第3話 ミスティック・ミュウ誕生! #5 竜崎アタック

セントヘブンの夜も益々更け、心地よい眠りの淵に落ちて行かんとした頃だった。

リーヌ「もう、お休みになられましたかぁ?」
まさと「んぁっ!?」


突然の声に驚いて、目がさめた。

まさと「リーヌぅ・・・・・何?」
リーヌ「あ、いえ、こうして、小声をお掛けして、お休みを確認・・・。」
まさと「・・・・・・・・・・・・大きいって。]
リーヌ「・・・・・・はっ! そういえば、小声で言わなかった気が! お休みを確認して、控えさせていただくつもりだったのですが・・・・。申し訳ございません。」


リーヌの大ボケで、すっかり目がさめてしまった。
仕方ないので、夜の城内を散歩してみることにする。が、すぐにリーヌに呼びとめられた。

リーヌ「このお時間に、メイドも連れずに出歩かれますと、怪しまれます。夜衛の方に斬り倒されても文句が言えません。」
まさと「うわ。まぢかい。」
リーヌ「お散歩でしたら、お供致しますが?」
まさと「ん、ああ、ちょっとだけな、じゃ、頼む。」
リーヌ「はい、かしこまりました。」

しばらくいくと、とある部屋の前で、メイドが扉の前で立っていた。
見ると、とてつもなく美形なメイドだった。そして、もう一人、ミュウを連れていったメイドもいた。

リーヌ「あ、あれ? ここは、竜崎様のお部屋では・・・・。」
美形メイド「あら。どうぞお気遣い無く。」
まさと「竜崎のメイド? ん。どういうこった?」
リーヌ「・・・えっと、ここ、ミュウ様のお部屋・・・・・です。確認したほうがよろしいですよね?」
まさと「ああ、なるほど、そっちは、ミュウのほうのメイ・・・・・おい! なにやってんだよ!?」


ミュウの部屋に竜崎のメイド。そして、ミュウのメイドも。
夜一人で出歩くと怪しまれる、城内。
すると、部屋の中は、竜崎とミュウが2人っきりで・・・・。

美形メイド「はい。お気遣いは必要ありませんので。」
ミュウのメイド「はい、左様です。」
まさと「なにがだっ。竜崎は何しに来たんだっ。」


俺は、2人に詰め寄る。

リーヌ「・・・・ひぃっ、まっまさかっ竜崎様はっ!」
美形メイド「声が大きいですよ。さぁ、お引取り下さい。」

取り付く島が無い。

まさと「ミュウが呼んだのか?」
美形メイド「存じません。」
ミュウのメイド「私もなにも聞いてはおりません。」
リーヌ「・・・・ま、まさと様っ。」

リーヌが袖を引っ張る。そして、リーヌは、俺に目配せしてくる。
一旦ここを離れようということらしい。
確かに、言い合っているだけではどうにもならなさそうだったので、しぶしぶそこを離れ、自分の部屋に戻った。

まさと「どうなってんだ? リーヌ。」
リーヌ「あの。お話する前に一つだけ確認をさせて下さい。」
まさと「あ、ああ。なに?」
リーヌ「ミュウ様は、まさと様にとって、どう言った立場の方なのでしょう? それを聞きませんと、どう説明したものか・・・。」
まさと「は? ・・・・・・あ。そうか。やっぱりそう言うことか。竜崎の野郎。」
リーヌ「あの・・・・?」
まさと「ああ、えっと。なんて言やいいのかな。俺とミュウは・・・。」

大体勘で分かっていた。
竜崎アタックだ。ミュウのピンチだ。
がしかし。
あのミュウのことだ、易々と陥落するはずも無い。
それなのに、ミュウの悲鳴はおろか、竜崎の断末魔も聞こえてはこず、部屋は静かなままだった。
何かありそうだ。
悪いと思いつつ、リーヌから、全てを聞き出せそうな答えを選んだ。

まさと「ミュウは、俺の幼なじみでな。今は、俺の・・・だ。」
リーヌ「あ。そうなのですね。ミュウ様はまさと様の・・・。」
まさと「全部、聞かせてくれるか?」
リーヌ「・・・・はい。原則では私共がこういうことに口を挟んではいけないのですが。大切な方とあってはほおっても置けませんので。」
まさと「ん。」
リーヌ「竜崎様は、大層手が早くてらっしゃいまして。今宵は、ミュウ様が・・・・。」
まさと「いや、俺もその辺の見当はついてる。けど、分からないんだ。襲おうもんなら、ミュウの返り討ちに合うと思うんだが。」
リーヌ「ああ。そうなのですか。するとやはり・・・あのパーティーは・・・・。」
まさと「パーティー?」
リーヌ「ええ、恐らく、ですが。ミュウ様の口にされた物に一服盛ってあったかも知れません。」
まさと「一服? ああ、そういうことか。なら、静かなのも。その為の急遽開催だったのか・・・・。」
リーヌ「可能性が高いのは、遅効性の・・・・媚薬・・だと思います。」
まさと「こりゃ、どうした物かな・・・。」
リーヌ「あのっ、あと一つ可能性が。」
まさと「なに?」
リーヌ「ミュウ様のほうで、受け入れてしまわれた場合。・・・・です。」
まさと「ああ。それはない。竜崎のことは、1番嫌いなタイプっていってたから。」
リーヌ「そうなのですね。では、早急に何とかしませんと・・・・。」
まさと「ああ、やばい。ほんと、どうするかな・・・・。」

