンプ気分でいいが、早いうちに二段ベッドか何か、買ったほうが良いかもな。
二人のことを考えれば一部屋借りてやりたいとこだけど、魔獣がこっちに現れるということなら、うかつに部屋を分ける訳にもいかない。
明日以降も出来るだけ行動は一緒の方がいいだろうな。
まぁ、べったりと言うわけにもいかないだろうが、万が一って時には携帯が役に立ってくれるだろう。