立ちんぼしてる、2人のメイドを突破して、部屋に突入するのは、そうは難しくない。
が、なんにしても、一度部屋の様子を確認しておいたほうが・・・。
と、思いつつ、部屋を見まわしていて、素敵な物があるのに気がついた。いや、居るのに。だ。

まさと「そうだ! ファルネ!」
ファルネ「?」


そのへんで、ころころしてたファルネがこっちを向く。

リーヌ「ああ! このコなら!」
まさと「ああ。ファルネ。ミュウの部屋は分かるか?」


ファルネはこくこくとうなづく。

まさと「じゃぁ、ひとっ飛びしてきて、中の様子を見てきてくれ。中で何が起きてるか、教えて欲しいんだ。超特急で。」
ファルネ「!」

ファルネは、胸をとんと叩いたかと思うと、びゅっと、窓から外へ飛び出していった。

まさと「よしっ。後は、最悪の事態が起きてるとして、どう突入するかだが。正面突破していいの?」
リーヌ「さすがに、それは、騒ぎになりますので、不味いのではと・・・。」
まさと「なのか。なまじ相手は、勇者気取りだからなぁ。人が集まっちまうと、こっちが悪者にされかねない。」
リーヌ「ああ、そうです。この階なら、壁伝いにミュウ様の部屋までいけるかも! その、張り出した部分がありますので。」
まさと「あ、危なくない? それ。」

俺は言われるままに、外の壁を見てみたが。
確かに張り出しはある。ただし、幅10cmほど。
足滑らせたら落ちる。落ちたら大変だ。3階だよ、ここ。

リーヌ「無理・・・。ですか?」
まさと「・・・・・・。」

おれは、ちょっと渋い顔をして見せる。
そうこうしてる内に、ファルネが戻ってきた。戻るやいなや、大慌てで、俺のおでこにタッチすると・・・。

ファルネ「イソゲ! ミュウ、アブナイ! イマナラ、マニアウ!」
まさと「やっぱりか!」
リーヌ「え?」
まさと「あ、いや、こいつの声、俺にしか聞こえないんだ。」
リーヌ「ああ、そういうことだったんですか。お喋りはできない物と。」
まさと「そういうことだ。で、ファルネ、ミュウはどんな様子だ?」
ファルネ「・・・・・テイコウシテイル。シカシ、ハナスコトガデキナイ。」
まさと「喋られないのか。静かなわけだ。くそっ!」
リーヌ「うわぁ。」
まさと「ぐずぐずしてられねぇ。とにかく正面突破でもなんでも飛びこむぞ!」
リーヌ「はいっ。」

そうして振りかえった時。竜崎のメイドが部屋に入ってきていた。

竜崎のメイド「改めて、御挨拶申し上げます。竜崎様のお世話をさせていただいております、ナンシーと申します。勇者まさと様。」
まさと「挨拶はいい。そこ、どいてくれ。」
ナンシー「いえ、おどき出来ません。竜崎様より、誰も通すなと仰せつかっておりますので。」
まさと「くっ。・・・・馬鹿みたいに従順なんだな。」
ナンシー「はい。それが、お仕事でございます。」
まさと「一つ聞く。竜崎のやってることは知ってるのか?」
ナンシー「・・・・・・お答えできかねます。」
まさと「答えろよ。答えないと・・・・・・・・・・女でもぶん殴る。」

俺は、目の前で、拳を握って見せる。

ナンシー「物騒なことを・・・・衛兵が要るのでしょうか?」
まさと「ふっふざけっ・・・」
リーヌ「ま、まさと様っ、おさえてくださいっ。」
まさと「待てるか!」


俺がそういって、踏み出しかけた時。

ファルネ「マカセロ・・・・。」

俺と、ナンシーの間に、ファルネが割って入った。

まさと「ファルネ・・・・。」
ファルネ「メヲツムレ。」
まさと「は?」


一瞬、なにがなんだか理解できなかったが、ファルネが手を打ってくれる、というのはわかった。
とにかく俺は目をつむった。

<ぎゅむっ>

ナンシー「ぅきゃぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」
リーヌ「ひぃっ!」


なにか、ゴムの引っ張られるような音がした。
そして、相次いで倒れる音が二つ。

ファルネ「スンダ。」

目をあけると、ナンシーとリーヌが気絶している。一体なにがあったというのだ。

まさと「あ。リーヌにも声を掛けてやるんだった・・・。って、ファルネ。何をやったんだ?」
ファルネ「オドロカセタダケ。」
まさと「いや、それはわかるんだが。」
ファルネ「ワスレロ。ソレヨリ、イソゲ。」
まさと「ああ、そうだな。」

夜衛に見つからぬ様、注意しながら、俺はミュウの部屋へ急いだ。
そして、部屋の前に残った、ミュウのメイドに声を掛ける。

まさと「悪い。通してくれ。」
ミュウのメイド「出来ません。」

コイツも難攻不落か。

ミュウのメイド「ナンシーさんと、リーヌは?」
まさと「二人とも俺の部屋にいる。頼む。ミュウが危ないんだ。通してくれ。」
ミュウのメイド「は? 大事な話しをしているだけ、と聞いているのですが?」
まさと「そんなわけあるか!」


しばし考えこんだメイドだったが、意を決して、扉に耳を当てる。
よし。中で起こっていることに気付いてくれ。
メイドは、顔を紅潮させかっと目を見開くと、扉から離れて、俺に向かって頭を下げた。

まさと「いいのか?」
ミュウのメイド「も、申し訳ありませんでした・・・・・。ブルーカラーのナンシー様と竜崎様の仰せでしたので。」
まさと「そ、そうか・・・・わかった。とにかく入れればそれでいい。」
ミュウのメイド「あの。出来ましたら。ノックを先に。」
まさと「なんで。」
ミュウのメイド「その・・・・いえ、そうですね。良いことではないのですね。」
まさと「そういうことだ。じゃぁ。」

俺は、勢い良く扉を蹴り開けた。

竜崎「ぅあっ!?」
ミュウ「ぅ・・・・んぅっ・・・・ぅぅ。」

竜崎の手が今まさにミュウの服に掛かろうとしているところだった。
間一髪間に合った!

まさと「・・・・・・・てめぇ・・・・・・・・・。」
竜崎「なっ、なん・・・・なっ・・・・ぐぁっ。」


俺は、竜崎が言うことを聞くまでも無く、俺は駆け足で間合いを詰め、ヤツを殴り飛ばしていた。

まさと「無事か・・・・・?」
ミュウ「んぅ。」

ミュウは、まだちゃんと喋れない様だったが、無事なのは確認できた。
竜崎はというと、俺が殴ったほほを押さえて、床を転がりながら苦しんでいる。

まさと「・・・・・出てけ、さっさと出てけっ!」

俺がそう怒鳴ると、一瞬こちらを睨んで、とぼとぼと、竜崎は部屋を退散していった。
ミュウのメイドは、ただそれを見送っているだけであった。
しばらくして、ミュウのメイドは部屋の中に入り、中から、鍵を掛けた。
そして、そのまま、こちらに背を向けたまま、話す。

ミュウのメイド「申し訳・・・ありませんでした。本当に、気がつかなか・・・いえ、言い分けになりますね。」
まさと「・・・・・・まぁ、間に合ったけどな。」

そうしている間も、なにやら、ミュウは苦しげにしている。

まさと「どうした?」
ミュウ「ぐ・・ぅぅ・・・。」

そうだ。
媚薬を飲まされていたんだ。まだ、その効果が続いてるらしい。

まさと「おい。何かないか。媚薬を飲まされてるらしい。」
ミュウのメイド「え。あ。はい。けど・・・。」
まさと「なんだ?」
ミュウのメイド「その・・・解毒は出来ません。その様子ですと。抜けるのを待つかしないと・・・。それとも・・・。あの。」
まさと「なにかあるんだな?」
ミュウのメイド「あの・・・・す・・・・ば・・・・と思います。」

声が小さかった。
ぜんぜん聞き取れなかった。が、すぐに分かった。
媚薬の目的を考えれば早い。目的を達せば解消する。

まさと「・・・・・・ああ。そういうことか。じゃ、最後のは無しだ。抜けるのに、どのくらい掛かる?」
ミュウのメイド「はい、飲まされてから、4時間で。」
まさと「そうか、じゃぁ、あと、1時間くらいか、パーティーの時だったとして。ミュウ、それで大丈夫か?」
ミュウ「う。・・・そ・・・で、・・ぢょ・・・ぶ。」

小刻みに首を縦に振って、喋りづらそうに、ミュウは答える。
なんだかかわいそうになって、肩に手をやる。いや、やってしまった。

まさと「ミュウ・・・・。」
ミュウ「ふひゃぅ!」
ミュウのメイド「ああっ、いけません。感覚が鋭くなって・・・・。」
まさと「あ、すまん。も、さわんねぇから。」
ミュウ「ぐ・・んぅ。あほ。」

うわ。怒られたよ。確かに今のは俺の失敗。
しばらく、誰もなにも言わないまま、時間が過ぎ、リーヌとナンシーが、やってきた。
慌てて、扉を叩くリーヌ。

リーヌ「ミュウ様! おっ、おられますか! 扉をお開け下さいましっ! ロザリー!」

ロザリーがゆっくり扉を開けると、あわただしく、リーヌが掛けこんできた。
様子を確認して、ほっと、肩の力を抜く。

リーヌ「あの・・・。」
まさと「ああ。間に合ったよ。」

ナンシーは、じっと、扉のところで立ち止まっている。

ナンシー「あの・・・竜崎様は・・・?」
まさと「知るかっ。部屋にでも戻ったんじゃねぇか。あの馬鹿野郎。」
ナンシー「そうですか。あの・・・・・・。」
まさと「なんだよ。」
ナンシー「竜崎様にどういっていい物か・・・・。」
まさと「おっ、俺に聞くなよっ、俺にっ。・・・・・・まぁ、ほっときゃいいと思うけどな。」
ナンシー「そう、ですね。」
まさと「竜崎のやってきたことがどうなのかってのは、あんたらも分かってるんだろ?」
リーヌ「ま、まさと様・・・。」
まさと「いいから。」
ナンシー「はい。少々、破天荒な振舞いが多うございました。ですが、それも、勇者様ゆえ・・・。」
まさと「そこだな。おだて過ぎなんだよ、きっと。俺なんか見てみろ。勇者かもっていわれてるのに、毎朝、叩き起こされたり、すぐぶんなぐら・・・。」

ミュウがばさっと起きあがると、俺の頭をこつんとやって、またばふんと横になる。

まさと「・・・・ほれ。みてみそ。」
リーヌ「ぷっ。・・・あ、も、申し訳ありません。」
ナンシー「くっ。」

おもわず、吹き出してしまうリーヌ。まぁ、普通そうだろう。
ナンシーも笑いをこらえてる様だ。
あ、良く見りゃ、ロザリーも肩が震えてる。思いっきり笑いをこらえてるな。

まさと「・・・や。笑っていいんだってば。」
ナンシー「うっくっ・・・。」
ロザリー「ぷくくくくくぅっ。」

どうにか、緊張しきった場が和んできた。

まさと「どうだ、ミュウ。まだ抜けないか?」
ミュウ「ん。も、・・・ちょと・・・。」
まさと「ああ、だいぶ喋れるようになってきたな。」
ミュウ「ん。ごめ・・・。」
まさと「謝るなっつーの。」

ようやく自由が戻ってきたのか、ミュウは、俺のほうを見て、少し笑う。

ナンシー「ところで、あれ・・・・生き物なんで・・・ああ、なんて失礼な聞き方・・・。」
まさと「あ、ファルネ?」
リーヌ「ひぁぁぁぁ。」

リーヌは、なんか思い出してしまったのか、自分の肩を抱いている。

まさと「えーっとね。あれは、聖剣を守ってた聖地の番人なんだ。生き物、なのかどうかは俺も良くしらねぇ。ってとこだな。でだ。俺、実は、さっきの、見なかったんだけど、そんな怖かったんだ。」
ナンシー「せ、背筋が凍るかと・・・。」
ミュウ「ん。あ。こわ・・よ。あれ。」

ミュウがなんか参加してくる。

まさと「あ。そういや、ミュウ。前に、ファルネのこと、苦手だとかなんか言ってたが。それか?」
ミュウ「んっ。んっ。」

こくんこくんと、うなづきながら、答えるミュウ。
そこへ、ぷーんと、今まで立てたことの少ない羽音を立てながら、ファルネが部屋に飛んで入ってくる。

ナンシー「ひくっ・・・・。」
リーヌ「ぅぁ・・・・。」

脅える二人。

まさと「そんなにか。」

ファルネは、ベッドに腰掛けている俺の膝にとまる。

ファルネ「ヤリスギタ。」
まさと「そうなのか? なぁ、ファルネ。俺にも・・・・。」
リーヌ「ああ、おやめになったほうが・・・・。」
まさと「いや、どれほどのものか・・・。」

<ぎゅむっ>

一瞬、俺の目の前になにかが覆い被さってきたような気がした。
それがなんであったのか、どうにも思い出せない。
そして、気がついたときには・・・・・・・朝になっていた。
気絶してたの? 俺。

ミュウ「あ、ん。起きたか・・・ふぁぁ。」

俺の横で、ミュウが生あくびをしている。おいおい。結局、ほんとに、ミュウの部屋のベッドで、寝ちまったのか。

まさと「あ。あー、アレから何かあったか。」
ミュウ「大爆笑大会。」
まさと「・・・・そうだよな。はぁ。かっこ悪りぃ。」
ミュウ「まぁ、いいんじゃない?」
まさと「よくねぇよ。しかも、そのまま寝ちまったんだろ、俺。お前とならんで。」
ミュウ「んー。そうなる。」
まさと「はぁ、やっぱりかっこ悪いや。」
ミュウ「いいんだって。」

そう言いながら、ミュウは、俺の鼻をつまむ。

まさと「ふが。なにふんだお。」
ミュウ「いいこと教えてあげよぉかぁ。」
まさと「あにおらお。」
ミュウ「リーヌがねぇ・・・・・。」


ぎく。
何か聞いていけない事のような気がする。リーヌには、大嘘ついたしな。

まさと「い、いーうあ、ろーひらっへ。」
ミュウ「ぷ。うーん。なんでもないよ。教えてあーげないっ。」

鼻から手を離して、ぱっとミュウが立ちあがる。

まさと「うっ。き、聞きたいが、怖い。」
ミュウ「んっとね。多分、聞いたら、心臓止まる。」
まさと「うぐぁ。既に今、止まりかけた気が・・・。」
ミュウ「ぷくくっ。」
まさと「な、なんなんだよ、一体なんて言ったんだよぉ・・・。」
ミュウ「しょうがないなぁ。」
まさと「どき。」
ミュウ「こほっ。」

ミュウは、1度目をつむって、咳払いをすると、満面の笑みを浮かべて、俺の方を向いて言う。

ミュウ「ミュウさんが、うらやましいです。」

心臓停止。
直後に再活動開始。

ミュウ「・・・だぁ〜って。時間が凍ったかと思ったわよ。」
まさと「い、・・・今、心臓止まった。げふっ。」
ミュウ「まぁったく。どんなこと吹きこんだんだか。」
まさと「すまん。」
ミュウ「まっ、終わりよければ全て良し。なんだけどね。それよりさ、ちょっと付き合ってよ。」
まさと「あ、ああ。どこへだ?」
ミュウ「んー。昨日、ドレスを引き上げてもらった時にね。りゅうのまもり、一緒に持っていかれちゃったの。その回収。と。」
まさと「と?」
ミュウ「りゅーざきを改めてぶん殴りにいく。」
まさと「うわぁ・・・。」

元気に戻ったミュウに引っ張られて、俺は部屋を出た。まぁ、通常に戻ったってとこで、良しか。
りゅうのまもりはすぐに回収できた。
どうやら、衣装係が、ドレスとのマッチングが良かったので、セットだと思ったらしい。
しかし、りゅうのまもり、イミテーションだって話しだったけど、御利益あるのかも。
俺がこっちに来た時といい、昨夜といい、手元に無い時に限って、ミュウがピンチになってる。
大した物なのかもしれない。

ミュウ「っと。これで一安心っと。」
まさと「それ、やっぱり、効果あるのかね?」
ミュウ「ああ、そだね。それを思う時はあるよ。さて、次行ってみよぉ〜。」
まさと「行くんかい。」
ミュウ「行く。」

一瞬、ミュウの後に炎が見えた気がした。
造花背負い男vs炎の乱暴女。
ある意味、見物なのかもしれない。

ミュウ「ん? なにかいった?」
まさと「うんにゃ。あ、噂してたら、向こうから来たぞ。」
ミュウ「あー、おっしゃぁ。」

回廊の向こうから、竜崎が私服で歩いてくる。
なんか無茶苦茶無防備そう。今、ミュウが殴ったら、壊れちまうんじゃねぇか?

まさと「なぁ、ミュ・・・・。」

すでに、ミュウは俺の横にいなかった。猛然と、竜崎に向けて爆走中。
その次の瞬間、木の葉の様に宙を舞う、竜崎を見た。竜崎、成仏するんだぞ。
俺が傍についた時には、絞り雑巾の様になった、さっきまで竜崎であったものが転がっていた。

竜崎であったもの「う・・・ぐ・・・。ずび・・・ばぜ・・ん・・・・。」

とりあえず、命は取り留めたようだった。
満足したのか、いや、こんだけ思いっきり殴ったんだ。
満足してもらわないと、困るんだが、ミュウは、鼻息を一つ残して、そこを離れようとした。
俺も続く。

竜崎「あ、・・・まさ・・と・・・・くん。」

くん付け。背筋を走る氷点下の風。

まさと「ぐわぁぁぁ。そういう呼び方をするなこのボケっ。」
竜崎「じゃ、じゃ、まさと、でいいか?」
まさと「呼ばれることさえ不服を覚えるが、なんだ?」


見ると、なんだかかしこまって突っ立っている、竜崎。

竜崎「昨日、あれから、ナンシーに説教されたよ。」
まさと「ほぉ。説教垂れられたか。」
竜崎「ああ。勇者って・・・・なんなんだろうな。」
まさと「・・・・・知るかっ。大体わかんねぇから、俺達も調べまわってるんだっての。」
竜崎「だよな。誰にも分からないよな。分からないから、勇者の、振りをしてきた。振りをしてるうちにどれがほんとの自分かわからなくなった。今でも、まだ・・・・。」
まさと「あほっ。勇者の振りにもなってないっつーの。」
竜崎「て、手厳しいな。そう、見えてたのか。そうか・・・・。」
まさと「そうだ。」
竜崎「君は・・・・どうしてそう、普通に構えていられるんだ?」
まさと「は?」
ミュウ「教えてあげようか?」
まさと「お?」
竜崎「あ、うん。教えて・・下さい。」
ミュウ「まさとはねぇ。」

お。なんか面白いことになってきた。
ミュウが、俺のことをどう思ってんのか・・・。どう見えてんのか・・・。今まで、余り気に掛けてなかったことだ。

ミュウ「馬鹿なのよ。うん。」

すっころぶ。
そうなんか、そうなんかいっ。そうみえてるんかいっ。

竜崎「馬鹿? いや、良く分からない、けど・・・。」
ミュウ「馬鹿にも2種類あってね。笑える馬鹿と、笑えない馬鹿。まさとは、その笑える馬鹿なのよ。」
竜崎「笑える・・・馬鹿?」
ミュウ「そ! やろうと思ってもおいそれと出来ることじゃないぞ。特にこれは、天然馬鹿だから。」
まさと「おいおい、誉められてる気がぜんぜんしねぇぞ。」
ミュウ「あ、一応誉めてるんだからね。でだ。」
竜崎「はい。」
ミュウ「笑える馬鹿がどうして良いのかってことだけど。」
まさと「うー、なんかなぁ、馬鹿馬鹿と・・・・。」
ミュウ「りゅーざき、あんた、笑えないヤツの傍にいたい?」
竜崎「あ・・・。」
ミュウ「あんたのまわり、ついてきてくれてる人ってどれだけいる? 国王に、メイドぐらいじゃないの?」
竜崎「ああっ。」
まさと「えーっと。あー?」
ミュウ「あたしは、勇者とか、伝説とか、ほんとのとこ、どーでもいいの。こいつが面白いからついてまわってる。それだけ。あんたのまわりにそういう人がいないんなら、それは、あんたが笑えないヤツになってるからよ。」
竜崎「・・・・・・な、なるほど。」
まさと「んー?」
ミュウ「じゃ、自分がどう振舞うのがいいか、良く考えてみよう。」
竜崎「そうか・・・・そういうことなんだな・・・。」
ミュウ「後ひとつ言っとくと。あたしは、こいつに惚れ込んでるから。追ってこない様に。こいつは顔も成りもこんなんだけど、中身はぎっしり詰まってる。あんたは、格好と面のよさだけで、中ががらんどうなのよ。あたしはそんなのはいやだ。そういうことよ。」
まさと「ほっ、惚れ・・・・・うわぁ。なんか凄いこと口走ってないかお前。」
竜崎「わかった。出来るかどうか分からないけど、自分を考え直してみる。」
まさと「おぉぉ?」
ミュウ「さぁ、お話は終わり。まさと、いくよっ。」
まさと「お、おぉ!」

なんだか、今まで見たことの無い、遠くを見つめているようなまなざしの竜崎を置いて、俺とミュウは回廊を進む。
回廊の角を曲がったところで、急にミュウがしゃがみこむ。

ミュウ「ぷっくっく。ああ、面白かった。なに? 昨日までとぜんぜん別人じゃない? アレ。」
まさと「あー、良い薬ってやつになったのかな。」
ミュウ「ははっ。多分、そういうことでしょうねぇ。薬になったのは、メイドの説教かな?」
まさと「我に返ったってやつか。」
ミュウ「で、まさとはいつ、我に返んの?」
まさと「うわぁ。なんて言いぐさ。」
ミュウ「へへっ。はい、ミュウは、さっき、大嘘つきましたぁ〜。」
まさと「大嘘!? ど、どれだよ!?」
ミュウ「内緒。自分で考えてみよう。」
まさと「おいおいおい。なんだかなぁ。」
ミュウ「さぁ、ぐずぐずしないで、朝ご飯食べいこ〜。朝ご飯〜。」
まさと「ったく。食うとなると元気なのなぁ。お前。」
ミュウ「あったりまえじゃない。生きるのに必要だしね〜。」
まさと「そりゃぁそうだ・・が・おいおい、いきなり走ってくなっ。」

俺をほっぽって、ミュウは大食堂のあるほうへ駆けて行く。
俺もなんとかそれに追い付いて走っていく。
もうすぐ、大食堂につく、といったところで、ミュウはいきなり立ち止まる。

ミュウ「ねぇ・・・。」
まさと「ぅわっ、いきなり止まるなっ。」

なんとか、俺もミュウの傍で止まる。

ミュウ「あ、ごめん。で、あのさ。あたしって、早過ぎる? まさと、無理してないよね?」
まさと「え? あー、どうだろ。ついて行けてねぇか? 俺。って、別に、気にしてない事だが。」
ミュウ「へぇ。やっぱり、馬鹿なんかな?」
まさと「馬鹿馬鹿言うなよ〜。」
ミュウ「うん。いいや。いこ。お腹減っちゃった。」
まさと「ん。そだな。って、なんか、こっちが適当にはぐ・・・だから、いきなり走ってくなっての。」

またミュウを追いかけるようにして走る。
まぁ、悪い気はしないけどね。
この朝の朝食はすげぇ美味かった。
たいして変わった物が並んでたわけでもないんだけどな。
いわゆるブレックファーストなんて呼び方する、パン主体のありきたりの朝食だったのに。
不思議な物だ。
メイドたちも、なんだかアタリが良い。初見のメイドが丁寧にお辞儀してくれたりもする。
一体、なにが起こったんだ? 昨日は、すれ違うメイド、皆よそよそしかったのに。
しかし、原因はすぐにわかった。

リーヌ「も、申し訳ありません・・・メイド部屋で、話題に上がってしまい、話さないわけには・・・。」
まさと「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うわぁぃ。」

まいった。昨夜の恥ずかしい武勇伝を、この城中のメイドに知られちまったってのか?

ミュウ「やだなーもー。」
リーヌ「あ、あの、まさと様のことに限ってお話してますので、ミュウ様のことは・・・。」
ミュウ「そなの? でもばれてない?」
リーヌ「は・・・、否定は出来ません。です。」
まさと「いや、けどな、昨日の事ぐらいで、アタリが柔らかくなるというのも。」
リーヌ「いえ、それが。皆、口に出さずとも竜崎様の振舞いに困っていたみたいで。それが今朝になっての竜崎様の変わり様。なので、まさと様、すっかり英雄ですよ。この城のメイドを解放した。なんて言われちゃってもう止まらないんですぅ。」
まさと「あー、そうゆーことなのね。けど、あれ、ナンシーが・・・・・。」
ミュウ「良いんじゃない。やりやすいってのは悪いこっちゃ無いし。」
まさと「まぁ、それはそうだが。」

そうこうしている内にナンシーがやってきた。

ナンシー「おはようございます。まさと様。ミュウ様。」
まさと「あ、はよぉ。」
ミュウ「おはよっ。」
ナンシー「あの、ありがとうございました。」

そういって、ナンシーは深々と頭を下げる。

まさと「うわぁ。恥ずかしいからやめちくれ。」
ナンシー「そういうところからして、竜崎様とはやはり。」
まさと「違うってか。」
ミュウ「違うんでしょうねぇ。少なくとも昨日までは。」
ナンシー「はい。これでようやく、正常な勤務体制に戻れそうです。今まで、昼夜ほとんどありませんでしたから。」
まさと「そこまでひどかったんかいっ。」


なんだかねぇ。
間接的にメイドたちの束縛をといてやったことになるのは、分かるけど。
そこまで考えがあってやったこっちゃねぇしなぁ。
とりあえず、笑ってるしかねぇ。
見ると、やはり、ミュウも、うれしげにパンを口に運んでいる。

まさと「なぁ、ミュウ。」
ミュウ「今忙しいよ〜。」
まさと「ああ、わかった、しっかり食ってくれ。」
ミュウ「あいあい。」

ま。結果オーライか。ほんとに。
朝食を摂り終えて部屋に戻ると、ヨハン国王、カイゼル、格の高そうなメイド、そして、私服のパールがいた。
なんだか、さっきまでと違って、凄い緊張感が漂っている。
これから何かが起ころうとしているのは分かった。

まさと「えっと。なんなんでしょう?」
カイゼル「ようやく戻ったか。夕べの話しはさっき聞いたぞ。」
まさと「いや、聞かなくて良かったんですが。恥ずかしすぎる。」
ヨハン王「いや、手間をかけさせてしまったようじゃ。わしの力不足。わびを入れさせてもらうぞ。」
格高メイド「メイド長のマルレーネでございます。事態の改革にメイド一同喜ばせて頂いております。」
まさと「だからその話しはしないでくれぇ。頼むから。」
パール「まぁ、無理でしょうね。一晩で、英雄にまで上り詰めてしまってはね。」
まさと「だからー。誇大表現だって。俺は・・ただ。」
パール「ただ?」
まさと「いや、いい。やめようよ、この話し。」
パール「そうね。じゃ、ちょっと早いけど、本題に移りましょうか。」
まさと「へ?」

またなんか死刑台が見えてきた気がするんだが。気のせいだろうか。
パールが俺のほうに向き直る。
そして。

パール「勇者まさと。魔導科学のパール、あなたに、正々堂々と、一騎打ちを申し込みます。受けて・・・くれますか?」
まさと「・・・・はい?」
ヨハン王「おお。即答で受けるとはさすが・・・」
まさと「まてまてまてまて。疑問符がついてる。大体どう言うことなんだよ、ここは、給金稼ぎに来てるだけじゃなかったのか?」
パール「その・・・つもりだったのですけどね。そのぉ、私の正体、バレていたみたいです。」
まさと「なにっ!? 国王、パールの事知ってたの?」
ヨハン王「ああ、知っておった。最初から、というわけではなかったがのぉ。」
まさと「他の人は、あー、特に竜崎なんかは。」
マルレーネ「ご存知ではなかった様です。存じ上げているのは、私共メイドの最上級クラス、グリーンカラーの者、騎士団長、そして国王、でございます。」

驚いた。
パールが堂々とここに立っているはずだ。国王が知っていて、そのままにしてたとは。

まさと「なんか、分からなくなってきた。パールは、一応・・・敵・・なんだろ、それを、雇ってて、なんてーか、都合が悪くなるとか、そういうのは無かったのか?」
ヨハン王「無いぞ。」
まさと「わぁ。即答ですか。あ、ひょっとして、泳がせて・・・。」
ヨハン王「そういうことじゃ。パールとこちらの利害は一致しておった。」
パール「びっくりですけどね。」
まさと「ああ、びっくりだ。確かに言われてみりゃ、謎の多いところもあるし、互いの情報を・・けど、それで良いものなのか?」
パール「私の、目的・・・によるんだと思います。魔導科学文明の再興。」
まさと「いや、その再興は・・・・。」
カイゼル「まさと殿、私の剣が魔導科学の恩恵を受けてるのは知っているだろう。アルヘルド騒乱の事を誤解しないで欲しいのだ。恐らく、君が引っかかっているのはそこではないかと思う。」
まさと「・・・ええ、まぁ、聞きかじったばかりのことですから。そうなのかな?」
ヨハン王「アルヘルド文明は、いささか間違った方向で、発展しようとしておったのじゃ。魔族を頂点に頂いた、間違った文明の構築を成そうとしておった。光りと闇のバランスこそが、このティラの重要な原点であるというのに。」
まさと「あ、バランスってーと、月光神と、魔王との、あの?」
カイゼル「ああ、それだ。バランスを保ちつつ、全ての者の暮らしを楽にする方向で発展してくれるものなら、止めることは、無かったのだがな。結果として、残念な傷を残してしまったのだが。」
まさと「傷跡。・・・そうか、マジェスティックスの超飽和状態。」
カイゼル「ああ。アレだけは止め様が無かった。」
ヨハン王「もう少し、気がつくのが早ければ、あの規模での飽和は起きなかったんじゃが。病むを得んかった。もちろん、アレに関わっておった、わしらの責任じゃ。のぉ、カイゼル。」
カイゼル「ああ、そうだな。だから私は、こうしてここにいる。出来ることを探してな・・・あ、いや。」
パール「あの、飽和状態は、色々、私のほうも調べました。自分の事に関わることですから。あそこで、マジェスティックスを強制的に不活性に転化しなければ、アルヘルドどころか、ティラ全体が、高密度のマジェスティックスに包まれていたでしょうね。魔族にとっては天国ですけど、その他にとっては・・・。」
まさと「地獄って事か。あんたら・・・・背負ってる物、やおらでかかったんだな。英雄として、あがめられてるばかりだと思ってた。特に、パール、俺は、やっぱり、誤解してたんだろうか?」
パール「まぁ、少しね。一応、敵対勢力であるのは現状間違いないんだけれど。けど、もっと誤解しないで欲しいことがあるの。」
まさと「え?」
パール「私の目的と超魔導士サイファーの目的が本当にイコールで括れる物かどうかはっきりしていないと言う事。」
まさと「な、なんだ? はっきりしてないのか?」
パール「ええ。私は魔導科学文明の再興だと聞かされていた。けど。魔獣が出たでしょ。あれで、私も疑問を抱かざるを得なくなってきた。」
まさと「魔獣の出現が鍵になるのか。そういや、悪意を持って作り出せば、とか言ってたっけ。」
パール「ええ。そういう考え方で良いと思うわ。」

なんか、凄い話しになってきた。
てっきり、魔導科学文明その物が、危険な物。そういう解釈で良いと思ってきてたんだが、そうではないらしい。
サイファー、これが、敵の親玉だろう。こいつのやろうとしてることもはっきりせず、事態がどこへ進んでるのかってことなのか。
ここで、はっと気がついた。
じゃぁ、なんで、パールは、分かりもしないのに従ってるんだ?

まさと「あ、パール。分からないことがあるんだが。」
パール「何?」
まさと「お前なんで、サイファーとかってのの手伝いやってんだ。魔導三人衆とかって。魔導科学を再興させたいだけなら、どこででも出来る物じゃないのか?」
パール「ああ、そう思うでしょうね。私は・・・こっちに来たときに、サイファーに拾われたのよ。彼が、私の育ての親。」
まさと「!・・・・・納得した。そりゃ、やるしか無くなってくるか。」
パール「ええ。それで、もう一度、本題に戻るけど・・・。」
まさと「ああ、そうだった。俺は、決闘を申し込まれてたんだっけな。」
パール「呑気ね。」
まさと「いや、そうでもないが。まぁ、本題行ってくれ。」
パール「分かったわ。私は、魔導科学に対しての誤解は解きたかった。それと、魔導三人衆として、決着をつけないと、いけないの、よ。これは、それぞれ、違う意味合いのことよ。だから、昨日は・・・。」
まさと「ああ、向井珠美として・・・か。」
パール「納得してくれた?」
まさと「あ、納得できたかどうかは分からないが、釈然としなかったのは解消した。」
パール「ありがとう。それは、それで良いわ。今のところは。で、魔導三人衆としての決着。これについては。」
まさと「・・・いや、必要なことなのか?」
パール「問答無用で、仕掛けたい、ってところになるでしょうね。」
まさと「いや、その辺のところが今一つ。魔導三人衆としての、目的を、聞かせてくれないか?」
パール「ああ、それはダメ、ね、一応。」
まさと「そうなっちまうか。いや、俺を、どうしたいのかとか、そんな簡単なとこからでも良いんだけど。無理か?」
パール「ああ、そんなことで良かったの。てっきり、もっと核心を突いたことを聞かれたのかと思ったわ。」
まさと「わはは。いや、核心ついたのでも良いけどなぁ。」
パール「やっぱり呑気ね。つくづく変な人だわ。」
まさと「あー、いやー、伝記では、勇者はそういうものだって事になっとるなぁ。」
パール「そうね。じゃぁ、目的。」
まさと「うん。」

その場にいた全員が固唾を飲む。

パール「勇者まさと・・・・あなたを殺します。」